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31、非日常的な朝でした

いや~いい朝だね。


窓から暖かい朝日が差し込んで、部屋の少しひんやりとした空気がなんとも心地良いよ。


寝起き特有のけだるさを払うために、伸びをひとつ。


「ん~本当にいい朝だよね~。」


僕は自分にかかっているタオルケットを剥がす。






「こんな状況じゃなければ…」





まず目に飛び込んできたのは『血』。起きて早々目にするものじゃないよね。


そのまま自分の下腹部に目線を移すと、涎を口元から垂らしながら眠る優奈の寝顔。本当に幸せそうだ。


そこからさらに足のほうに視線を送る。姉さんとフィーが不自然な格好で倒れている。


「異世界ライフ三日目の朝がこれですか…」


ちなみに今動かせるのは、首と左腕のみ。右腕はムラマサががっちりホールドしているためぴくりとも動かない。


気のせいか、右腕の感覚がまったくない。寝起きだからだろうか。


「一応服のなかの確認を…」


謎の『血』の正体を見ておかないと。


まぁ大体予想はついてるけどね。


僕は首元からTシャツの中を覗き込んだ。






「むふ、むふ、むふふふふふふふふふふふ♪」





「やっぱりか…」


案の定、美琴さんとその鼻血でした。


というか美琴さん。寝ながら笑うのやめてください。ホントに怖いです…


ちなみに鼻血の量は、真っ白だったTシャツが真っ赤になるほど。大量出血で死んじゃうでしょってくらいの量です…


「まぁ美琴にはあとで鉄分の多い料理を食べさせるとして、そろそろ抜け出しますか。」


え、みんなを起こさないのかって?いやいや、今起こしたらいろいろと大変だから、ね?


まずは隣に寝ているムラマサを慎重に腕から剥がす。


「う~ん、なんじゃ?もう朝かのぅ。」


はいアウト!開始3秒でミッション失敗だよ!!


「ふみゃ~あ、お兄ちゃんおはよう~」


「まぶし~」


ああまずい…ムラマサの声を合図にみんな起き始めちゃったよ。


「むふふふふふ………っは!?私、いつの間に…」


「あ、美琴も起きた。」


服のなかで美琴がもぞもぞ動くのでくすぐったい。


「…おはよう海斗。はやいのね。」


Tシャツの首元からヒョコッと顔を覗かせる美琴。


「おはよう美琴。あと早く顔を洗ってきなよ。女の子なんだからさ。」


美琴の顔は今、鼻血で真っ赤なのである。


「…女の子…ちょっと嬉しい…」


美琴は僕の服から抜け出すと、なぜかスキップで水瓶のほうへ向かっていった。


朝から元気だな~と感心していると、背後から視線を感じる。それも三人分。


「お兄ちゃん、わたしには『おはよう』って言ってくれないの?」


「わしも起きたのに…」


「あたしにも言ってよ海斗~」


あいさつひとつでそこまで嫉妬しなくてもいいのに…


「ごめんごめん。おはよう志穂、優奈、ムラマサ。昨日はしっかり眠れた?」


「うん、ばっちり眠れたよ。これも海斗の脇腹の抱き心地の良さのおかげね♪」


脇腹に抱き心地もなにもないと思うんだけど…


「わたしたちはちょっと寝不足かな?昨日はお姉ちゃんたちを止めるのに苦労したから。」


「そうじゃの。あの二人は今後も注意しておいたほうがよいじゃろう。」


そう言ってムラマサは、いまだに眠っている姉さんとフィーを指差した。


「本当にありがとう二人とも。今度なにか奢るよ。」


どうやら僕の大事なものは、この二人が守ってくれたようだ。本当に感謝してもしきれないよ。


「さて、それじゃあ僕はちょっと外に行って、風をあびてくるよ。」


みんなとの朝のあいさつも終えたし、いい加減僕も起きないといけないしね。


ベッドから降りるために足をスライドさせる。


………


動かない…嫌な予感がする。


そっと足元に視線を送る。








「あはははは、おはよ~海斗♪どこにいくのかな?お姉ちゃんが起きたよ~」


「カイトさま~おはようございます~。さあさあ、どうか私に朝のチューを!」







「おはよう二人とも。昨日はよく眠れたみたいだね。それじゃあ僕は朝の体操に行かなくちゃいけないから。」


僕は何も聞いてない。いつもどおりの爽やかな朝がきただけだ。そうだそうにちがいない。


足元から『ガシッ』って音がしたけど気のせいだよね。


「もう、照れないの♪早くお姉ちゃんと濃厚なモーニングキッスをしましょ♪」


「私にはカイト様の濃厚な一番絞りをっ!!」


「いやぁー!やめて離して見逃して!!」


朝からなんなのこの二人は!?やっぱりあれは幻聴でも空耳でもなかったというのか!?


というかフィーさん!?なんか日に日に症状が悪化してませんか!?


ああもう、なんでもいいから誰か助けてー!






「なんだなんだこの騒ぎは?」





ドアから男の声。


この低音で抑揚のない声は―――


「孝!いいところに来た!お願いだから僕をヘルプ!」


「ちゃんと日本語使えっての。」


慌てたせいで、変な言い方になっちゃった。


「あと、助けてほしいのは俺も同じだ。」


「へ?」


孝が助けてほしいだって?一体があったんだ?


気になったので、孝のほうを見る。









『にぃにぃ~あそぼーよ~』


『だめ!にぃにぃはあたちとあしょぶの!』


『おにいちゃん、このひとたちだぁれ?』


『おにいちゃんだいしゅき♪』


『にゃふ~』


『わふっ』






「孝…」


「なんだ…海斗…」








「こっちの世界ではショタとロリと動物にはできるだけ関わらないって、昨日言ったじゃないか!」


「俺が好きでこんなことになってると思ったのかお前は!?」


「だってこっちの世界に来て少ししか経ってないのに、もうそんなに子供や猫たちに好かれちゃってるじゃないか!」


「本当に知らないんだ!起きたらいつの間にか俺の部屋に入ってきてたんだよ!」


僕らのそんな言い合いの最中にも、孝のまわりにどんどんちびっ子や動物が増えていった。


あ、窓から馬が暴れてるのが見える…


ちなみに僕は今、姉さんたちの腕の中…


誰か助けて…


いよいよ孝の能力が発揮されはじめました。海斗と共に話を盛り上げてくれることに期待しています。


それにしても、フィーさんのキャラが日に日に大変なことに…ちゃんと軌道修正してくれるのか、作者としても気になります。


感想・評価受け付けています。今後もよろしくお願いします!

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