35、絆が深まりました
今回は字数とストーリーの関係で若干短めです。
「ユルサナイ…ゼッタイニユルサナインダカラ…」
「孝、なんで姉さんがこんなことになってるのさ!?」
剣を構える姉さんの足取りはフラフラとしていて、目は虚ろ…。とても正気とは思えない。
そもそも許さないって何を?もしかして僕、またなにかやらかしたのかな…
「あー、たぶん、あれだな。」
「あれってなにさ?」
孝が微妙な顔をしている。
「嫉妬、だな。」
「はい?」
へ?嫉妬ってなにに対して?
僕別に女の子と話していたわけじゃないよ。ただ王様と話していただけで…
まさか…
「姉さん、もしかして王様に嫉妬してるの?」
「まぁたぶんそういうことだな。」
パパパパパッパッパー♪
姉さんがLvup。姉さんの嫉妬基準に「男との会話」が追加されました。
「いやいやいやいや、なんでこんなところでパワーアップしてるのさ!」
というか男と会話しても嫉妬するって、僕が話しても大丈夫なのがあと『オスの虫・オスの動物』しか残っていないよ…。日常生活に支障が出るどころじゃないよ。
ちなみにメスの虫とメスの動物は、とっくの昔に嫉妬対象に認定されています…
そんなことをしている間に、姉さんの剣の構えが変わった。
正確に言うと、まるで遠くに槍を投げるような体制に…
「姉さん駄目だ!それ以上やっちゃったら危険だよ!」
嫌な予感がした僕は、姉さんの背後に近づき羽交い絞めにした。
矛先はもちろん、王様を向いている。
「離して海斗!そいつ殺せない!!」
「そんなこと言ってもダメだからね!」
そんなセリフは漫画の中だけで十分だから!
「うわああああああああああ離してーーーー!!!」
姉さんはそれでも抵抗を続けた。
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「はぁ…はぁ…やっと、収まった…」
「」
「完全に気絶しているな。」
「…体に残っていた全体力を消費したんだと思う。」
「お姉ちゃん…」
「相変わらずすごいわね果穂さんは…」
あれから姉さんは30分ほど暴れ続けた。そして王様を恨みがましく睨みつけた後、そのまま気絶してしまった。
途中から孝にも手伝ってもらうほど、姉さんの抵抗は激しかった。まるで野獣でもおさえているような気分になったよ…
「もう王様と姉さんを合わせるのは危険かもしれない…」
「いや、城に近づかせるのも危険かもしれないぞ。」
どうやら姉さんの射程距離は半径2km以上のようです。もう人間やめたほうがいいと思うよ…
まあ今後どうするかはあとにして。
「ごめん王様、不快な思いをさせてしまって…」
一番の被害者である王様には、姉さんの家族である僕が謝らなくては。
…むこうの世界で散々やってるからもう慣れたけどね。
「いや、謝る必要はないぞ。むしろ感謝したいくらいじゃ。」
「へ?」
感謝したい?どういうこと?
「ここ数十年もの間、わしは変わり映えのない毎日を過ごしてきた。平和でよきことなのじゃが、わしにとっては苦痛でもあったのじゃ。そんな毎日をカイト、お主が変えてくれた。多少危険でも、わしはこういう生活のほうが楽しいのじゃ。」
「王様…」
「なにより、お主と友になれたことがわしは嬉しい。」
「ありがとう、王様。僕も王様と会えて嬉しいよ。」
似たようなことを前の世界で何度も言われた。その言葉には下心が半分以上含まれているのがわかっていたから、なにも感じなかった。
だけど、王様は純粋な気持ちでそう言ってくれた。それが僕にとっては嬉しかった。
「今後ともよろしくな、カイトよ。」
「まかせといてよ、王様。」
閑話休題
「もう行くのかカイトよ。」
「うん、そろそろ新しく建った僕のマイホームを見に行きたいんだ。」
僕は気絶している姉さんをお姫様抱っこし、立ち上がる。
なんでお姫様抱っこなのかって?い、いちばん持ちやすいからってだけで、他意はないんだからね!
「寝床や食べ物を用意してくれた王様には本当に感謝しているよ。ありがとう。」
「よいよい。そんなのは当たり前のことじゃ。…もう城にはこないのかの?」
「いや、少なくとも一週間に一回は顔を出させてもらうよ。」
「そうか、楽しみにしておるよ。」
王様がニカッっと笑った。まったく、フレンドリーな王様もいたもんだよ。
それなら僕もと笑顔を送る。数人の人が倒れたけど貧血なだけだよね。
「それじゃあ王様、いってくるよ。」
「うむ、気をつけて行くのじゃぞ。」
僕らは王様たちに一礼して、そのまま謁見の間をあとにした。
ちなみに倒れた人の中に美琴と志穂も含まれていたので、孝と優奈にも手伝ってもらった。
…どうして志穂まで倒れているのだろうか。
今回も安定の果穂さん暴走です…初期設定だともう少し大人っぽかったのですが、いつのまにかトラブルメーカーと化していました。
それでは今日はこのあたりで失礼します。今後も『逃げ込んだ先は異世界でした』をよろしくお願いします。
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