54、指輪を渡されました
「よし、準備できた!ごめんね待たせて。」
「大丈夫だよお姉ちゃん、これくらいどうってことないよ♪」
「ふふっ、ありがとう志穂♪」
うんうん、姉妹仲が良いって素晴らしいよね。喧嘩ばっかしている人たちに見せてあげたいよ。
「海斗様?勝ち誇ったような顔をしてどうかなさいましたか?」
「え?ああいや、別に何でもないよ?」
「どうせのんきな事を考えていたんだろ?」
「失礼な!もっと知的なことを考えていたのさ!!」
まったく、孝はいっつも僕をバカにして。
これがいわゆる「いじめ」ってやつなのか!?僕はそんなものには絶対屈しないぞ!!
「またくだらないこと考えてるな…」
「いったい何を考えているのでしょうか…(もしや私のことだったりして…だったら良いですね♪)」
「よし、そろそろいこ―――ん?ごめん、ちょっと念話。」
このタイミングで…いったい誰からだろう…
『ハーイ♪カイト君元気にしてたー♪』
「アルか…うん、元気にしてたよ。」
『ふふふ、お家も気に入ってくれたみたいだし、造った甲斐があったわ♪』
「うん、本当にありがとう。今度会ったらきちんとお礼をさせてもらうよ。」
『え?本当に?ならちょうどいいわ。いますぐ私のところにきてちょうだい。』
「え、何かあったの?」
『う~ん、ちょっとね。とりあえず来て欲しいんだけど…』
「…わかった。ちょっと待ってね。」
今から、ってことは姉さんたちには付き合えないな。
しょうがない、フィーに頼むとするか。
「フィー、ちょっといいかな?」
「はい、なんでしょうかカイト様?」
ものすごく嬉しそうに反応するフィー。尻尾があったら千切れんばかりに振っているだろう。
…少し見てみたいかも。
「えっとね、ちょっと用事が出来ちゃって一緒にいけなくなっちゃったからさ、フィーがいろいろとみんなのサポートをしてくれないかな?」
瞬間、目に見えてフィーが落ち込んだ。なんだかものすごく暗いオーラがでているような…
「…わかりました。どんな用事かは存じませんが、頑張ってください♪」
それでも笑顔を絶やさない彼女を見ていると、なんだか罪悪感が…
どうしたらいいんだろう…
そうだ!
「代わりといっちゃあれだけど、今度一緒に買い物に行こうよ。それで、いいかな?」
本当に代わりにならない。僕なんかと買い物に行って何が楽しいんだ!
「ほ、本当ですか!?」
あれ?フィーがものすごく元気になってる。あんなので本当によかったのかな?
あ、あれか、荷物を持たせようってことか。なら納得だね。
「絶対、絶対ですからね!!」
「うん、約束するよ。」
「うふふ、楽しみですね♪」
よかった、フィーが元気になって。
でも、荷物持ちを確保したくらいでそこまでなるかな?
ま、いいか。
『話は終わったかしら?』
「うん、いまさっき終わったよ。それじゃあ今からそっちに行くよ。」
『行くって、どうやって?』
「え、それは、あれ?」
そういえばどうやって行けばいいんだろう。
えっと、いままでは確か眠ると向こうに行けたんだっけ。
『大丈夫よ、このお屋敷の中に私のところに来れる『トビラ』を作っておいたから。』
「え、そんなものどこにもなかったけど?」
あ、でも開かない扉とまだ開けていない扉があったけ。
『とりあえず、お屋敷の中に入ってくれるかしら。ここからじゃ説明しにくいわ。』
ちなみにここは正門の前だったりする。玄関まで結構な距離である。
「屋敷が遠い…」
『何言ってるのよ!?』
◆◆◆◆◆◆
~海斗邸 1F玄関~
「で、その『トビラ』っていうのはどこなの?」
『カイト君から見て左、リビング側の扉の先よ』
リビング側の扉…あの開かない扉か…
「でもここ開かないんだよね。どうしたらいいの?」
『え?ああそれ、下から開けるのよ?』
え、下から?
とりあえず扉の下を見ると、少しだけ隙間がある。
まさか…
指を隙間に入れて、扉を上に押し上げる。
すると扉はいとも簡単に開いた。
『どう?簡単に入れないように少し工夫したのよ?』
「まんま忍〇屋敷じゃないか…」
なんで普通のお屋敷にそんなギミックをつけるのさ!?ゲームじゃないんだからね!!
「えっと、『トビラ』ってこれのことかな?」
扉の先は何もない小部屋。その床には青白く光る魔方陣が描かれていた。
「ゲームだとこの魔方陣に乗るとワープとか回復とかするんだよね」
『さあ、一気に飛び込んじゃって!』
「わかったよ。」
よし、景気付けにジャンプして乗りますか!
「イチ、ニの、サンッ!」
掛け声と共に床を思いっきり蹴って跳躍。若干の滞空後、体が地面に吸い込まれる。
ん?吸い込まれる?
足元にはいつか見たあの漆黒の穴がポッカリと口を開けていた。
「またこのパターンなのーーーーーーーー!!!!????」
◆◆◆◆◆◆◆
~天界~
「あ、来たきた♪カイト君やっほー♪」
「やっほー♪じゃないよ!!なんであそこまで落とし穴なのさ!!」
魔方陣が醸し出していた雰囲気丸潰れじゃないか!!
「まぁそんなことは置いといて、本題に入りましょ。」
「はぁ、もういいや。で、その本題っていうのは。」
いままでの流れからして、別に深刻なものではないだろう。
かと言って、ここに直接呼ぶほどだからそれなりに重要なことなんだろうけど。
「まずはこれを受け取ってくれないかしら。」
そう言って渡されたのは、青い小さな箱。中には何の装飾もない翠の指輪が入っている。
「これは、何?」
「結婚指―――じゃなくて、それは『主の証』。あのお屋敷の持ち主である証よ。」
「前半部分でなんか妙な単語が聞こえたような…」
「き、気のせいよ、あはははは…」
引き攣った笑顔で笑うアルの顔からは、不自然なほど大量の汗が見えた。
いったい何を考えているんだろうか。
「で、この『主の証』があることで、どんな意味があるの?」
はっ、としたアルが「こほんっ」とわざとらしく咳払いをして、いつもの笑顔に戻る。
「あのお屋敷でまだ開けていない場所があるでしょ。」
開けてない扉…ああ、あの二階にある黒い大きな扉のことか。
「うん、開けようとはしたんだけど、なかなかタイミングがなくてね。」
「そう。あそこはね、『創造の部屋』と呼ばれるものなの。」
「『創造の部屋』?」
コクリとアルがうなずく。
なんだか話が難しくなってきたぞ?僕なんかがついていけるのだろうか…
「『創造の部屋』では、ある一定範囲内の地域のつくりを変えることができるの。例えば、中庭に池を作るとか、建物を増やすとかね。」
なにその便利部屋。それなら土地を拡張し放題じゃないか!!
というかこのシステムもどこかで聞いたことがあるような?
「だけど、空間を無理やり弄るからそれなりにリスクがあるの。だからその部屋には決められた人しか入ることが出来ないの。」
確かに。悪用すればかなり危険かもしれない。下手に使えば人の命だって奪うかもしれないし。
「で、その決められた人が身につけるのがその『主の証』なの。それさえあれば部屋の中に入ることができるの。」
「なるほどね。でもこれって僕に必要なのかな?使うことはないと思うんだけど。」
これ以上元の世界から人を呼ぶ予定もないから部屋を増やすこともないだろうし…
「大丈夫よ。近いうちに必ず使うことになるから。」
「え?そうなの?」
もしかしてアルには未来が見えているのだろうか…」
「ええ、だって私とあなたの間に子供が―――」
「そんなことだろうと思ったよちくしょう!!」
ちょっとでも「アルって実はすごい?」って思った僕がバカだったよ。これじゃあ孝にバカにされても文句が言えないじゃないか!
「まあいいや。どこかで使うかもしれないから一応もらっておくね。」
「ちゃんと最後まで言わせてよ~。ま、その指輪を使うか使わないかはカイト君自身で決めてね。絶対、悪用だけはしちゃだめだからね!!」
「わかってるよ。…なにからなにまで本当にありがとうねアル。」
「っ!こここ、これくらいどうってことないわ!ただ、どうしてもお礼がしたいって言うんなら―――」
「あ、もうこんな時間だ!そろそろ戻らないと姉さんたちが帰ってきちゃうや!」
「だから最後まで言わせてよ!!」
頬を膨らませてあからさまに起こる創造神。神様ってこんなに可愛い生き物なんだな~。
あれ、どうして僕はそんなこと考えているんだろう?
最近変だな…
「それじゃあね。また近いうちに会いにくるよ。」
「ええ、また来てね♪」
近くに開いていた穴に足を入れる。もう穴に落ちるのも慣れた気がする。
あ、そうだ。
「アルさんや、お風呂場の『アレ』を普通のものに変えといてくださいな。」
「あ、あれってなんのことかしらお爺ちゃん?」
「と ぼ け な い で ね?」
「…ハイ、リョウカイシマシタ。」
「ふぅ、これで安心してお風呂に入れるよ。」
久しぶりにゆっくりとお湯に浸かれそうだよ。
「じゃ、またね~」
「うん、また近いうちに」
「「また会おう!」」
◆◆◆◆◆◆
「ふぅ、相変わらずカイト君はかっこよかったな~♪」
カイト君の落ちていった穴がゆっくりと閉じていく。その様子がなんだか名残惜しくてしょうがない。
「近い将来、あなたがすること。いままで誰もしてこなかったこと。」
手元にある水晶を撫でながら私は口元を緩める。否、緩んでしまった。
「カイト君、あなたが人に愛される理由がなんだかわかった気がするわ。」
「体質なんかじゃない。あなた自身の魅力が…」
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~フィキペディア~
『創造の部屋』と『主の証』
創造神アルティナの力をふんだんに使い込んだ魔法の部屋。室内には範囲内の模型、さまざまな用途に対応した建物の模型と道具が置かれている。模型は現実と直結しているため、下手に動かすと大惨事になってしまう。そのため使用する際は範囲内にいる人を、固定された建物または敷地外に避難させてから使用しなくれはならない。
主の証は悪用を防ぐために作られたものだが、海斗に渡された理由は謎である。(アルティナの気まぐれだと考えられる)
『また会おう』
とある伝説の傭兵とリボルバーの使い手がよく交わした挨拶。詳しくはMG〇3を参照。
急いで書いたので、若干荒いかもしれません…もう少し余裕を持って書いていきたいものです。
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