37、夢のマイホームができました
通常より短めです。
『マリーの休憩所』から徒歩30分ほど歩いた場所に『それ』はあった。
市場や住民の住む地区から少し離れた郊外、しかしはっきりとその存在をまわりに示さんとする佇まい。
「うわぁ…」
「すごいわね…」
手入れの行き届いた広い庭の真ん中に、清らかな小川が流れている。
緑豊かで、鳥のさえずりがなんとも耳に心地よい。
「私もこんな場所初めて見ましたよ。この国にこんな場所があったなんて…」
「…程よく日光が当たって気持ちいい。」
そして目の前には白を基調とした蒼い屋根の大きな建物。
「おいおいまじかよ…」
『なかなかのものじゃのう』
「………」
「ん?どうした海斗、うれしくないのか?」
「…ついに…手に入れたんだ…」
『どうしたのじゃ主。モゴモゴ言ってて何を申しておるのかわからんぞ。』
そう、ここは新しい活動拠点にして―――――
「夢のマイホームだああぁぁー!!!!」
「うおっ!?」
「びっくりしたー。」
「どうしたのお兄ちゃん!?」
「だってマイホームだよ!?全人類の夢、My Homeだよ!?しかも僕の!」
長年の夢がついに叶ったんだよ!?喜ばないでどうするのさ!!
「落ち着け!」
「あ痛っ!?」
はしゃいで叫んでいたら、孝に思いっきり頭を叩かれた。なぜかチョキで…。痛くないのかな?
「うれしいのはわかるがいったん落ち着け、な?」
「うん、ごめんみんな。ちょっとはしゃぎすぎだったね。」
僕としたことが、みっともない事をしてしまったようだ。さすがにみんな呆れてるよね…
みんなの蔑みの視線を見るのは嫌だけど、一応みんなの方を向く。
「海斗のレアな写真、撮れちゃった。(いいのよ海斗、あなただってたまにははしゃいだっていいのよ。)」
「はしゃぐカイト様、可愛かったな~♪(そうですよ、そんなの気にしなくていいんですから。)」
『うむ、なかなか良きものじゃったぞ。(主はもっと子供っぽくしてもよいのじゃぞ。)』
「キュンとしちゃった…(そうだよ、お兄ちゃんはいつも気を張りすぎなんだよ。もっと気楽にいこ♪)」
「…素晴らしかった。(…最高だった。)」
「あのウキウキした表情…おっと、ヨダレが出ちゃった。」
「いいこと言っているはずなのに、本音と逆になって台無しじゃねえか。」
「いや、一部の人は本音しか言ってないよ…」
まぁ嫌われるよりはましだけどさ…この反応もなぁ…
「ま、そんなことより。はやく中に入ろうぜ。」
「そうだね。みんなの部屋割りとかも決めないといけないしね。」
荷物は現地で調達するつもりだったからそのあたりは楽なんだけど…
「あたしが海斗と一緒の部屋よ!」
「いいえ!たとえ優奈様でも、専属メイドとしてそれだけは譲れません!」
「じゃあ間をとって妹である私が!」
「それで言ったら姉である私も同室になる権利はあるはずよ。というか私で決定ね。」
「…必ず、勝ち取ってみせる。」
…今日は忙しくなりそうだよ。
「はぁ…」
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「おお、中もすごいな。」
「うん、まるでお屋敷みたいだよ…」
玄関から中に入ると、まず目の前に二階へと続く広い階段が僕らを迎えた。
階段を中心に、左右に二つずつドアがある。上を向くと、二階まで吹き抜けの天井にシャンデリアがついていた。そして床は真紅の絨毯が敷かれている。
「アルの奴、普通の家とか言って、ものすごく豪華じゃないかまったく。」
「海斗、文句を言うならその幸せそうな顔をなんとかしろよ…」
おっと、嬉しすぎてつい顔が緩んじゃった。
「わたし二階の部屋見てくるね、志穂、行こっか♪」
「あ、まってよお姉ちゃん~」
「それでは私も家具などの確認をしてきますね♪」
「…各部屋とお風呂場にアレを仕掛けてこないと。」
「あたしはお庭のほうを見てこようかな。」
みんながみんなそれぞれ気になったところを見に行ったようだ。
というか美琴は何を仕掛けるつもりなんだ?だいたい予想はついてるけどね…
「それじゃあ僕らも間取りの確認と部屋割りを決めようか。」
「そうだな、夕方までには必要なものとかも買い揃えておきたいしな。」
それじゃあ新居を探検だ!みんな、いっくぞー!!
『おー、なのじゃ!』
いよいよ海斗のマイホームが開放されました。いったいどんな構造になっているのかは、次回にまわそうと思います。
志穂は一応、まともキャラとしています。常識ではないことでも、彼女の前では『普通』なのでまともキャラなのです。ブラコンかどうかは読者の皆様のご想像におまかせします。ちなみに本人は「ブラコンではないです。ただお兄ちゃんを見ているとキュンキュンするだけです!」と言っています。
次回はお屋敷の中を探検します!




