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神様に借りた農場  作者: 秋野 木星
第一章 四月
19/77

種蒔き

昨日はたくさんの家具を製作したので、手や肩などのいつもとは違う場所が痛い。

でも無理がきくのが十代の身体のいいところだな。


雨の日でのんびりできると思っていたのに、終わってみるとよく動いてしまった。

本当に農業従事者の休日だったか?と自分にツッコミを入れたいが、まだ異世界に来て今日が六日目という新参者なので、身の回りに足りないものが多すぎる。

心底ゆっくりできるのは、まだまだ先なのかもしれないな。



朝はご飯炊きから始まった。

ここでいいことが一つあった。


さっき、ぼんやりしていて「【ヒツケ チャッカマン】」とだけ言ってしまったが、それだけで指に火を灯すことができた。

どうやら『着火』魔法の呪文の文を縮めても、火がつけられるようになってきたみたいだ。

これも毎日の鍛錬だね。


無詠唱になるまで魔法を極められたら、呪文を書いたわら半紙を持ち歩かなくてもよくなるなぁ。



今朝は卵焼きを作った。それと昨夜の残りのタケノコの煮物をおかずに、炊きたてのご飯を食べた。

やっぱり炊きたてのご飯は美味しい。

珠美はご飯を食べながら、いつものように今日の作業予定を考えていた。


まずニンジンと大根とゴボウの種蒔きをしなければならない。

これは今日の主要な仕事だ。

ただ雨が降ったから草の芽がたくさん出てきてるだろう。畝の草は全部、削っておいたほうがいいよね。今ならあんまり労力はいらないし。


ニンジンを植えたら水やりが大変だ。

ニンジンは本葉が育って根っこがしっかりするまでは「(おか)にあがったカッパ」と言われている。とにかく発芽や新芽の時期に水が必要なのだ。

それに葉が触れ合うぐらいに混み合っていたほうが、成長がいい。そのため珠美は、一つの畝に三通りぐらいのすじ蒔きにしようと思っている。

ニンジンは10日後にまた種蒔きして、収穫時期をずらして育ててもいいな。


大根は、今回の収穫についてはあまり期待していない。たぶん夏の大根だから硬くなるだろうし、初めて植える土なので病気になるかもしれない。

大根というのは、他の野菜と違って連作障害がない。むしろ同じところに植え続ける方が、白くてみずみずしい健康な大根ができるという不思議植物だ。

今回の種蒔きは冬の豊作のための下準備のつもりだ。そのため、いつもはひとところに3粒植えて間引きをしていくのだが、間にもう2粒植えて間引き菜を楽しもうかと思っている。

大根葉は美味しいのよね~


ゴボウは収穫まで半年以上かかる気の長ぁーーい野菜だ。

普通の野菜は二ヶ月スパンだと考えると、そののんびりぶりがよくわかる。

このひとは本葉が5枚ほど出たところで足で踏みつけて、又根の株を特定するのが大切だ。踏まれてすぐに回復する株が又根なのだそうだ。回復したら間引きされるんだから、ゴボウにとったら踏んだり蹴ったりだね。

それから長い育成期間が必要なので、月に一度の追肥が必要になる。

これも覚えとかなくちゃ。



農作業の後で、汚れた作業着を洗って干しとこうかな。

今日は暖かそうなので昼頃に干しても乾くだろう。


髪も石鹸で洗いたいな。

こちらの世界のシャンプーは植物性の石鹸なので、環境にはいいのだがしっとり感が少し足りない。珠美の髪はくせ毛なので、伸びてきた耳の後ろあたりが起き抜けの朝にはハネまくっている。

そこで殺菌消毒作用があるオレガノの葉に食用油をちょいとつけてもんで、それでなでつけたりしている。

なにかいい化粧油はないかなぁと考えているところだ。


そして風呂よね。

毎日入っていたお風呂に一週間近く入らないと、なんとなく身体がシャンとしない。

どっかに温泉がないかな。

いや待てよ、これから夏になるんだから、農作業の後のひとっ風呂は大事だよね!

家に風呂場が欲しいなぁ~


でも建物を建てるとなると大量に木材が必要だね。

小屋にあった丸太を昨日、全部使ってしまったから、まずは木を切ってきて乾燥させておくことが必要だな。


風呂場を作るとしたら農具小屋の向こうの川べりになるよね。

水は汲みやすいし、排水もしやすい。


とにかく、できることからやっていこう。



朝ご飯の片付けを終えた珠美は、家に入って魔術書を開いた。


「今日は何の魔法にするニャ?」


ミーニャはいつもこの魔法習得の時間を楽しみにしているようだ。

珠美が選ぶ魔法の種類が面白くて、意外な使い方をするのだと言う。


「そうだな、昨日の家具作りのことを考えると木工魔法を習得しておいた方がいいような気がする。簡単なものは作れるけど、お風呂なんかはどうやって作ったらいいのか、すぐに想像できないもん。それに粉砕(ふんさい)魔法が欲しい。タケノコの葉っぱや皮とかを砕いて発酵させれば、肥料になるよね」


「粉砕? また、面白いものを欲しがるニャ。木工をするんなら森から木を切ってこないといけニャいでしょ。そうなると『鑑定・植物』をとっておいたほうがいいんじゃニャい?」


「へぇ~、この鑑定というのは図鑑なのね」


「う? そ、そうニャ……ちょっと違うけど、まぁだいたいそんなものかも。異世界に来た人は、収納と鑑定の魔法を最初に選ぶ人が多いニャ」


「ふぅん」


確かにミーニャの言う通りだ。杉とか桜とか紅葉なんかの一般的な木はわかるけど、森の木を全部知っているわけじゃないし、どんな木がどんな家具に向くのかも知らない。

よし、鑑定ね。

珠美にとって鑑定といえば家のお宝を古美術商にみてもらうものだと思っていた。

こういう植物図鑑のような使い方もできるのねぇ。



『木工』・・・【ポクポク モクモク クミタテル】

『粉砕』・・・【ツブス クダク オモイキリ】

『鑑定・植物』・・・【ミレバ ピタリト アテマショウ】


今日習得したのは、この三種類の魔法だ。

いつもより呪文が覚えやすい気がする。



畑には、小屋の中の麻袋に入れて置いてあった「もみ殻」を持っていくことにする。

もみ殻は種の保水と保温に最適だ。

ニンジンの種にはぴったりの毛布なのよね。


畑に行ってみたら、だいぶ地面が乾いてきていた。昨日の午後に雨が上がったので、湿気と乾燥のバランスがちょうどいい塩梅(あんばい)だ。


珠美は畝の草を削った後で、次々に種を蒔いていった。

大根とゴボウは点蒔きで、ニンジンはすじ蒔きだ。

蒔いた後は土をかぶせ、手で軽く押して表面を平らにし、種を土の中に落ち着かせる。そして『ウォーター』魔法で、水をたっぷりとやっておいた。


ずっと早く種を蒔かなくちゃと焦っていた気持ちが、ここでようやく落ち着いた気がする。

これからは自然とのんびり付き合っていく時間だ。


春の日差しが頬に心地いい。

遠くからウグイスの声も聞こえてきた。


ふふふ、なんかいかにも田舎で農業をやってる感じ。


他の畝の上も軽くジョリジョリと草を削っておこう。

本当に雨の後は草がすぐに出てくるよね。



メインの仕事が思ったより早く済んだので、珠美は昼前には家に帰ることができた。


どうしようかな、お昼ご飯の前に洗濯だけやっておく?

いやいや、どうせ濡れるんだから髪も洗ったほうがいいよね。


この後、珠美は髪を洗ってワンピースに着かえ、作業着の汚れを落とすために川で下洗いをしていたのだが、珍しいお客さんを迎えることになってしまった。

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