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47、プレゼントをもらいました

「で、向こうでいったい何があったのさ?」


結局僕とムラマサとフィー、そして孝とイリアはダイニングにあるテーブルに腰掛け、王城での出来事を話してもらうことにした。


孝は幾分か冷静さを取り戻しているが、イリアはいまだに「はぅ」とか「むひゅ~」とかよくわからない奇声をあげている。奇声が出るたび、イリアのたわわに実ったメロンがゆさりと揺れる。


僕はできるだけイリアに目線がいかないようにしつつ、孝に単純かつ明確な質問をぶつけた。


「ああ、それなんだけどな―――」


孝が眉間に手をあてつつ、少し落ち着いた声で話し始めた。


ムラマサは話が長くなると感じたのか途端に眠そうに瞼を閉じ始めた。




◆◆◆◆◆◆




~王城 謁見の間~


「おお、来たか。待っておったぞ―――」


扉を開けると同時に、王様のハスキーボイスが広間に響く。


「死ね――――――――――!!!」


と同時に果穂さんが渾身の飛び蹴りを王様に向かって放つ。その距離15m、高低差およそ3m。通常なら絶対届くはずはないのだが、果穂さんの足は真っ直ぐ王様の顔面に向かっている。


(相変わらず人間離れしているな…)


そんなことを考えているうちに、王様と果穂さんの距離が残り僅かに迫る。ああ、ご愁傷様だ。


着弾、同時にものすごい破裂音が広間に響き渡り、衝撃波がまわりの兵士を吹き飛ばした。おいおい洒落になってないぞ。


俺は「やっちまったか…」という気持ちで王様の無残な姿があるであろう方向を見る。他の三人も諦めたような、よくやったとでも言うような目で同じ方向を見る。


「な!?」


「嘘!?」


「おいおいマジかよ…」


「………!?」


しかし俺らの予想はことごとく打ち砕かれた。各々驚きの声を上げ、美琴は何かをぶつぶつと言っている。呪詛に聞こえてくるのは気のせいではないだろう。


「ふぅ。わし、そんなに嫌われるようなことしたかのぅ…」


「くっ、やはり只者じゃないわね…」


なんと王様は果穂さんの一撃を止めていたのだ。しかも片手でだ。


――――ちょっと、ちょっとストップ!!




◆◆◆◆◆◆



「なんだよ海斗、今が一番いいところじゃねえか。」


「いいところじゃないでしょ!?なんで姉さんが王様を殺しにかかっているのさ!?」


あの人は戦闘民族か何かなの!?どうしてなんでもかんでも力で解決しようとしているのさ!?


「だから行く前に言っただろ?あの四人は嫉妬に狂ってるって。」


「だからって会って1秒たらずでに殺しにかかるほどなの!?」


どんだけ王様嫌いなんだろう姉さん…あと美琴も呪詛を吐いていたとか言うし…


ああ、なんか眩暈してきた…


「まぁそれについてはひとまず置いといて、続きを話すぞ。」



◆◆◆◆◆◆



あの後、なんとか果穂さんをなだめた俺らは、王様の話を聞く姿勢になった。


果穂さんの一撃で玉座が粉々になったらしく、王様も俺ら同様立って話をしようとしている。この人はどうやら自分の強さを鼻にかけないタイプらしい。個人的には付き合いやすそうな人だ。


「それで、俺たちをここに呼んだ理由は?」


話の口火は俺が切った。敬語は面倒なのでとりあえず省略することにした。


王様は先ほどのことを全く気にしていないらしく、笑顔で俺の質問に答えた。


「伝えたとおり、お主たちに渡したいものがあったからなのじゃ。」


王様が指をパチリと鳴らす。それを合図に俺たちの入ってきた扉から続々とメイドが入ってきた。その手にはそれぞれいろんなものを持っている。


そしてそれぞれに王様からの『プレゼント』が渡されていく。


果穂さんには白い羽根のついたブーツと緑の柄の細剣。


師匠(志穂)には変わった形の弓と指輪。


桜葉には竜の紋様が描かれたブレスレット。


片桐には両サイドに猫耳のようなものがついたカチューシャと師匠と同じ指輪。


そして俺は先ほどの二人と同じ指輪。そしてなぜか隣にイリアが立っている。表情は真剣なようだが、よく見ると口元が若干にやけている。


「王様、説明を頼む…何がなんだかさっぱりだ。」


「まぁまぁ落ち着け。話してもよいのじゃが、若干長いからこの紙に性能をまとめたのじゃ。あとで読んでおくれ。」


そう言って王様は俺に、直接その紙を渡してきた。そこに書かれている字は見た事もないものだったが、なぜか俺はそれを理解することができた。覗き込んでくる他の四人の反応を見ると、どうやら全員これを理解できているようだ。


「どんなものなのかはわからないが、一応礼を言わせてくれ。ありがとう。」


「よいよい、礼など無用じゃ。それらは海斗の手料理の礼だとでも思ってくれ。」


王様が何を言っているのかよくわからないが、後ろの四人の殺気が一気に膨張ぼうちょうしたことだけはわかる…


頼む…これ以上暴走しないでくれ…胃に穴が開く…


「あと、この娘はどうしてここに?」


イリアの体がビクッと反応したのが見えた。その顔には不安の色がうかがえる。


「ああ、そのメイドはのぅ…」






「お主の専属メイドじゃ。」






………は?


専属メイド。その単語には聞き覚えがあった。どこぞのメイドも海斗の専属メイドだとか言っていたような…


「ちなみにそのメイドは自分からお主の専属メイドになりたいと申したのじゃ。」


「お、王様っ!?」


隣のイリアがわたわたと手を振ったり顔を赤くしたりしている。その姿が妙に可愛かった。


「はっはっは、そんなに慌てることでもあるまい。」


「いや、でも、はぅ~」


う~む、やはり可愛い。見ていて和むな。


「もちろんお主が嫌だと申せばこの話はおしまいじゃが、どうじゃ?」


その発言にイリアの顔が真っ青になった。口がパクパクと不安そうに動き続けている。


俺は一瞬迷った。この娘を俺の専属メイドなんかにしてしまったら、この娘の自由はなくなってしまうのではないのか、と。


だけどこの娘は自分から俺の専属メイドになりたいと言ったんだ。その願いを無碍むげにすることはできない。この娘を傷つけるだけだ。


なにより俺自身、もっとこの娘のことが知りたい!


「イリア」


俺は隣にいるイリアに振り向き、真っ直ぐに見る。イリアも不安そうな顔のまま振り返る。俺とイリアの間で視線が交差する。


息が苦しい。これから言う言葉が恥ずかしすぎて逃げたくなる衝動を抑えつつ、俺は大きく息を吸い一息で言葉を紡ぐ。


「イリア、どうか俺の専属メイドになってくれないか?」


はっきりと、自分の気持ちをその言葉に乗せて俺は言い放つ。


その刹那、周りからは歓喜の声が、目の前からは「はいっ!」という嬉しそうな声が俺の鼓膜に響いた。



◆◆◆◆◆◆



「これで話は終わりだ、って何笑ってんだよ海斗!?」


「ふふっ、ごめん、まるで最後の言葉がプロポーズみたいでさ。」


「プ、プロポ―――はうぅ…」


「な、おま、プロポーズって…べべべ別にそ、そんなんじゃねえよ!」


わたわたするふたりの姿がなんとも睦まじい。見ていてなぜか和んでしまうな~


ん、そういえば


「姉さんたちは?まだ帰ってきてないのかな?」


「ああ、あいつらなら部屋で休むって二階に行ったぞ。なんかものすごく疲れた顔をしてたが…」


そういう孝も妙に疲れた顔をしている。確かに今日一日を振り返るとかなり濃い一日だったと思う。疲れて当然だろう。


「俺も誰かさんのせいで一気に疲れたよ…」


はて、いったい誰のことだろうか?


「そっか、でも帰ってきてたんだ、少し心配してたから安心したよ。」


まぁ姉さんたちなら何かに巻き込まれても簡単に突破しちゃいそうだけどね…


「さて、話も終わったことですし、ご飯にしませんか?」


フィーが席を立ち、意気揚々とそう提案してきた。自分で作ったものだから早くみんなに食べてもらいたいのだろう。


「おお、そういや腹減ってたんだ。そうしようぜ!」


「そうだね。それじゃあ僕はみんなを呼んでくるよ。」


僕も席を立ち、階段のある玄関に通じる扉へと向かった。少し立ち止まって後ろを振り返ると、ムラマサの可愛らしい寝顔が見える。あとで起こしてあげよう。


ちなみにイリアさんは衝撃のあまり脳がショートしたようで、テーブルに突っ伏している。いったい何を想像したのか、頭から湯気が出ている。







―――――――――――――――――――――――――――――――




~フィキペディア~


『たわわに実ったメロン』


何をイメージしているのかはご想像におまかせします。



『プロポーズ』


主に男性が女性に対して行う求愛行動。告白に近いが、プロポーズは「結婚」を意識させるものがある。好きな人に指輪を送ってロマンチックにする人もいれば、若干青春くさいプロポーズをする人もいるなど、その方法は多種多様である。

孝はプロポーズと言われて戸惑ったが、案外満更でもないかもしれない。





孝とイリア。その仲が進展してくれることを心から願っています。


アイテムの説明は次回まとめてやってしまおうと思います。どんな能力なのか楽しみにしていてください!


間違いを指摘してくださり本当にありがとうございました。おかげですぐさま修正することができました。


感想・評価していただきありがとうございます!今後もよろしくお願いします!!



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