50、何かを垂らされました
「すごいね…」
「ああ、想像以上だな…」
とんでもない解説の書かれている紙から顔を上げ、みんなの様子を見る。やはりかなり動揺しているようで、志穂なんてもはや理解すらしていないようだ。
イリアは「私ってアイテム扱いなんですね…」といろんな意味でショックを受けているようだ。まぁ普通だったらそうだよね。
「そういえば、なんで孝と優奈と美琴は装飾品しか貰ってないんだろう?」
もらった指輪の性能からして、武器がなくちゃ何の意味もないのに…
「ああ、そのあたりは問題ないぞ。」
「え、そうなの?」
「海斗、あたしたちが向こうの世界でどんな存在だったか忘れたの?」
「どんな存在…あ、そっか!」
いろんなことがありすぎてすっかり忘れてた…
そうだ、僕たちは―――
「生徒会役員…」
そう、あの武器所持が公式で認められている生徒会。そのメンバーは皆、自分の得物を所持するのが義務となっている。
銃刀法違反、だっけ?そのあたりも生徒会は特許で問題ないらしい。
今考えると、僕の学校ってかなり異質だったんだな…
「でもみんな、そんなものどうやって持ってきたのさ?」
僕がみんなを召喚したとき、みんなは丸腰だったはず…
「…それについては私が説明する。」
「にょわっ!?」
いつの間にか隣に美琴が立っていた。どうしてもこのシチュエーションだけは慣れないな…
「…そんなに可愛い声を出さないで…襲いたくなる…」
「お願いだからそれだけは勘弁してください!」
スルスルと美琴の細い腕が服の隙間から入ってきて、僕の身体を弄る。撫でられる度に身体がビクッと反応してしまう。
まずい、このままだと美琴が暴走しかねない…
「み、美琴、それより早くさっきの続きを話してくれないかな?」
目の前の優奈たちの刺すような視線を受けつつ、美琴に遠まわしに離れるように言う。
「…わかった。まずは『インデックス』を開いて…」
「なんで美琴が『インデックス』を知ってるの!?」
「…いいから早くして。でないと…」
そう言うと、美琴の腕が胸から下半身のほうへ進んでいく…
「かしこまりましたー!!」
嫌な予感しかしないこの状況で、インデックスを開く以外の選択肢は僕にはない!
すぐさま目の前に『インデックス』を呼び出す。
すると美琴は僕の服から腕を引き抜くと、その腕をそのまま『インデックス』と呼ばれる漆黒の穴に突っ込んだ。そのまま何かを探るように腕をせわしなく動かす。
「ちょ、何してるの美琴!?」
「…ん、ちょっと待って…………!あった…」
ん?あった?何が?
「…これが欲しかったの…」
そう言う美琴の手には、ものすごく大きな銀色のケースがぶら下げられている。
「え?何それ?」
まったく身に覚えがない…というかなんでそんなものが僕のインデックスの中から?
すると美琴はケースをテーブルに置き、ロックを解除していく。パチン、パチンとフタを閉めていた金具がはずれていく。
孝たちはその様子を静かに見ている。え、事情を知らないのって僕だけ?
そして最後の留め金がはずされ、美琴がゆっくりと開ける。
「お、しっかり届いてるな!」
「よかったわ。これでまともに闘えそうね♪」
「…部品は―――欠けてない、よかった。」
ケースの中には、先端に刃のついた拳銃2丁、銀色の刀身と紫の柄が特徴的な薙刀、そして輝きのない黒に覆われた組み立て式ライフル銃が2丁、それらがきっちりと納められていた。
どれも見慣れたものばかりだった。
「え、これって、孝たちの…」
「ああそうだ。これが―――」
孝が慣れた手つきで刃のついた拳銃―――ガンソードを手に持ち、少しだけ振り回した。
「―――俺たちの得物だ。」
◆◆◆◆◆◆
「なんかいろいろ腑に落ちない事があるんだけど…」
なんで僕のインデックスに美琴たちの武器が入ってたのかとか、なんで王様は孝たちが得物持ちだって知ってたのかとか…
「まぁあれだ、気にしたら負けってやつだ。あんま深く考えないほうがいいだろ。」
「そういうものなのかな?」
…ま、いっか。
「さて、と。それじゃあ僕はもう寝るね。ちょうど寝床も近いし…」
そのまま寝室に向かおうとして、不意に両肩を掴まれた。
「あれ、海斗様?お風呂には入らないのですか?」
「今日は暑かったからのぅ。汗もかいておるだろうし、湯に浸かったらどうじゃ?」
さっきまでずっと孝たちの武器に興味津々だったフィーとムラマサがそんな提案をしてきた。
実際、今日は真夏日でものすごく暑かったから、正直言って早く汗を流したい。
だけど、
「いやいい!あのお風呂に入るのだけは絶対にいやだ!!」
マジックミラーで覗かれるお風呂なんて、好き好んで入るものじゃないでしょ!
「まぁまぁそう言わずに入りなさいよ~♪」
「そうだよ。そのままじゃ汗疹ができちゃうよ、お兄ちゃん?」
「…入るべき。」
「そうね、入ったほうが良いと思うわよ海斗?」
くっ、志穂たちまでフィー側についちゃったよ…
がんばれ僕の思考!君ならこの危機を脱する最高の案が思い浮かぶはずだ!!
………………
…………
………
だめだ、何も思い浮かばない…
…こうなったら―――
回れー右っ!
「戦略的撤退―――」
「「「「「「逃がすと思って(いますか)(おるのか)?」」」」」」
がしっと足を掴まれ、そのまま床にビターン!
ううっ、お鼻がじんじんすりゅ…
「あ、こんなところにローションが!」
首だけを上げて姉さんのほうを見ると、その手には謎の半透明な液体―――の入ったボトルが握られている。
そしてその液体を僕の体に―――――
「いやああああああぁぁぁぁ!?」
何これ冷たい!なんかぬるぬるしてるし!?
うわ、やめて!そんなところに垂らさないで!!
「あらあらこんなにドロドロになっちゃってーはやく洗い流さないとー」
「そうだーお風呂に入ればいいのよー」
姉さんと優奈の棒読みボイスが聞こえる。なんてわざとらしいんだ!
すると、急に体が浮き上がった。否、正確には姉さんたちに担がれた。
「さあお風呂場まで直行するわよー!」
「「「「「おー!!」」」」」
「え、ちょ、ま―――」
抵抗も虚しく、僕の体はそのままお風呂場に連行された。
…なんてチームワークなんだろうか。
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~フィキペディア~
『生徒会役員』
学校の行事の運営や、部活の費用などを検討する人々のこと。生徒会は主に、会長・副会長・書記・会計の枠があり、それぞれの分野で仕事を行う。これ以外の枠がある学校も多く存在する。
私立暁ヶ丘学園は、生徒数一万人以上という大所帯のため、とんでもない広さの土地に建てられている。その広さ、Tドームに換算すると約5個分。土地がないため、近隣の山を崩してたてられたという。故にトラブルなども発生するだろうと考えられ、生徒会は警察としての役目を与えられている。
生徒会のメンバーになるには、敷地内を端から端まで5分以内に移動できる身体能力、自分の得物があり自由自在に使いこなせること、そして問題の解決ができる話術、この三つが必要とされている。
海斗はこのルールを知らなかったが、一応すべての科目をクリアしていたため、生徒会のメンバーとなれた。
ちなみに、学園内はあらゆる国家などから干渉されないため、ひとつの国のようになっているらしい。
『銃刀法』
正式名称、銃砲刀剣類所持等取締法。
銃砲は拳銃や機銃、空気銃など金属性の弾丸を発射可能なものを示す。(ただし、空気銃の場合、弾の威力が人の命が危うくなるほどのものであるとする。)
刀剣は、刃渡り15cm以上の刀、槍。または刃渡り5・5cm以上の剣・ナイフが違法となる。
ただし、包丁などの調理器具は違法とはならない。
『チームワーク』
仲間と連係して物事を成し遂げること。これが完璧にできると、普通はできないようなことも可能となることがある。
ただし、連係する目的を間違えるとただの犯罪集団になりかねないので注意。
生徒会について長々と書いてしまいました。読みにくかったら申し訳ありません。
相変わらず女性陣が変態ばかりとなってしまっています。もう少しおしとやかな娘がだせればよかったな。と反省しています。その分、イリアには純粋であってもらおうと思っています。
感想・評価待ってます!
(投稿再開しました!久しぶりにパソコンを立ち上げたら、週間ユニークが増えていたのでビックリしました。待っていてくれた読者の皆様、本当にありがとうございます!!)




