34、紹介しました
いつもより結構長めに書きました。
「なるほどなー。しっかしその神様、アルティナだっけか。俺たちの世界でそれやったらただの犯罪だよな。」
「まったくだよ。アルにはもう少ししっかりしてほしいよ。」
それにしても、孝たちってなんで僕の話を全部鵜呑みにするのかな。普通少しくらい疑うでしょ。
「…みなさんって本当にすごいんですね。わたしには何のお話だったのか全く理解できませんでしたよ…」
孝のとなりで僕らの会話をずっと聞いていたイリアは、終始疑問符を浮かべていた。
「大丈夫だよイリアさん、それが普通の反応だから。」
「おいおい海斗、それじゃあ俺たちが変みたいじゃないか。」
うん、まさにそのとおりなんだけどね。異世界にきてたったの数時間で順応してるなんて、十分変わってると思うよ…
「ねえ海斗、お話は終わった?」
「姉さん、その格好でよく普通に会話に入れるよね。」
姉さんの格好は、下着姿で頭に僕のTシャツを被っている、という変態丸出しな状態である。
見ていてこっちが恥ずかしい…
「私はこの格好をスタンダードにしたいんだけど。」
「やめて!お願いだからそれだけはやめて!!」
弟として恥ずか死ぬから!
「もう、そんなに私の裸をみんなに見られるのが嫌なのね。」
「うん、ある意味そうだね。」
新井家の尊厳に傷がつきまくるからね。
「いやー、それにしてもこいつらが戻って本当によかったわ。お前がいなかった二週間、俺がどれだけ苦労したことか…。」
「孝、僕のまわりの人たちってこんなのばっかりだったっけ?」
「あ?何言ってんだ、そんなの当たり前だろ?」
聞きたくなかった、そんな事実…
「…海斗、これからどうするの?」
「だから美琴も自然と会話に混ざらないでよ。」
僕だってみんなが会話に入ること自体は問題ないんだ。
ただもう少し格好とかを気にしてほしいだけなんだ。
ちなみに美琴は顔が赤く、少し痙攣してる。…ホントなにがあったの?
閑話休題
「えっと、みんなにはこれからこの国の王様に会ってもらうよ。今後お世話になるひとだからちゃんと挨拶しておかないとね。」
「そうだな。」
「なんか緊張するわね。」
「いったいどんな人なんだろう。」
「…気になる。」
「う~ん。みんな~なにしてんの~むにゃむにゃ。」
寝ぼけて理解してない優奈はほっとくとして。
「それじゃあ僕は王様に話してくるから、案内はフィーにまかしてもいいかな?」
「了解しましたカイト様。命に代えても皆さんをお守りします!」
「いやそこまでしなくていいから。」
というかそんな台詞、どこで覚えたんだろう。
「フィーちゃん、ナイスよ!」
やっぱり姉さんか…
「主よ、わしはどうしたらよいのじゃ?」
「うーんそうだな~。ムラマサは一応僕の武器だから僕と一緒に行動しよっか。」
「了解なのじゃ。」
う~ん、ものすごく良い笑顔だなムラマサ。
うしろにいる姉さんたちからジトッとした視線を感じるけど気のせいだよね。
あとフィーから歯軋りの音が聞こえてくるけど空耳だよね。
「そ、それじゃあ僕はこれで。みんなはあとから来てね。」
僕とムラマサは、逃げるように部屋から出た。
――――――――――――――――――――――――――――――
「と、いうわけで王様にみんなを紹介したいんだけど、いいかな?」
ここは城3階の謁見の間。あいかわらず広々とした空間だよ。
そして目の前にいる金髪のイケメンがこの国の王様。とても70代には見えない…
「もちろんじゃ。むしろ願ったり叶ったりじゃよ。」
「よかった。それじゃあ早速みんなを呼ぶよ。」
ちなみに呼び方は『念話』でフィーに伝えるだけ。なかなか便利だなぁ。
「その必要はなさそうじゃぞ」
「へ?」
隣にいるムラマサが僕の行動を止めた。
「どういうことムラマサ?」
「後ろを見てみるのじゃ。」
「後ろ?」
言われたとおり後ろの扉のほうを見る。
「ちょ、おさないでよ。海斗にばれちゃうじゃない。」
「…でも、このままだと海斗が見えない。」
「こ、こんなことしていいのかな?お兄ちゃんに怒られちゃうんじゃないかな…」
「くぅー、なんでカイト様のとなりが私じゃなくてムラマサちゃんなのですか!?本来あそこは専属メイドである私がいるはずなのに…」
「あんたはわたしたちを案内するようにって海斗に頼まれたんでしょ。」
「の?呼ぶ手間が省けたじゃろ。」
「えー…」
扉の隙間から5人の顔が見える。まわりの兵士たち、ドン引きしてるよ…
「…なにしてんのみんな?」
「「「「「あ。」」」」」
「あ、じゃないよまったく。少しくらい部屋で待っててよ。」
「あはは…でもここに呼ぶ手間が省けたでしょ?」
「まぁそうだけどさ…」
そういう問題じゃないと思うんだ。
閑話休題
「王様、この人たちがさっきいった僕の友人たちだよ。」
「ほほぅ、その者たちが…」
「はじめまして王様、海斗の姉兼妻の新井果穂と申します。」
「…片桐美琴。」
「はじめまして。井上孝っていいます。海斗の世話をしていただき、ありがとうございました。」
「こんにちは王様。あたしは桜葉優奈、よろしくね。」
「はわわ、えっとえっと、新井志穂です。よろしくお願いします!」
うん、ツッコミどころ満載だね。
「姉さんは僕の妻じゃないでしょ!美琴はもう少し喋ろうよ。優奈は気楽すぎ、だけど王様だからいっか。志穂はもう少し頑張ろうか。」
孝はなんだか家庭訪問のときの母親みたいだったけど、一番まともだったからツッコまないでおこう。
「はっはっは、やはりカイトの友人というだけあるのぅ。なかなかに愉快じゃ。」
「王様はもう少し威厳を持とうよ。」
僕の言葉に大臣たちがウンウンとうなずいていた。みなさん、苦労しているんですね…
「…海斗。」
「ん、どうしたの美琴?」
不意に和服の袖を美琴に引っ張られた。
え、いつから和服だったのかって?ここに着いたときにはすでに着ていたけど?
「…あいつ、本当に王様?」
王様をあいつ呼ばわりって…。美琴さん、マジパネェっす。
「そうだよ。見た目はただの陽気なにいさんだけどね。」
でも僕もいまだに信じられないんだけどね。王様としてはたぶん優秀なんだろうけど…
「はっはっは、陽気なにいさんとは、嬉しいことを言ってくれるのぅカイトは。」
「聞こえてたんだ。というか嬉しいんかい!」
王様としてそれはどうなの?
………
ん?
「ねえ孝、姉さんは?さっきまでここにいたと思うんだけど。」
ついさっきまで僕の左隣にいたはずなのに、いつの間にかいなくなっていた。
「ああ、果穂さんなら『ユルサナイ…』とか言ってあっちに行ったぞ。」
「へ?」
そう言われて、孝の指差したほうを見る。
姉さんがフラフラと広間をうろついている。
「姉さん?なにしてんの?」
姉さんが扉付近にいる兵士の前まで歩いていき、そして
「ていっ!」
『ぐはっ!?』
おもいっきり殴り飛ばした。ええ、見事な右ストレートが決まりましたよ。
そしてその兵士の持っていた剣を鞘から抜き、両手で構えた。
「本当になにしてんの、姉さん!?」
いったい何考えてるのさ姉さん!
「ユルサナイ…ゼッタイニユルサナイ…」
あらやだ怖い…
果穂の行動が段々怪しくなってきましたが、決して流血沙汰にはならないはずです。危険な匂いがしますが、たぶん大丈夫です。
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