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53、方針を決めました

~ダイニング~


「どうしたんだ海斗?来るなりテーブルに突っ伏して。」


「聞かないで…思い出したら死にそうだから…」


「朝からいったい何があったんだお前は!?」


まさか僕からあんなことするなんて。あのときの僕は何を考えているんだ!


ああ、タイムマシンがあるなら過去の自分を全力でぶっ飛ばしたい…


「はぁまったく…俺はこの空気の中、どうしてればいいんだよ…」


ちなみに姉さん・志穂は僕の隣、優奈・フィー・ムラマサは僕の対面で満面の笑みを浮かべながら座っている。


ただし、その目は感情のこもっていない虚ろなものだったりする。


僕が顔を上げないのは、あの行動の恥ずかしさもあるが、なによりみんなと目を合わせたくないからだ。


目を合わせたらどうなってしまうのか…たぶん精神に多大なダメージがくるのだろう。


「みなさま~朝食の準備ができましたよ~♪」


そんな空気を知ってか知らずか、キッチンからイリアののほほんとした声が部屋に響き渡った。


場違いにも程があるようなのんきなものだったが、そのおかげで部屋の空気のもとのゆったりとしたものに戻った。


そして僕もあの思い出を脳内の奥底に封じ込めた。






◆◆◆◆◆◆




「さて、それじゃあ始めようか。」


朝食を食べ終わった僕らは、リビングに集まった。みんながみんな自分の居やすい場所で僕のほうを見た。


ちなみに美琴は、起きてきて早々姉さんたちに拉致され、何かをされて帰ってきた。目には涙を浮かべ、顔には恐怖と勝ち誇った表情を浮かべている。


どうしたらそんな表情ができるのだろうか?


「今回みんなに集まってもらったのはズバリッ!今後の方針を決めるためだ。」


僕はテーブルに置かれた紙に文字を書きながら、説明していく。


「僕らの最終的な目標は魔王討伐。だけどこれを達成するのは今すぐでなくてもいいらしい。」


「魔王ね…今すぐじゃなくてもいいってことは、そこまで勢力的に動いていないってことなのか?」


「たぶんね。そもそもどうして魔王を討伐する必要があるのかすら実は曖昧なんだよ。」


魔王が何か悪の元凶だというのならそんな悠長なことは言っていられない。だけど魔王が何かをしたっていう情報は王様からすら聞いていない。


よく言われるのは、「魔王は魔物の親玉だから倒さなくてはならない。」ということなのだが、この世界ではむしろ魔物は獣のような扱いのような気がする。野生では危険でも、家畜として育てれば安全だということもフィーから聞いた。


「つまり魔王が敵なのかどうかすらわからないということね。」


「さすが姉さん、話が早くて助かるよ。」


「えへへ、もっと褒めて~♪」


喉をゴロゴロ鳴らしながら自分の頬を僕のお腹にすりすりしてくる姉さんは無視して…


「現在、魔王が敵なのかどうかは全くわからない。だけど王様がわざわざ僕を異世界から召喚するくらいだ、何か秘密があるのかもしれない。」


でもこのままじゃあ何もできないし…どうしたものか…


「それでしたらみなさんでギルドに入るというのはどうでしょうか?」


提案してきたのは、先ほどまで僕の耳たぶをムニムニしていたフィーだった。


「ギルドでしたら様々な情報が手に入りますから、もしかしたら魔王に関する情報も手に入るかもしてません。」


「なるほど、いいかもしれないね。」


フィーの言うとおり ギルドなら依頼先とかで情報が手に入るかもしれないし、悪くないかも。


「ギルドって?」


「あ、そっか。優奈たちにはまだ知らないっけ。」






~少年説明中~






「なるほどな、ギルドってのは商業団体のことだったのか。」


「…仕事の内容はゲームとさして変わらないみたい。」


「魔物との戦闘なんて、なんだかわくわくするわね!」


「ギルドかー。私なんかが入れるかな?でもなんだか楽しそう!」


「お給金も悪くなさそうね♪」


ふぅ、どうやら気に入ってもらえたようだ。


みんな興味津々なようで、目を輝かせている。まるで新しいおもちゃをもらった子供みたいで、なんだか微笑ましい。


とりあえず、今日の会議はいろいろ収穫があったみたいだ。





◆◆◆◆◆◆




「ギルドに入るのは決まったけど、みんなはどのギルドに入りたいの?」


「俺は戦士ギルドがいいな。どうも商売とかは向いてないんでね。」


「あたしも戦士ギルドに入りたいわ。魔物とは一度戦ってみたかったのよね!」


ふむ、孝と優奈は戦士ギルドか。孝はともかく、優奈の理由がまるで戦闘狂…


なんだろう、もしかしてダイエットの一環か何かなのかな?「戦って脂肪を燃焼!」みたいなキャッチフレーズが聞こえてきそうだよ。


女の子って、わからないな…


「それじゃあそっちの三人は?」


「…魔法ギルド、なかなか興味深い。」


「私は商人ギルドかな?魔法とか戦闘とかはできそうにないから…」


「私も商人ギルドにするわ。これでも商売の知識はあるんだから!」


美琴は魔法ギルドか。なんか新しい何かを生み出してしまいそうだから恐い。


志穂と姉さんは商人ギルド。まぁ妥当、かな?志穂はともかく、姉さんは何でもこなすからな…


べ、別に羨ましいだなんて思ってないんだからね!!


「それにしても、見事なほどバラバラになったね。」


5人全員がバランスよくばらけた。まるで打ち合わせでもしていたかのようだ。


「でもこうもバラバラだと、一緒に行動するのが難しくなりそうだね。」


「その点はまったく問題ありませんよ、カイト様♪」


「そうなのフィー?」


いつの間にか僕の太ももに頭を乗せていたフィーが、僕を見上げながら言ってきた。こうしていると、なんだかおばあちゃん家の猫を思い出すよ。


そんな猫っぽいフィーは、まるで自分の匂いをつけるように僕に頬ずりしてくる。


そしてそのままの体勢で先ほどの説明をしてくれた。


「同じ国のギルドの場合、両者が認め合えばパーティを組むことができます。」


「パーティー?」


なんかRPGゲームでよく聞く単語だったような…


志穂がものすごく怖い笑顔でフィーを睨み付けている。フィーさん、お願いだから頬擦りをやめてください、わが妹の後ろに般若が見えるのです…


「パーティーは、ギルドとは違い、直接協力しあうグループのことです。仕事を一緒にこなしたりすることはもちろん、ダンジョンの探索や国からの依頼も一緒にこなしていくのです。」


なるほど、つまり直接のつながりを持つ『仲間』ってことか。


「ちなみにパーティーは、家族や友人などかなりの信頼関係があるもの同士でしか組みませんね。赤の他人と組むなんてほぼ自殺行為ですから。」


「まぁ命を預けることもあるだろうからな。相当な信頼がなければ無理だな。」


「でもそのあたりは、僕らには全くの無問題だね。」


家族に友人、それに専属メイド。信頼してるなんてもんじゃない。それこそ命なんてひとつふたつ簡単に預けられるくらいだ。


「よし。話も決まったことだし、それぞれの希望のギルドに行こうか!」


「「「「「「「「おー!!」」」」」」」」

今回はフィキペディアは書きませんでした。たまに書かないことがあるのでご了承ください。(できるだけ書くつもりです)


そろそろ一つの区切りまでいきそうです。いい加減章管理などもしていこうと思います。


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