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42、探検しました そのゴッ!

「ふぅ。」


『やっと落ち着いたようじゃの。』


「ああ、悪い。あまりにも嬉しすぎてついな。」


「うん。僕らの夢だったもんね、マッサージチェア。」


日頃の疲れもこれで少しは和らげられる、かな?


『それじゃあ落ち着いたところで、残りの部屋も回るとしよう。』


「そうだね。プライベートルームがどんなものか楽しみだよ。」


「まあそうだな。」


あれ?孝の反応が薄い。どうしちゃったんだろう。


いつもの調子、いやそれよりも低いくらいだ。


「どうしたの孝?ずいぶんテンションが低いじゃないか。」


「あ?ああ、ちょっと嫌な予感がしてな。」


「嫌な予感…」


それを聞いて僕までテンションが下がった。


普通だったら「そうなの?」くらいの軽い返しでいいのだが、孝相手だとそうはいかない。


孝がいままで「嫌な予感」と言ったときは、必ずロクなことがおきない。


一番ひどかったのは、ゲーセンの帰り道に美琴に麻酔銃で狙撃されたとき。眠らされてそのままお持ち帰りされた暑い夏の夕方。


あのときも孝は「嫌な予感がするから先に帰る。」と言って、その場にいなかった。


つまり僕を見捨てたのである。


「せいっ!」


「あぶなっ!?」


チッ、避けたか。次は確実に仕留めてみせる。


「いきなりなにしやがる海斗!?危ねえじゃねえか!」


「うるさい!どうせ逃げるつもりなら僕の身代わりに使ってやる!!」


「一体なんの身代わりにするつもりなんだ!?バックドロップを決めようとするな!!」


くっ、さすが孝。壁を蹴って回避するとは、動きが人間離れしてる。


『まったく、お主らは何をしておるのじゃ…』




◆◆◆◆◆




「はぁ…今日は…はぁ…このくらいで…はぁ…許して…はぁ…あげるよ…」


「右膝を執拗に狙ってきた奴の言葉じゃねえだろそれ…あいつつつ…」


『バキッという音がしたときはもう駄目じゃと思ったのじゃ…』


まあこれで孝は逃げたくても逃げれないはず。


「これで身代わりを確保したぞ!!」


「勝手に俺を巻き込むんじゃねーよ!たくっ…」


「文句言ってないで早く部屋の中を確認しようじゃないか♪」


さて、この部屋の先にはどんな光景が広がっているのかな~?


「あ、その部屋は…」


孝が後ろで何か言ってるが気にせず扉をオープン。








「海斗キター!さあさあさあさあ早く私と子作りしましょ♪2時間、いや3時間で済ますから!」


オープンと同時に姉さんがものすごい勢いで飛びついてきた。


というか何この状況!なんで姉さんが発情してるのさ!?


「落ち着いて姉さん!姉弟で子供は作れないから!だから離れて背骨が折れるように痛いいいいいいいぃ!?」


背中に腕を回した姉さんに強く抱きしめられ、意識が飛びそうになる。


ってそれどころじゃない!


「本当にどうしたのさ姉さん!?変なものでも食べたの!?」


「うるさい!海斗は私の言うとおりにすればいいの!それがベスト!!」


「僕がベストじゃないよ!」


だめだ、話が通じるような状態じゃない。ここは―――


「ごめん、姉さん!」


「ふみゃ!?」


姉さんの後頭部に手刀を入れる。その直後、姉さんが僕にもたれ掛かった。


「ふぅ、なんとか気絶させられた。これで一安心、かな?」


とりあえず身近な危険は排除できたみたいだ。危ない危ない。


「相変わらず『不沈戦艦ふちんせんかん』の異名は伊達じゃないな。」


ナニソノナマエ。ボクハツミミナンダケド。


「勝手に変な名前をつけないでよ。ところでフチン?ってなに?」


「…どこから説明したらいいのやら。というかお前、よくそんなんで学年上位になれるよな。」


「失礼な!僕はバカなんかじゃないぞ!」


そりゃあ学年次席の孝と比べればバカかもしれないけどさ。


「そんなことよりはやく部屋の中に入ろうぜ。どうせ部屋の中にベッドでもあるだろうし、そこに果穂さん寝かしとけ。」


「わかったよ。それじゃあ改めて部屋の確認を、ってこの部屋も豪華だね~。」


部屋の中を改めてみると、部屋が妙に広いことがわかる。さっきの談話室ほどではないにしろ、一般の自室と呼ばれている部屋の二倍以上は少なくともある。


この部屋はどうやら姉さんの部屋にしたらしく、所々に姉さんの私物が設置されている。


部屋の中央には大きな窓があり、針葉樹の森が一望できる。


部屋の隅には謎の立方体が宙に浮いている。あとでフィーに聞いてみよう。


「ベッドは~あぁあれか。」


入り口の死角にベッドが配置されている。大きさはシングルベッドのようだ。


僕は姉さんを抱き上げベッドまで運び、そのままゆっくりと寝かせる。


「これでよし。それにしてもいい部屋だね。」


「ああ、ここならのびのびと生活ができそうだな。」


『ん?なんじゃあれは?』


ムラマサが刀から幼女に戻り、机に走り寄る。


「急に戻ったりしてどうしたのムラマサ」


「いや、この小瓶が気になってのぅ。」


そう言ったムラマサの手に握られていたのは、見るからに怪しいピンク色の液体の入った小瓶だった。


「いったいこれはなんなのじゃ?ん?これが名前かの?」


「なんて書いてあるんだ?」


「う~む、読めんのじゃ。主、代わりに読んではくれぬか?」


ムラマサが小瓶を僕に渡す。渡す際、ヌチャッという粘液質な音がした。


「えっとなになに「Love potion」?」


Love potion=媚薬びやく


僕はそのまま窓に近づき、そのまま


「空に向かってスパーキング!!」


天高く投げ捨てた。


「ああ、なにをするのじゃ主!いったいどうしたというのじゃ!?」


「ムラマサ、世の中には知らないほうがいいこともあるのさ。」


「むぅ~よくわからぬのじゃ!」


プクゥーと頬を膨らませるムラマサを見て和む。なんだこの可愛い生き物は。


「果穂さんが暴走したのはアレが原因か。」


「気絶させたからたぶん大丈夫だけど、早く次の部屋に行くことにしようか。」


僕と孝は盛大にため息をつき、ムラマサは「『らぶぽーしょん』とはなんなのじゃ?」と疑問符を浮かべていた。






―――――――――――――――――――――――――――――



~フィキペディア~



『お持ち帰り』


一般的には男性が女性を自宅に連れ込むことを指す。が、最近では逆に女性が男性を自宅に連れ込むときにも使用される。両者の同意の上なら問題ないが、無理やりだと犯罪になるので注意が必要。

海斗はよくいろんな人にお持ち帰りされるが、その度に危機を回避しているので成功者は一人もいない。



『不沈戦艦』


海斗の異名のひとつ。その名のとおり、いままで海斗を恋愛感情で撃墜したものが一人もいないことからそう呼ばれている。果敢に挑む者が毎日最低10人はいるが海斗はまったく微動だにしないという。なぜそこまで拒むのかは本人しか知らない。



『学年上位』


成績20位以上の者のことを表す。海斗は常に10位以内には入っている、にも関わらず回りから『バカ』といわれることがよくある。なぜ知識があるはずなのに、わからない単語が多々あるのかは謎。

本人曰く、「問題をそのまま暗記してるから意味はよくわかってないんだよね。」とのこと。



『媚薬』


詳しいことは不明。人間を性的に興奮させる効果がある。液体のものや気体のものなど種類はさまざま。



『空に向かってスパーキング』


物を空中に投げる際に発する気合の声。某アンパン中毒者が発案した。







あまり話が進みませんでした。申し訳ありません。たぶん次回で探検は終了すると思います。その後の大まかな展開は完成しているので楽しみにしていただけると幸いです。


またまた果穂が暴走した気がしますが、きっと気のせいだと信じましょう。



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