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神様に借りた農場  作者: 秋野 木星
第一章 四月
31/77

雑貨製作者

これを全部、売りに行くの?


自分にツッコミを入れたくなるぐらい、商品を作ってしまった。

自重を覚えないとダメだね。



ずっと欲しかった弁当箱は上手く作ることが出来た。おむすびを入れるのにピッタリの三角型の竹かご状のものと普通の楕円形のもの、二種類を製作してみた。ただ、大きさを試行錯誤しているうちに大、中、小とそれぞれ三種類もこしらえてしまった。全部で六個……作り過ぎだね。

ひしゃく、コップ、水筒、小鉢皿、蒸籠(せいろ)も竹で作った。

蒸籠は、赤飯やお餅を作る時に活躍してくれそうだ。


この辺りまでは必要なものを作っているので、まだよかった。


耳かきを作ったあたりから、調子に乗ってしまったのだと思う。


端っこにこけしの顔がついているのがあったよね、などと思いながら作っていると、ついつい星とかハートとかいろんなものを耳かきに付けたくなってしまった。

気が付いた時には、耳かきが12本できていた。

……こんなにいらないし。


ただ開き直ってしまうのが珠美の悪い癖だ。

もうこうなったら、自分で使うものを作るついでに、スパポーンさんに売る商品も作ってしまおうと思ったのだ。

肩たたきの球がついた孫の手、焼き串、お箸、サラダボール用のスプーンとフォーク、バターナイフ、生け花用の竹かご等々……

思いつく限りの竹製品を次々に作っていった。


お昼になる頃には、自分が作った物の多さに啞然としてしまった。

スパポーンさんはこんなに買い取ってくれるだろうか?


昨日、ゲットした『抽出』『成形』『研磨』の魔法が悪い、というか良すぎると思う。

ポンポンできていくので、つい面白くなっちゃうのよね。

『竹細工』魔法も職人芸をみせてくれるし、こうなると農業従事者というよりも、雑貨製品の制作者と言った方がいいかもしれない。



「珠美、そろそろお昼ニャ。ご飯にしたら?」

「はーい」


朝はまだ大雨だったので、先日のイノシシ肉をペロルとミーニャにお裾分けしたのだが、空が少し明るくなってきて雨が小降りになったので、二人ともこれから狩りに行ってくると言われた。


「貧乏な珠美の貯蔵肉をこれ以上食べたら寝覚めが悪いニャ」

「そうだね。それにパトロールもあるし」


すみません、甲斐性(かいしょう)がなくて。

二人が林の中に駆けこんでいくのを見送って、珠美は昼食を作り始めた。


朝は昨日の残りものを食べたのだが、山菜の煮物もフキの味噌炒めもまだ残っている。一人で食べるとなかなかなくならないものだ。

お腹の収納倉庫がないと持て余しちゃうね。

アク抜きしたワラビはまだあるから、おひたしにできる。かつお節をかけて、豆腐と一緒に三杯酢で食べたら美味しいかも。

それからココットの鶏もも肉を、チャイブや玉ねぎと一緒に甘辛く炒めて、鳥串みたいな味にして食べようかな。


これが正解だった。

ココットは草原を走り回って育っているからだろう、肉がぷりぷりしていてジューシーだった。そしてこの濃い味と、豆腐やワラビのさっぱした味とでコントラストがあって楽しめた。


昼ご飯を食べながら、サミー牧場へいつ納品に行こうかと考えていた時に、ピカリといいアイデアが(ひらめ)いた。


あの怖いゴルジさんは、馬の餌置き場をどうやって掃除してるんだろう?

馬がいる柵の前の通路は、コンクリートで固められていて、柵から馬が首だけ出して餌が食べられるようにずぅーっと長い溝が掘ってあった。

この溝は、ゴルジさんが手にしていた幅が広い鉄のレーキでは掃除がしにくいと思う。

珠美が今日作ったような竹の熊手でも、溝の掃除には大きすぎるだろう。


飼料用の溝専用の小さい熊手を作ったらどうだろう。専用とはいっても植木の隙間や細い排水用の溝とかも掃除しやすいかもしれない。


昼食の後、珠美はアイデアを形にしてみることにした。


少し細目の三本の掻き手をくっつけるようにして横棒で挟むと、その横棒ごと持ち手の竹に挟んでしまう。

こうして作った小さめの熊手を貸し出してみることにした。

業務拡大のためには、頼まれた仕事だけをしていたのではいけない。

積極的な提案とプレゼンが必要だよね。


何か考え方まで、ますます雑貨製作者のようになってきている珠美だった。



この後『金属加工』魔法で、家で使う針金ハンガーを作っていたら、これも面白くなって作り過ぎてしまった。

ネック部分が広めの服でも風で飛ばないように、肩ひもを使った下着なども干せるようにと、肩の所に二か所のくぼみをつけて工夫して作ったのはもちろんのことだが、どちらの向きにでも変えられるように、首の所にコネクターをつけた。

スパポーン雑貨店で売っている針金ハンガーにはこういう工夫が凝らされてなかったので、売り物になるかもしれない。


針金を扱ったついでに竹を使った洗濯用ピンチも作ってみた。

しかしこれは失敗だった。

なぜなのかわからないのだが、バネの部分が固すぎて上手く挟めないのだ。

これは今後の研究課題だね。

そういえばヘイじいさんが金属鉱石などを掘り出す会社に勤めていたと言っていたから、今度、村へ行った時にどうすればいいのか聞いてみよう。



自分で使うものや売り物などを作って、細工仕事がひと段落したので、珠美は竹で遊ぶことにした。

旦那様の母校の文化祭に行った時に、竹で作った虫やおもちゃを買って帰ったことがある。

ああいうのが作れたら、楽しそうだな。


最初はカミキリムシやカブトムシを作って、竹の上を這わせるように固定してみた。

おー、なかなかいいじゃん。竹の細い枝で作った足が、今にも動き出しそうだ。


一匹のキリギリスを椅子に座らせて、フルートを吹く格好をさせてみたら、これが可愛らしかった。

バイオリンもいるよね、チェロやティンパニーも……そんなことをいって作っていたら、とうとう虫のオーケストラができてしまった。

自分の楽器も欲しいなと思って、カスタネットや笛を作ったら、これはどうしても演奏をしてしまうよね。


春の歌を次々と歌いながら、珠美がノリに乗って演奏していると、ふいにペロルの遠吠えとニャ~と鳴くミーニャの合いの手も聞こえてきた。


「あら二人とも帰ってきてたのね」

「やめないでよ、珠美。いいところなんだからさ」

「こういう演奏会も、たまにはいいニャ」


ペロルとミーニャのリクエストにお応えして、珠美はもう一度最初から春の歌を演奏していったのだった。


雨はほとんどあがってきていて、薄日が差し始めた農場の空を、楽しい音楽がいつまでも流れていった。

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