33、犯人が判明しました
いつもより少し長めにかきました。
「イリア、イリア・フォルミストです…先ほどは本当に申し訳ありませんでしたっ!」
カーテン少女、もといイリアが勢いよく頭を下げた。
「いや謝らなくていいって。そっかイリアっていうのか。俺は孝だ。昨日は案内してくれてありがとな。」
「い、いえそんなお礼なんて!」
「それでも言わせてくれ。こっちに来て不安だった俺には、イリアの親切さが、その、すごくうれしかったんだ。」
すごい、すごいレアだ。あのいつもクールな孝が照れてる。写真とって売ったらプレミアつくかも…
「あう、わ、わたしも、タカシ様に話しかけていただいて、とてもうれしかったです。」
イリアはイリアで顔が真っ赤だ。でも顔はめっちゃにやけてる。
「なんか、いい雰囲気なんじゃないかな?そう思わない、お兄ちゃん?」
となりから志穂が耳元でそっとつぶやいてきた。
確かに、なんか桃色空間が見える気がする…
あの孝が、ねぇ…
閑話休題
「さて、お礼は言い終わったかな、孝?」
「ああ、待たせてすまなかったな海斗。」
そんな孝の顔は、いままで見たことないほどに幸せそうだ。
よかった。孝もこっちの世界に馴染んでくれそうだ。
「それじゃあさっそく。イリアさん、ちょっと聞いてもいいかな?」
「は、はひ!な、なんでしょうか勇者様?」
ビクッっとイリアが反応する。そんなにビックリするものなのかな?
ってそういえば僕って勇者だったんだっけ。記憶の彼方に吹き飛んでた…
まあいっか。そんなことより状況整理が先決だ。
「昨日のことなんだけど、孝が井戸の前で倒れたっていうのは知ってる?」
「は、はい。タカシ様を井戸に案内したあと、待機室に戻ろうとしたとき後ろからドサリと物音がして、振り返ったらタカシ様が倒れていたんです。」
「そのあとはどうしたの?」
「すぐさまタカシ様のお部屋へお運びさせていただきました。」
お運びさせていただいたって…
「お、おいイリア。お前、まさか一人で俺を運んだのか?」
「は、はい…すすす、すいません、もしかしてどこかお体に不具合がございましたか!?」
「い、いや、そういうわけじゃないんだが…」
孝の顔に「まじか…」と書かれているように見える。フィー同様、この世界のメイドさんは若干、人間離れしているようだ。
それにしても…
「やっぱり人に運ばれてきたのか。僕の予想が的中したね。」
「…俺が無意識に部屋まで歩いてきたって言ったのはどこのどいつだよ。」
アハハヤダナア、ソンナコトボクハイッテナイヨ。
「それで、その、タカシ様をベッドに寝かせた直後、妙なことが起きたんです…」
「妙なこと?」
なんだろう。子供が群がっていることに関係するのかな?
「その、なんとご説明したらよいのか…」
「そのまま起こったことを説明してくれればいいよ。」
「わ、わかりました。えっと――――」
「黒い穴がタカシ様の周りに出現して、そこから子供がでてきたんです。それも大勢…」
「………」
「はわわ、しゅ、しゅみません!ややややっぱり私の勘違いだと思いましゅ!忘れてくだしゃい!」
イリアが慌てて弁解してるけど、めちゃくちゃ噛みかみだ。
「いやイリアさん、それたぶん勘違いじゃないよ。」
黒い穴に、そこから人が出てきた。その事実から導きだせる人物がひとりいる。
「ちょっとみんな待ってて。少し心当たりがあるから。」
僕は意識を研ぎ澄まして、その人物を思い浮かべる。
すぐさま『ぴろりん♪』という合成音が脳内に響き当たり、思い浮かべた人に繋がった。
『はーい♪みんなのアイドル、アルティナよ~。』
陽気に応答してきた犯人に、イラッっとする。
『ちょっとアル、これはどういうこと!?』
『おやおや?その声はもしかしてカイトきゅんかな♪そっちから掛けてくれるなんて嬉しいな♪』
『………』
『やめて!無言はさすがに怖すぎよ!』
なんでこんなにハイテンションなんだろう。こっちはいろいろと面倒なことが起きてるっていうのに…
『で、この状況はいったいどういうことなのさ?』
『へ?ああ、あのちびっ子たちのことかしら?』
やっぱりアルの仕業だったか。いったいどんな目的でやったのやら。
そのあたりもキッチリカッチリ聞き出さないと。
『そうだよ、どうしてこんなことをしたのさ?』
『ああ、えっとー。あはは…』
『…はぐらかしても無駄だからね。』
『…はい。』
本当に神様なのかなこの人。最近、えらい人ほど威厳がなくなっていっている気がするんだけど…
『えっとね、その子供たちはね――――』
アルの声がまじめだ。もしかして結構重大なことなのかな?
『なんか暇だったから、モスカルのひとの子供を無差別に転移させた、みたいな?』
ちょっとでも信じた僕がバカでしたよ。ええ、バカでしたとも。
『あはは、まさかあそこまでタカシ君に懐くとは思わなかったわ。本当にすごいわね。』
『………』
『あはは…』
『………』
『ごめんなさい!ちょっとした出来心だったんです!』
『…はぁ。まったく、創造神ってそんなに暇なの?』
まぁ神様が忙しいってあんまり聞いたことないけどさ。
『そそそ、そんなことないわよ!朝起きて、ご飯たべて、ゲームして、ドラマみて、あとはえっと、と、とにかく毎日――――』
『暇、なんだね。』
『…はい。』
『もう、暇を持て余すのはいいけどさ、他の人に迷惑かけないようにしてよね。それじゃ。』
『え、もう切っちゃうの?もうちょっと私とお話しましょ―――――』
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「ふぅ、まったくアルは…」
もっと創造神らしいことすればいいのになー。
「海斗、さっきまで頭に手を当てて、何してたんだ?」
頭に乗せていた手をどけると、孝が不思議そうに僕を見ていた。
「ああ、これは『念話』っていう、まぁいわゆる電話みたいなものだよ。」
「ほー、そんなものがこの世界にはあるのか。で、その『念話』ってやつで、誰と話してたんだよ。」
誰って、それはもちろん。
「この事件を起こした犯人だよ♪」
「…は?」
「勇者様は犯人がわかったのですか!?」
イリアが孝のとなりから『信じられない』という表情でそういってきた。
「ま、そういうこと。いったいどうしてこんなことになったのか…」
「キッチリカッチリ説明させてもらうよ!」
新キャラ、イリアも入ってだいぶ海斗のまわりも賑やかになってきました。(賑やかすぎかもしれませんが…)
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