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39、探検しました そのニッ!

「―――ですから、このお屋敷にある魔道具は大変素晴らしいんです!!」


「そ、そうなんだ…」


「妙に魔道具に詳しくなった気がするぞ…」


あれからかれこれ小一時間、フィーの魔道具講座は続いた。正直、途中から意識が飛びかけたよ。


「しっかし、なんでこの家だけ水道がついてるんだ?トイレも水洗式だしよ。」


そう、この家にはなぜか水道設備が備え付けられているのだ。この世界ではまだそういったものが普及していないのに…


「やっぱりアルが無茶をしたのかな…」


「どうだろうな…。ま、便利なことなんだし、いいんじゃないか?」


…今度アルにちゃんとお礼をしないと。


「さて、それじゃあ探検を再開しようか海斗。」


「うん。フィーはどうするの?」


「私は『散歩道』まで行って買い物をしてきます。今日のお夕飯の食材も買わないといけませんからね♪」


見るとフィーは手に買い物に使うであろう茶色いカゴをげていた。メイド服と合わさって妙に様になっている。


「そっか、それじゃあお金を渡しておくね。余ったらお小遣いにしていいから。」


インデックスからお金の入った袋を取り出し、そこから金貨を3枚ほど出してフィーに渡す。


ちなみにこのお金は、前にクラスターレックスを倒したときの報奨金だったりする。


「わわっ、こんな大金受け取れませんよ!」


「大丈夫だよ。それにそれは専属メイドとしてのお給料と、前にクエストに付き合ってもらったお礼も兼ねてるからさ、ね。」


「わかりました…。ただし、無駄遣いはしませんからね!」


そのままフィーは玄関へと駆けていった。一瞬見えた顔は、嬉しそうな困っているような顔をしていた。


「そんじゃ、いきますか。」


「そうだね。それじゃあ次は…ん?あの扉、なんだろう。」


ふと、リビングの隅にある扉を見つけた。入ったときには全然気がつかなかったのに…


『妙に可愛らしい扉じゃのう。』


ムラマサの言うとおり、白い扉には子犬や猫のかわいいイラストが描かれていた。こんな目立つ扉なのに、なんで気がつかなかったんだろう…


「お、開いた。ってなんだこの部屋は!?」


僕が考えている間に、いつの間にか孝が扉を開けて中に入っていった。


孝ってこんなに行動的だったけ?


「というかどうしたのそんな驚いて―――わあぉ…」


部屋の中を覗き込むと、そこには色とりどりのクッションが敷き詰められていた。


『これはすごいの…』


「なんなんだこの部屋は…」


よく見ると、木馬や積み木などのおもちゃもある。本棚には、絵本らしきものがたくさん置かれている。


「ああ、そういうことか。」


『なにがそういうことなのじゃ、主?』


「わかったのか?」


「うん、この部屋は―――」






「―――子供部屋、だね。それも乳幼児から6歳児くらいを対象にした。」


「はぁ!?」


『なぜそのようなものが…』


「わからない…。けど、アルのことだから何か理由があるんだと思うけど。」


まさかここを幼稚園にするわけじゃないだろうし…。あ、でも広い庭もあるしキッチンも広いから案外いけるかも?


「まぁしばらくは使わないだろうな、っと、扉発見♪」


「そうだね。あ、でもクッションがあるからお昼寝部屋とかに使えるかも。」


この部屋も有効活用していかないとね。


そんなことを考えつつ、部屋に付いていたもうひとつの扉を開ける。


「廊下か。ずいぶと広くて長いな。」


「目の前のガラス扉の先は、どうやら裏庭みたいだね。とりあえず、廊下の突き当たりまでいこっか。」


『そうじゃな。』




―――――――――――――――――――――――


「…この部屋は…ここにしよう。」


「…あとは…あそこだけ…」


「…想像するだけで…鼻血が…」


「…最高画質のものを設置しよう。」



―――――――――――――――――――――――




廊下の突き当たりまで辿り着いた。この廊下で見つけた扉は子供部屋を含め計5つ。そのうち二つは裏庭に続くガラス扉で、もうひとつはキッチンの裏に繋がっていた。


そして僕らは現在、廊下の中央にある大きな扉の前にいる。


「どうやらこの屋敷は凸型のようだな。」


「そうみたいだね。そしてこの扉の先が凸の先端部分に位置する部屋みたいだね。」


扉はスライド式で、左右にひとつずつ付いている。どうやら二部屋が隣り合っているようだ。


「それじゃあまずは左側から見てみようか。」


「おう。それじゃあ開けるぞ。」


『いったいどんな部屋なのかのぅ。』


孝がガラッと扉を開ける。





視界に脱衣所と思われる部屋が広がった。


「なるほど、ここは風呂場だったのか。見た感じ、俺らの世界の銭湯みたいだな。」


「ということは隣は女湯かな?よかった~、混浴だったらどうしようかって思ってたんだ。」


『…わしは混浴のほうがよかったのぅ…』


ムラマサが妙にがっかりしているけど、ここで慰めてはいけない。そんなことしたら即混浴決定だ。


ちなみにトイレはこの脱衣所の隅に個室で設置されていたりする。


「どれどれ、中はどうなってんだ~♪」


「あ、ずるいぞ!僕だってみたいんだからね!」


孝が浴場に入るのが見えたので僕も急いでそっちに向かった。


「ちょ、押すなよ。」


「だってー。…おおぅ」


「おい、なに感動して―――すげぇ…」


目の前に広がる光景に、体の動きが止まった。





円状の浴槽の中央には水瓶を持った女神像があり、その水瓶からコンコンとお湯が沸いている。左右には体を洗う場所が設けられている。


そして目の前のガラス越しに、夏ならではの森の景色が広がっていた。


「すごいな…」


「うん、綺麗だね…」


というかこの浴場、ものすごく広いな。僕の通っていた銭湯なんて目じゃないよ。


「なぁ、足だけでも入っていかないか?」


「そうだね、せっかくだしそうしようか。」


『わしは混浴がよかったのじゃ…』


孝と並んで浴槽に近づく。ちなみに靴は脱衣所に下駄箱があったから入れてきたよ。


というかムラマサはいつまでそれを引きずっているのだろうか。


浴槽に二人で腰掛け、お湯に足をつけようとして、不意に女湯があるであろう壁に視線を送る。







「…あ。」





壁からコソコソと美琴が入ってくるのが見えた。


「へ?」


「な、どういうことだ!?」


なんで壁から美琴が?


「…こっちは気にしないで。」


いや、無理だからね。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


~フィキペディア~


『子供部屋』


その名のとおり子供のために作られた部屋。防音・防振はもちろん、耐火・耐水なので安心。さらに入り口の扉は特殊なつくりで、ある一定の位置からしか認識することができない。これで強盗が入っても子供たちは安心。他にもいろんな機能がついているとかいないとか…

造られた理由は不明。



『空気調節結晶』


部屋にいる人間を感知し、その人間に合った温度・湿度・気圧にする魔道具の一種。手動で設定すれば人間以外に対しても有効。高性能なわりに安いと評判で、広い人気層を持つ。お求めは『マリーの休憩所』で。



『浄化クリスタル』


クリスタルを中心に、広範囲の浄化を行う魔道具。その浄化範囲はクリスタルの大きさにより変化する。範囲内のホコリや汚れを吸収する優れもの。魔力の高いものは毒や呪いも浄化してくれる。しかし、浄化してほしくないものまで浄化してしまうことがあるので現在改良中。

値は張るものの、主婦などに人気の商品でもある。海斗の家に設置されているものは浄化クリスタルの中でも最大級で、範囲は屋敷の庭までなら余裕である。

碧色が灰色っぽくなったら替え時。ちなみに海斗のものは300年ほどは余裕で持つ。



『清水の女神』


読み方は「しみず」ではなく「きよみず」。水を清水せいすいに変えてくれることからそう名づけられた。

古代遺跡から見つかったものなので、どのような原理なのか不明。現在、魔法ギルドが総力を持って解明中。一説では神の造りだしたものではという話だが、謎である。

たまに目が動くとか…



『魔道具』


魔法に長けたものが生成することのできる道具のこと。なんでも造れるわけではなく、古代の産物である『ソル・ファクト』から性能をコピーして作られている。しかし完全に再現できるわけではなく、ごく一部の性能を再現しているにすぎない。

錬金術なら完全な再現が可能だとか。



『買い物に使うであろう茶色いカゴ』


ありとあらゆるものが収納可能な不思議なカゴ。リンゴの好きな少女や、祖母のために狼と死闘を繰り広げたレッドフードの少女も愛用していた。カゴには夕飯の食材やお弁当、時には武器が収納されている。

ありとあらゆる少女の味方だが、びっくりするほど似合わない人も多く存在するので使いこなすのは至難の技である。






今回より解説を入れました。いろいろとわけのわからないものが登場してくるので「フィキペディア」に解説を任せることにしました。解説はできるだけ詳しく書きますが、わからないことがあれば感想で言っていただければ個々に解説を送らせていただきます。


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