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神様に借りた農場  作者: 秋野 木星
第一章 四月
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雨上がり

さてと、ガーデンテーブルと竹箒ね。


昼食の後を片付けた珠美は、煮込んでいたタケノコの鍋を火からおろすと、フタをして作業台に置いた。

この時、つまみ食いをしてみたが、しっかりと醤油だしの味が染みて、やわらかくて美味しかった。

これ、いくらでも食べられそう。

今度はワラビを採ってきて、一緒に煮るのもいいな。



農具小屋に戻ってきて、まずやったのは釘の整理だ。

さっき作った竹の小物入れに、大きさごとに分けて入れ、真新しい棚に置きに行った。


へっへっへ、いい感じ。


ピカピカの釘を置いて、できたての木肌も新しい家具を眺めていると、顔がニンマリとほころんでくる。

いかんいかん、テーブルと箒だ。


一度、衣装だなや作業台を作ったので、残った端材で小さなガーデンテーブルを作るのは簡単だった。

四角い木枠で二つの足を作り、その上に板をのせて釘で打ち付けていく。

足枠が「日」の形になるように横に棒を渡す。

その横棒に乗るように、細い竹を丸のまま使って渡し、針金で括り付けていった。ここはテーブルの下の荷物置き場にする予定だ。

テーブルの上を紙やすりで滑らかにすれば、あっという間にガーデンテーブルの出来上がりだ。


ちょっとこれ、プロ並みの作業スピードになってきたわね。

ふふふん。

珠美のドヤ顔にペロルも苦笑していた。



竹箒の方は、少し手間がかかりそうだ。

孟宗竹の幹から外した竹の細い枝には、枯れているとはいってもまだ葉っぱがところどころについている。これを作業台の上で丁寧に取って、裸ん坊の枝だけにする。


この時点で、まだ柔肌の手が痛くなってきた。


この枝を長さが揃うように分けていく。枝の根元の側枝の方向を揃えたり、根本辺りがすっきりするように細い枝を剪定ハサミで切って払ったりもしておく。

この根元の状態が竹箒のフォルムを決めるので、地味だが大切な作業だ。


珠美はこれを細くて短い枝、それよりも太くて長い立派な枝、中くらいの長さの枝の三種類に分けておいた。


手に持つ方の竹は真っすぐで、にぎりやすい太さのものを選んだ。長さは1mぐらいだ。

こちらには先の方に二か所穴を開けて、十文字の角度になるように、細い竹の棒を両端に5㎝ずつ飛び出した釘のように打ち付けておく。これが竹の枝を付ける時のストッパーの役目をする。


最初に細くて短い枝を20本以上、持ち手の竹にぐるりとつけていく。

ここで針金を三周回して、きつく締めて穂をとめ付けるのだが、珠美のおじいちゃんは身体全体で箒を抱え込んで穂を押さえつけ、力いっぱいに針金を引っ張ったりねじったりするのを繰り返していた。


珠美にはこれはできない。

ふっふっふ、でも魔法があるのよね。


「【カルク キンキン キンカコウ】!」


珠美が両手で押さえつけている穂の根本辺りに、針金がスルスルと巻きついていって、自ら竹の枝を締めあげていく。なんだかアラビアのアラジンのお話に出てくる拷問の魔法でも見ているようだ。


きつくねじられた針金が切られて、竹の枝の間に尖った先を丁寧に入れ込まれたのを見届けて、珠美は枝穂の半ばあたりを紐で縛り、穂の根元や穂先、それに全体の形を整えることにした。

こういう作業は子ども達の髪を散髪していたことで慣れている。


次に竹箒の美しさを決める二段目の作業だ。

太くて長い立派な枝の束を持ってきて、根元の側枝の方向を綺麗に揃えながら、同じ方向に一枝一枝を重ねるように一周していく。

珠美はこの作業をしてみて、番傘の揃った傘骨のようだなと感じた。おじいちゃんから学んだこういう作業の中に、日本人の細かいことにも気を抜かない、どこまでも美を追及する姿勢の一端を見るような気がする。


この二段目は、根元と少し上の二か所を針金でとめる。

この時にストッパーにしていた十文字の竹釘も先を飛ばしておく。


三段目の中くらいの長さの枝は、上に巻かれた針金の辺りから枝を生やすように差し込んでいく作業になる。

今までの作業で、箒の穂がきつく締まっていることから、プラスのドライバーで隙間をこじ開けながら、枝を差し込むことになる。つまり枝の根元も尖らせておいた方が差し込みやすい。


差しては、枝の隙間を整え、また差しては、締まり具合を見る。


全体の穂のボリュームが満足いくようになったら、これも二か所針金でとめていく。


最後に枝の隙間を整えて、飛び出している穂先を整えたら、床に箒を立ててみる。


「立ったぁ!」


魔法使いの箒のように一人で立つことができたら、おじいちゃん直伝の竹箒の完成だ。



この箒にまたがって、空を飛ぶことができるかしら?

ついつい、そんなことを思ってしまうわね。


珠美が外を見ると、降り続いていた雨がやんでいた。


「珠美、虹が出てるよ!」


いつの間にか庭に出ていたペロルが、息せき切って駆けてきて教えてくれた。


珠美も腰を伸ばしながら外に出てみると、雨上がりの新鮮な空気の中で、薄く色づいた虹が東の空を翔け登っていっていた。

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