6、お城に帰ることにしました
「え、Sランク…だと…?」
「あぁぁ、カイト様の驚いた顔、はぁはぁ。」
『フィー!?ちょ、大丈夫?鼻血の量半端じゃないわよ。』
ここは戦士ギルド内にあるフードコート。本来ならここで食事や雑談をするギルドの憩いの場だ。
だがいまは、完全なるカオスとなっている。
僕が驚きのあまり棒立ちのまま硬直し、フィーはそんな僕の顔を見て鼻血を噴き出しながら床で悶絶し、他の人たちはそんな僕らを見てあたふたしている。
「Sランクって…Sランクって…」
「あぁもうカイト様可愛過ぎます~。」
『勇者様落ち着いて!フィーも戻って着なさいっ!』
~1時間後~
「ごめんなさい。少しメイドさんのイメージが崩壊しちゃって…」
「わたしはただカイト様のお顔が可愛過ぎて、体が疼いてしまっただけですっ!」
『勇者様のメイド像がどんなものだったかは知りませんが、この世界のメイドもみんながみんな戦闘能力が高いわけではありませんよ。ま、元にもどってなによりですよ。』
『フィーは少し場を弁えなさい。気持ちはわからなくもないけど…』
ようやく現実を受け入れることができた僕はギルドの人たちに謝罪した。僕の意識が元に戻るまでずっと介抱していてくれていたようだったからね。
「しっかし、フィーってかなりの実力者だったんだ。」
「専属メイド候補たちは基本、ご主人様をお守りするために戦闘訓練を積んでいるんですよ」
「なるほどね。」
ちなみにSランクは世界中のギルドを合わせてもたったの100人しかいない。その100人の中でもフィーは指折りの実力だとか。
閑話休題
「さて、登録も終わったことだしクエストでも受けようかな?」
「え、もう依頼を受ける気なのですか?今日はもうお休みになられたほうがいいのでは。」
そういえば、今日はまだ異世界ライフ初日だし食べ物もろくに食べていないな。
「わかった。それじゃあ、城に戻ろうかフィー。」
「はい、カイト様っ♪」
『あれカイト、どっかいくのか?』
『これから勇者様歓迎パーティやろうと思ってたんだけど』
「今日はもう上がらせてもらうよ。それじゃあ皆、また明日。」
とびっきりの笑顔でそう答えると、みんな顔を真っ赤にして俯いてしまった。
もうやだ、この能力。
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赤面している皆を見てみぬふりをしつつ外に出ると、あたりはすっかり暗くなっていた。感覚的に夜の7時くらいかな?―――ちなみにこの世界でも1日は24時間。1年は240日、つまりひと月あたり20日ということになる。
「カイト様、このまま城にお戻りになられますか?」
時間について考えていると、フィーがそんなことを聞いてきた。僕としてはもっと町の中を探索してみたいけど、もう店も閉まっているみたいだし、
「そうだね。このまま城に戻ることにするよ。」
町の探索は明日ゆっくりすることにしよう。
「わかりました。それでは行きましょうか。」
そういってフィーは僕の腕に抱きついてくると、頬擦りしてきた。腕から柔らかい感触が伝わってくる。クソッ、落ち着くんだ僕。ここで理性を飛ばしたらのちのち大変なことになっちゃう。
ここは抱きついた理由を聞いて、なんとか離れてもらえるよう説得しよう。
「フィー、急に抱きついてどうしたの?」
「え、えっと、カイト様にくっ付きたくて―――じゃなくて、その、カイト様が寒そうでしたので温めようかと思いましてっ!」
「そ、そうなのか…」
前半の言葉が本音だとしたら、離すことができないだろう。主従関係を認めてまだ数時間しかたってないのに、フィーはもう完全に甘えん坊になってしまっていた。こうなってしまった人は、僕が拒んでも絶対に離れない。実際、元の世界にも同じような人いたしね。
「この際諦めるのも手なのかな…。」
「?何か言いましたか、カイト様。」
「いや、なんでもないよ。」
そういいながらフィーをなでると、「ふにゃ~」とか言いながらにやけ始めた。
「さて、城に帰るとするか。」
僕は、腕にフィーを抱きつかせたまま城へ向かうことにした。
ちなみに今は夏だったりする。
「あっつ…」
僕はフィーの抱きつきによる暑さと夏独特の蒸し暑さに耐えつつ歩く。
今回からペースを落とすために、文字数を大幅に削りました。ネタはしっかりとあるので、今後もしっかり投稿するつもりです。今後も文字数が変化したりして読みづらいかもしれませんが、読んでもらえたらなと思っています。




