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44、お留守番することになりました

『おお、勇者殿!やはりここにおりましたか。』


『昨日は我々にまで料理を振舞っていただき感謝感激であります!あの味、私は一生忘れません!!」


屋敷の外に出ると、甲冑姿の兵が二人出迎えてくれた。


「いやあれくらいどうってことないよ。それで、今日はいったいどうしたの?もしかして僕関係?」


表情は深刻ではないから、あまり重大な話ではないかな?


ちなみに孝たちは部屋の中で待機してもらっている。大勢で出てきたら変に警戒しているって思わせてしまうからね。


『いえ、今回は勇者様のお連れの方々に王様から伝言を承って参りました。』


「王様がみんなに?」


どういうことだ?まさか姉さんが暴走したときのことを気にして…


『え~王様からの伝言をお伝えします。』


「え、ちょ、待って!」


「?どうかなさいましたでしょうか?」


大丈夫、王様は気にしていないって言ってたし、いまさらとやかく言う人ではないと思う。


でも、もしかしたら気が変わって…


もし姉さんたちに危害があるようなことだったら、僕の責任だ。罰は僕が甘んじて受けなければ…


「うん、もう大丈夫。続けてください。」


『はっ!それではお伝えします。』


くっ、いったいどんな処罰が下るんだ?どんなものでも僕は耐え切ってみせるぞ!






『プレゼントがあるからお城に来てね♪今すぐ!』


『…以上でございます。』


「………はい?」


え、あれ?想像してたのとぜんぜん違うな~あれ~?


「処刑の内容は?」


『は?い、いえ決してそのようなものではございません!』


『どうやら王様が皆様方にお渡ししたいものがあるそうなのです。』


そうか、処罰ではなかったのか。よかったよかった。


「それだったら今すぐみんなを王城に向かわせるよ。」


『よろしくお願いします。こちらで馬車をご用意させていただきました。』


兵たちの後ろには、大きな馬車とがっちりした体格の馬がつながれていた。


「わざわざすいません。それじゃあお願いしますね。」


『はっ!』


『了解であります!』




◆◆◆◆◆◆




「―――というわけでみんなには王城に行ってもらうことになったから。」 


僕は極力笑顔でみんなに事情を説明した。


すると孝以外の四人が大きく息を吸って


「「「「断る!!」」」」


そう断言してきた。


そういうと思ったよちくしょう!なんて面倒な人たちなんだ!!


「大体、なんで私たちがあんな奴のところにいかなくちゃいけないのよ!」


「………」


「私はお兄ちゃんともう離れたくない!」


「あんな奴、滅びればいいのに…」


「なんでみんなそんなに王様のこと嫌ってるのさ!あと美琴は王城に向かって首を切るジェスチャーをしない!!」


どうしてこんなに敵意むき出しなのさ!王様いい人じゃん!!


「孝、なんでこんなことになるの~?」


僕もう何がなんだかわからないよ。


「あ~それはだな…」


「うんうん」






「お前が王様と親しくしてたからじゃねえのか?」


「へ?」


僕と王様が仲良くしてたから?え?どういうこと?


「思い出してもみろ。果穂さんはお前と王様のやり取りを見て暴走してたじゃねえか。」


うん、それは納得できる、けど他のみんなの反応が腑に落ちない。


「それにお前は気づいてないかもしれないが、あの時こいつらも暴走するのをかなり我慢してたんだぞ?」


そういって孝は親指で志穂たちを指差す。


「あっはっはっはまっさかー。志穂たちに限ってそんなことは――――」


「ないとでも思ってたのか?」


「…少しだけあるんじゃないかなーって思ってました…」


「よろしい。」


薄々みんなの殺意を感じてたけど気のせいだって誤魔化してきたのに…


「じゃあみんなはどうしたら王城に行ってくれる?」


僕は四人に向き直り、そう質問した。


すると先ほどと同じように四人は口をそろえて、


「「「「上目遣いで『行ってらっしゃい、お姉ちゃん』って言って!」」」」


「もちろん笑顔よ♪」


真剣な眼差しでそう言ってきた。ええ、もう目がキラキラしてますもん…


「というか志穂にまで『お姉ちゃん』って言うの!?」


「一日お姉ちゃん…イイッ!!」


最近妹が変でお兄ちゃんは心配です…


「男の上目遣いとか絶対需要ないでしょ!」


むしと罰ゲームです。やる側もやられる側も。僕だったら発狂してますよ。だから今発狂しそうです…


「あー、俺は先に馬車に乗ってるからな。」


孝はメンドそうな顔つきで扉から外に出ようとしていた。


出る瞬間、こちらのほうに向き直り、


「頑張れよ。」


ニヤニヤしながらそう言って、そのまま扉を閉めて出て行った。


あいつ、帰ってきたら絶対に殴る。


「それで、やってくれるの?やってくれないの?」


「………」


「海斗…」


「お兄ちゃん…」


うっ、やめろ、やめてくれ!そんなキラキラした目で僕を見ないで!!


「………い、」


「い?」






「いってらっしゃい、お姉ちゃん♪」





「「「「いってきまーーーーーす!!!」」」」


四人はそのままダッシュで外に出て行った。そのときみんなどんな顔してたと思う?


涎垂らしてにやけてたんだよ…


「って、馬車に乗っていきなさい!!ってもう見えないだと!?」


みんなは馬車をガン無視して、そのまま走って王城に向かっていった。


兵の人たち、慌てて馬車で追いかけてるよ。


孝はどんな顔して今の光景を見ていたのだろうか。


あとどうして志穂まであんな速さで走れるのだろうか。僕の知らない間に妹が遠い存在になってきたよ…





――――――――――――――――――――――――――



~フィキペディア~



『上目遣い』


主に女性が男性に対して行う愛情表現などの一つ。頼みごとなどでよく用いられ、数々の男子を魅了してきた秘儀。使いこなすのは非常に難しく、下手にやると逆に冷たい空気があたりを包み込む。

男性がやると気持ち悪さしかないが、一部の人がやると女性より効果を発揮する場合がある。

海斗の上目遣いは世界をまたいでも絶大な威力を誇る。



志穂は普通の女の子ですよ。例え人間離れした人たちと互角の能力を発揮しててもその事実は揺るがない…はず…


王城でいったいどんなものがプレゼントされるのか、楽しみですね。



感想・評価していただき、ありがとうございます。今後もよろしくお願いします!

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