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43、探検しました ラストッ!

「よし、これでこの通路の部屋も見終わったな。」


「そ、そうだね…」


「随分と疲れているのぅ。ま、無理もないのじゃ。」


姉さんと別れた後、僕らは部屋の確認を続けた。


自室として使用が可能なのは全部で5部屋あった。そして談話室にあったもうひとつの扉の先も同じ構造だったので、合計で10部屋。それぞれかなりの広さと快適さを備えていた。


これだけならまだいいんだ。


問題は各部屋の確認時の出来事のほうだ。


まず姉さんのいた左翼での出来事を簡単に振り返るよ。



◆◆◆◆◆



~左翼 二号室前~


「この部屋は…さっきと少し違うね。」


姉さんのいた部屋は白と黒を基調としていたけど、こっちは黄緑っぽさがある。


部屋には見慣れた妹の机や古い人形が置いてある。どうやらここは志穂の部屋になったみたいだ。


部屋を見渡すと実家にあったものがいくつか置いてある。あ、前に僕があげた『フニャット』もある。大切にしてくれているみたいで良かった。


そのまま視線を動かして、ベッドで止まった。







「ん、おにい、ちゃん、あ、そこは…らめぇ…あん」







「おい何してんだよ海斗、俺らも早く中に入れろよ。」


僕はつま先を軸に体を回転させ、その勢いで扉を思いっきり閉め廊下に出た。


「おい、急にどうしたんだよ!?まるで見てはいけないものを見てしまったような顔をしてるぞ!?」


「あはは、やだなぁ~ソンナワケナイジャナイカー」


「すごい冷や汗なのじゃ!大丈夫なのか?」


「大丈夫、大丈夫。僕は何も見てないし聞いてないよ。」


「本当にどうしたというのじゃ!?」


「さ、さあ早く次の部屋にいこうか~」


一刻も早くここから離れないと…



◆◆◆◆◆◆



「大丈夫…僕の妹に限ってそんなことは…」


「おい海斗、急にどうした!?」


「な、なんでもないよ。それより早くその後の説明をしないと…」


「主よ、いったい誰と話しておるのじゃ…わしは霊の類は苦手なのじゃ…」


つ、次はもう片方の扉の先、右翼での出来事だよ…



◆◆◆◆◆◆



~右翼 八号室前~


「なんか、二階の探索だけで妙に疲れた気がするんだけど…」


「ああ、たぶん気のせいではねえな。」


ここまでに遭遇したのは、姉さん・志穂・美琴・美琴・美琴…


姉さんたちのいた部屋以外の全ての部屋になぜか美琴がいたのだ。その手にはあの媚薬入りの小瓶が握られていたのですべて没収、インデックスに放り込んだ。回収数は今のところ5本。いったいどこで入手したのやら。


「この部屋からは…美琴の気配はしないね。」


「主はどうしてそんなことがわかるのじゃ。」


「う~ん…修行の成果かな?」


「お前はいったいどんな修行をしたんだよ…」


孝があからさまに肩をすくめた。くそ~バカにしてるな!?


「ま、美琴がいないなら安心かな?」


そう思っていた時期が僕にもありました。


完全に気を抜いてドアを開け、


「へ?」


瞬間誰かに身体を引っ張られる感覚がして、僕の視界は暗闇に閉ざされた。


「何?なんなのこれ!?」


どうやら部屋の中に引きずり込まれたみたいだけど、身体が動かない。


顔に生暖かい風が当たる。誰かの吐息の音が耳元で響く。


そして胸に柔らかい感触が…


「ちょ、誰!?孝…は絶対ありえないし、ムラマサ…はここまで身長高くないし…」


じゃあ一体誰なんだ?見えない恐怖で無意識に戦慄する。







「あはっ、海斗ったらこんなに震えちゃって~♪誘ってるの?」





え、今の声…そうか、この屋敷でまだ会ってない人物、それが答えだったんだ。


「もう、脅かさないでよ。てっきり不審者だと思ったじゃないか優奈。」


「あ、ひどい!幼稚園の頃からの幼馴染に言うセリフじゃないよそれ~」


「あはは、ごめんごめん。それにしても、優奈だったら気配とか抱きつかれたときの感覚でわかったと思うんだけどなぁ?」


「あれ?言ってなかったっけ?あたし、気配消せるんだけど。」


ナニソレコワイ。


「そうだったんだあははは…ところでさ―――」


「ん?何かな海斗?」





「いつまで抱きついてるの?」


この真っ暗な部屋に引きずり込まれてからここまで、ずっと抱きつかれたまんまですよ。もう身体と身体の間が熱でめちゃくちゃ暑くなってるんですよはい。


ちなみに僕は腕ごと抱きしめられているので全く抵抗できません。


「何言ってるのよ、ずっとに決まってるじゃない。」


「へ?」


「だって海斗ずっと他の女の子とベタベタして、あたしのこと全然構ってくれないじゃん。あたしだって海斗に甘えたかったのにさ。だけどみんなも寂しかっただろうから、あたしずっと我慢してたんだよ。本当は海斗に甘えたかったしベタベタしたかったし膝枕して欲しかったしギュッてして欲しかったのも全部我慢してたんだよ?でももう限界だよ。そろそろ甘えさせてよ…」


暗くてよく見えないけど、優奈が震えているのが身体を伝ってわかる。


「…優奈、少し離れてくれない?」


「海斗?」


優奈の寂しそうな声を無視して、僕は優奈の腕をはがす。


そして解放された腕で優奈をやさしく抱きしめた。


「ごめん、急にいなくなったりして、つらい思いをさせて…」


「…あ」


「もうどこにもいなくなったりしないから、ずっと優奈の傍にいるから。」


「あ、ああぁ…」


「心配してくれて、ありがとう優奈。」


「海斗…あたし…ぐすっ…あだじ…ずっど…ざびしがったんだからー!!」


目から大粒の涙を流しているであろう優奈をさっきより少し強めに抱きしめる。


自分の服がどんどん涙で濡れていく感覚がするけど気にしない。


「ごめん、そしてありがとう。」


今はこの娘の気持ちを受け止めることだけを考えよう。


「うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁ!!!」




◆◆◆◆◆◆




「あのあとしばらく泣かれたな…」


「あのとき俺らはどうしたらいいのかわからなかったんだぞ?」


「主たちが抱き合っているのをわしらはずっと見ていることしかできなかったのじゃぞ?」


「いやそういうときはそっとドアを閉めてよ!」


うぅ、思い出したらなんだか恥ずかしくなってきた。穴があったら漫画とかゲームとか持ち込んで入りたい。


「それはただの引きこもりだ…」


「だから心を読まないで!」


「いや、口で言っておったが…」


そんなことないもん!きっとみんなが僕の心を読んでいるに違いない!


「…海斗、孝。」


「「「うおっ!?」」」


急に後ろから声を掛けられて変な声を出してしまう僕ら探検隊。


振り返ると美琴が涼しい顔をして立っていた。ちなみにここまでに美琴から回収したものは媚薬7本、隠しカメラ2台、盗聴器4個、謎の動く触手1本。没収されるたびに「ああ…」と残念そうな声を出していた。


没収したものはあとで焼却しておこう。


「どうしたの美琴?何か用事?媚薬なら返さないからね?」


「…媚薬も他のものも返してほしい、けど、それとはまた別…」


「どういうことだ?」





「…屋敷の前に兵士と馬車が来てる…目的は不明」


「へ?」


どういうこと?僕らなにかしたっけ?





――――――――――――――――――――――――――――――――――



~フィキペディア~


『フニャット』


ふわふわした毛並みに水色の体毛、そしてなにより特徴的なのは「ふにゃ」っという擬音がぴったりの表情。最近話題沸騰中の猫型マスコットで、年少から中高生、大人と広い世代に人気のキャラクター。考え出したのはとある女子中学生で、これをきっかけに全世界に名を轟かしている。アニメや漫画にもなっており、現在アニメ第8期を絶賛放送中。

海斗が志穂にあげたのは志穂が小学校に入学したてのとき。お小遣いを崩して手に入れた大きな人形である。



『引きこもり』


社会から隔離し、自分の世界(自室)で生活すること、または生活する人のこと。現在社会問題となっている現象の一つ。主に中高生などの年代が発症することが多い。引きこもりも様々なものがあり、鬱病のようになってしまう人もいれば、ごく普通の精神状態の人も多くいる。引きこもりはニートという概念があるが、パソコンを通じて仕事をしている人もいるので偏見である場合も少なくない。




















残りを書き込んだら思いの他長くなってしまいました。


優奈が若干ヤンデレっぽい発言をしていましたが、彼女はヤンデレではありません。ただの甘えん坊さんです。ここまであまり海斗にベッタリでなかったので、この場面で甘えさせました。


泣き叫ぶ描写って意外と難しいですね…


次回は何が起きるのでしょうか…

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