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5、ギルドにきちゃいました

文字数多めです。

フィーの案内で僕は今とある建物の前に立っている。他の建物とは違い、石と木でできていて三階建て。そしてなにより特徴的なのは、正面入り口上部で輝いている剣と籠手こての描かれたエンブレム。


そう、ここは戦士ギルド本部。僕が入会しようと思っているギルドだ。


「?どうしましたか、カイト様。顔色が悪いですよ。」


そして僕は今、絶賛緊張中だったりする。


だってギルドだよ!?こういうのって大体入った瞬間、大柄な男に絡まれたりすんじゃん。僕そういうの苦手なんだよ…。ほらそこ、チキンとか言わない!


「もしかして、緊張していらっしゃいますか?」


フィーが僕の顔を覗き込みながらそう聞いてきた。


「うん…ちょっとね。」


ここで強がってもしょうがないので、僕は正直にそう答える。


「大丈夫ですよカイト様、もう既にここのギルドマスターには念話でカイト様のことを伝えてありますから。」


「え、そうなの?」


「はい♪」


僕の不安要素とは若干違う気もするけど。まぁ、いいか。


それよりも、


「さっき言ってた念話って何?」


フィーが言っていた念話という単語についてだ。ギルド長に伝えたとかなんとか言っていたから、大方検討がつくが…


「それについては、ギルドで説明を受けたほうがよろしいかと」


「なんで?」


「それはまぁ、お楽しみってことで」


そういうとフィーの顔は、なにかを期待しているような表情をした。一体何なんだ?


「さぁカイト様、はやくギルド内へ入りましょう。」


そう言うとフィーは僕の腕を掴むとそのままギルドの中まで引っ張りながら走っていった。


「え、ちょ、まだ心の準備がぁぁぁぁー!」


引っ張られた腕が地味に痛い…




―――――――――――――――――――――――――――――――――





「こんにちはー!」


フィーはバンッと大きな音を出しながら、ギルドの扉に突っ込んだ。中にいたギルドメンバーらしき人たちが驚いた顔をしていたが僕らのことを見るや否や、いっせいに僕らのもとへ押し寄せてきた。


ちなみに僕は、引っ張られて崩れた体勢を何とか整えてフィーの隣に立っている。


チッ、やっぱり絡まれるのか。できるだけ穏便にすませたかったのにな~。


さて、どうしたものか。


押し寄せる人たちへの対処方法を考えていると、急にフィーが前に出た。


なにやってんのこの娘!?早く後ろに下がらせないと。


僕がフィーを後ろに下がらせるために腕を掴もうとしたところで、フィーが口を開け、







「みんなー、ひさしぶりー。帰ってきたよ~」


『『『おかえり、フィー!』』』








まるで家に帰ってきたような挨拶をした。押し寄せて来ていた人たちも、久しぶりに家族が帰ってきたときのような笑顔をしながらフィーを歓迎している。






「え、どゆこと?」



ギルドの人たちがフィーを囲んで、談笑しはじめた。



「え、なんで?え?」


状況が理解できない。



『そういえばフィー、この可愛い顔をした奴は一体誰だい?」


『この辺りじゃあ、みかけねぇ顔だな。』


『フィーの友達?』


と、混乱している間にいつのまにか話の矛先は僕に向いていた。って、誰が可愛い顔だ。


「この方はカイト様。王女様に召喚された勇者様で、わたしのご主人様よ。」




『『『………』』』






『『『えええぇぇぇぇぇぇぇ!!』』』





うるさっ!密集してるから余計うるさい。というか僕の存在って叫ぶほどなの!?





閑話休題


僕は平伏しまくるギルドの方たちにジャンピング土下座しながら普通に接して欲しいと頼んだ後、ギルド内のフードコートで何人かのギルドメンバーの人たちと話している。


といっても、もっぱら質問攻めだけどね。


『で、なんでカイトはこのギルドに入ろうって思ったんだ。』


「フィーに、魔物との戦闘に慣れるには戦士ギルドに入るのがおすすめだって言われたからなんだ。」


『なるほどね。』


向こうの席で、女性陣がフィーを囲みながら『フィー、グッジョブ!』とか言っているのはきっと話で盛り上がっているだけだろう。うんそうだ、そうに違いない。


「さて、それじゃあそろそろ登録にいくとするか。どこで登録できるか教えてくれない?」


「登録は受付でできますよ。カイト様。」


「うわっ、びっくりした。」


いつの間にか背後に立っていたフィーにそう説明された。というかこの娘何者?ギルドの人は当たり前みたいな顔してるし。まぁ後で説明してもらえばいいか。


「それじゃあとっとと登録してきますか。」



―――――――――――――――――――――――――――――――――






受付の女の子に声をかけて、ギルドに入会したい旨を話して登録の手続きを進めていく。


―――ちなみにフィーはまだフードコートで談笑中だったりする。フィーは「お供します!」と言ってきたが、まだ話し足りない感が他の人から感じたのでやんわりと断ってきたのだ。


声をかけた娘は「みゅいっ!?」とか変な奇声をあげたので正直怖かった。


「そ、それではここに名前と使う武器、それから職業をお書きください。」


そう言われたのでさっそく羊皮紙に羽ペンで項目を埋めていく。



…羽ペン書きづらいなー。おまけに受付の娘たちが僕のことめっちゃ見てくるから余計書きづらい。


とりあえず自分の名前を書いて、武器はまぁ刀でいいだろう。他の武器も使うことになるだろうけど。


「はい。これでいいかな?」


すべての項目を埋めたあと、受付の娘にそれを渡す。


ふぇ、異世界じゃ日本語は通じないんじゃないかって?




………




そうだったー!


「ごめん。間違えて僕の世界の言語で書いちゃったから書きなおさして。」


「え、で、でもここにはちゃんとこの国の言葉が書かれていますが…?」


ん、どういうことだ?


「ちょ、ちょっとそれ、もう一回確認させてくれない?」


「あ、は、はいっ!」


そういって僕はさっき書いた羊皮紙を受け取り、自分の書いた部分を見た。


そこには、日本語ではない字が書かれていた。しかも、


「読める。読めるぞっ!」


この謎の文字が天空の城の某大佐ばりに読めるのだ。なんでだ?



―――後でステータスを確認してわかったことなのだが、どうやら自動翻訳というもののおかげらしい。アルティナさんナイス!



ま、それはおいといて。


「それじゃあこれで登録は完了なのかな?」


「あ、あのっ、その前に職業をお決めいただかないと…」


「あ、やっぱり?」


職業の欄はあえて無視したのだがやっぱりダメなようだ。


「じゃあどうしたらいい?」


「え、えっと、ですね。あ、と、えっと」


なんかあたふたし始めてしまった。というかこの感じ、どこかで見た気が。


ま、そんなことより。まずはこの娘をなんとかしないと。


「そんなに慌てなくても大丈夫ですから、ね。」


そうやって落ち着くように笑顔で言うと、


「!みゅいっ、みゅいっ、みゅいぃぃぃっ!」


顔を真っ赤にしながら奇声をあげ始めた。やばい、可愛いけど怖い。


しばらく待つとするか。





~10分後~





「みゅ~。も、もう大丈夫です。」


「落ち着いたみたいだね。」


「はい。ご迷惑をおかけしました。」


さっきとはうって変わってとても落ち着いた口調になった。やっぱりこの感じどこかで見た気が…


まぁ、あとで考えるか。


「それじゃあ職業についてですが、登録の際、職業がない方はこの水晶を使って決めることが可能です。」


そう言いながら受付の娘は縦横40cm、厚さ2cm位の半透明な板を取り出した。


「へぇ~。どうやって使うの、これ?」


「これに手で触れてもらうと水晶に、触れた人に適した職業が浮かびあがります。複数の場合もあるため、その場合はその中から1つ選んでもらうことになります。」


「職業に就くとどんなことがあるの?」


「職業に就く事によってその職業に合ったものが強化されます。例えば、魔術師なら魔力が増え、剣士なら力や体力などが強くなります。」


なるほど。つまりステータスに補正が付くのか。そいつは便利だね。


「わかった。それじゃあさっそく、やっちゃいますか。」


そういいながら水晶の真ん中あたりを手のひらで触れた。すると青白い光を帯びた文字が浮かび上がった。なんかいっぱい浮かびあがってきたけどどれにしたらいいのかな。


そう思いながら浮かび上がった文字を読んでみる。







1:剣帝


2:アサシン


3:召喚士


4:創造神の旦那様


5:ハーレムマスター


0/3






うん、最後の二つ絶対おかしいよね。ていうか下のあれ何?三つまで選べるってことかな。でもさっきは一つだけとか言ってたけど…


ま、いいか。



「ねぇ、これってどうやって選ぶの?」


「お好きな職業の書かれたところをお触りください。」


なるほど。それじゃあさっそく。




「えっと、アサシンと召喚士と―――」


二つの職業を決めて三つ目を決めるとこで、


『カイト君は私と結ばれるの』


と、どこからかアルの声が聞こえてきた。瞬間、『剣帝』のところを選択しようとした僕の指が勝手に下の項目に下がり、『創造神の旦那様』にむかっていった。


「させるかっ!」


状況を瞬時に理解した僕は、指先に力をこめて何とか軌道をそらすことに成功した。


「よし、なんとかなったかな?」


そう言いながら指の着地点を見る。


「うそ、だろ…」


僕の指は『創造神の旦那様』を見事回避していた。










『ハーレムマスター』を選択することによって








「不名誉なー!!」






―――――――――――――――――――――――――――



「これで登録は終了です、お疲れ様でした。それではこれより、ギルドカードを発行するので少々お待ちください。」


職業が決まったことで僕は晴れてギルドメンバーの一員になったみたいだ。職業に若干、いやかなり不満があるが致し方あるまい。ていうかハーレムマスターって何だよ!?


「どうぞギルドカードです。お受け取りください。」


心のなかで文句を言っている間に僕のギルドカードができたようだ。って、もう出来たのか。早いなー。



そう言って渡されたのは金属の小さな板状の物で、僕が触れた途端に銀色のチェーンが板から出てきてネックレスのようになった。なにこれ怖い。


「それではギルドカードについてご説明致しますね。」


「え、なんか機能とかあるの?」


「はい。ギルドカードには二つの機能が備わっています。そのうちのひとつに、『インデックス』というものがあります。」


「いんでっくす?」


「『インデックス』はギルドカードの所持者のみが使える能力です。勇者様、ギルドカードの赤い部分を触ってみてください。」


そう言われた僕はギルドカードの中心部にある赤い宝石のようなものに触れた。すると、目の前の空間に切れ目のようなものが出現した。


「その空間の切れ目が『インデックス』です。そこにアイテムを入れることによって収納が可能です。念じることによって穴の大きさも変えられますよ。」


ふぇ~。これは便利だな。ド〇えもんの四次元ポ〇ットみたいだ。


「そして、もうひとつの機能は『念話』です。」


これはさっきフィーがいってたやつか


「その『念話』ってどんなものなの?」


「念話とは、ギルドカードに登録した人と通話する機能です。一度ギルドカードに登録してしまえばいつでもどこでも会話ができますよ。やり方は耳に手をあてて、相手の名前を念じるだけです。」


「つまり、いつでも簡単に人と会話できるってこと?」


「はい。」


「なるほどね。」


たしかにすごい能力だがそこまで驚くことでもないな。僕らの世界には携帯電話もあったわけだし。


「最後にランクについてです。ランクは依頼達成や魔物討伐によって上がっていき、ランクが高いほど難易度の高い依頼を受けることができます。ランクはFからA、それより上はS、SS、SSSとなっています。ちなみにカイト様は登録したばかりなのでFランクからとなります。」


僕はFランクか。まぁ当たり前か、最初だし。


「これで、ギルドカードの説明はおわりです。ギルドカードはご自由に装備してください。」


「え、装備前提なの?」


「ギルドカードの紛失を防ぐためです。」


「了解。」


僕はさっそくギルドカードを首にかけてみた。うん、悪くないね。






――――――――――――――――――――――――――――――――――


さて、登録も終わったことだしフィーを呼ぼうかと思ってフィーのいるフードコートを見ると、フィーが残念そうな顔をしながらこっちを見ていた。


「フィー、登録終わったよ。」


僕はあえてそのことに気づかないフリをして、フィーを呼んだ。なんとなく、触れないほうがいい気がしたからだ。


「あ、はい…カイト様…。念話の話で驚くと思ったのにな~。驚くカイト様の顔…見たかったな~。」


最後のは聞きたくなかった…。ていうかこの娘、わざと聞こえるように言ってない?


まぁ、いいや。それよりもさっきから気になっていたことを聞いてみよう。


「ねぇフィー、あの受付の娘ってフィーの知り合い?」


そういってさっき登録の手続きをしてくれた娘を指差す。


「ああ、あの人はソラリス・クルーガー。わたしのお姉ちゃんです、カイト様。」


やっぱりそうですか。そんな気はしてたよ。キョドり方とかめっちゃ似てたし。



あ、肝心なことを聞いてなかった。


「そういえば、フィーはこのギルドの関係者なの?まわりの人からの反応を見る限り、ギルドの人たちとはかなり長い付き合いみたいだけど。」


そう、フィーとこのギルドの関係だ。ちなみに僕の予想だとフィーはギルドに所属していると思われる。


「あれ、言ってませんでしたか?わたしは戦士ギルドのギルドメンバーです。ちなみにランクは―――」


うんうん、やっぱりギルドメンバーだったか。ここまでは予想どうり。あとはこの娘のランクだけ。ランクはCくらいかな。メイドさんだしね。









「Sです♪」








この後、僕の驚いた顔を見てフィーが鼻血を噴き出して床に転がりながら悶絶したのは言うまでもない。




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