２９、寝ている間に何かが起きました

「ねぇ、お兄ちゃんこんなところで寝ちゃったけどどうしよう…」

「とりあえずベッドに運びましょう。」

「…了解。」

志穂（わたし）はお姉ちゃんと美琴（みこと）さんと協力し、なんとかしてお兄ちゃんをベッドに運ぶことにした。

「うんしょってうわっ、お兄ちゃん軽っ！？」

「…ホントに軽い。ちゃんと食べてるのかな？」

「ちょっと心配ね。今度しっかりと栄養あるものしっかりとたべさせないとね！」

それにしても本当に軽い。もしかしてお兄ちゃん、こっちの世界に来てから無理してるんじゃないかな。

だってもうかれこれ二週間たってるし…もしかしてなにかあったんじゃ…

※孝（たかし）含む５人は、異世界でまだ二日しか経ってないことを知りません。

「よし、それじゃあ降ろすよ。」

お姉ちゃんの合図に合わせてお兄ちゃんをベッドに降ろす。

降ろす瞬間「うみゅ～」とお兄ちゃんが唸った。

「…ぶはっ」

「こ、これは…」

「可愛すぎる…わね…」

「あああカイト様ー！いい！いいですよ！！」

「おおう。こ、これはなんとも…」

そんな反応に、美琴さんは鼻血を噴き、お姉ちゃんと優奈（ゆな）さん・ムラマサちゃんは顔を真っ赤にし、フィーさんは若干壊れた。

え、わたし？わたしは…

「う～」

「あら志穂大丈夫？顔真っ赤よ？」

「ら、らいじょうぶ～」

「これは重症じゃな。」

お兄ちゃんなのに、なんか見てて変な気持ちになっちゃった…

「こ、こほん。そ、それじゃあ私たちも寝ましょうか。」

「…うん、そうする。」

「うう、本当にお兄ちゃんと一緒に寝るの？」

「あら、志穂様？カイト様と一緒に寝るのがお嫌なのですか？」

さっきからお兄ちゃんの顔を撫で続けているフィーさんが、心底不思議そうに言ってきた。

お兄ちゃんが、撫でられるたびに「みゅい～」とか言うから周りの人がずっとそわそわしている。

「いやだって…兄妹だしさ…なんというか…」

「なに言ってるのよ志穂？あなたいっつも海斗の腕に抱きついていたじゃない。」

「そりゃそうだけどさ…それと一緒に寝るのはなんというか…ハードルが高い…」

ちなみに腕にくっつくのは特に問題ないです。むしろくっついていないと問題が起きそうです。

わたしの健康に…

「まあ志穂ちゃんがどうするのかは置いといて…どうやって寝るの？」

「…今回の一番の問題点。」

「確かにそうですね。」

「やっぱここは公平にジャンケンで決める？で、勝った人から寝る位置を決めていけば。」

いろいろ考えているうちに、いつの間にか話が進んでしまっていた。

というかジャンケンって…

「フィーさんたちはジャンケンわかるんですか？」

異世界でジャンケンの文化があるとは思えないが。

「はいわかりますよ。」

「わかるんだ…」

案外異世界も、わたしたちの世界とあまり変わらないのかも。

閑話休題

「それじゃあいくわよ～。ジャンケン―――」

（…絶対に、勝つ！）

（海斗の隣は絶対あたしが寝るんだから！）

（カイト様～今夜こそ私はやりますよ～）

（なにやら皆（みな）、思惑（おもわく）があるようじゃの）

「「「「「「ポンッ」」」」」」

「いよっしゃー！あたしが一番だー！」

「…くやしい。」

「優奈さんが一番か。」

「まぁしょうがないか。とりあえず続けようか。」

「うぅ、私が一番を取りたかったです～」

「まぁまぁ、これからじゃろうが。」

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その後、何度かジャンケンを繰り返した結果と寝る場所がこれだ。

１、優奈さん　　お兄ちゃんの脇腹

２、フィーさん　　（省略）右足

３、お姉ちゃん　　左足

４、ムラマサちゃん　　右腕

５、美琴さん　　お兄ちゃんの現在着ている服の中

６、わたし　　左腕

わたし、ジャンケン弱いな。

じゃなくて、なにこの配置！？

「なんで上位の人のほとんどが足とかにいってるの？普通は王道に腕なんじゃ…」

「あまいわよ志穂。確かに腕もいいわ。けどね、足はなかなか抱きつけないの。だからこそ今夜はあえて足にしたのよ！みんなには腕を譲るわ。」

「…本音は？」

「たまには海斗の足を舐めまわしたいと思いまして。」

「変態だー！」

お姉ちゃん、いつからそんなマニアックになったのさ！

いままではお兄ちゃんの顔とかお腹とかだったのに…

…その時点ですでに手遅れだったんだ。

「じゃ、じゃあ美琴さんはどうしてお兄ちゃんの服の中なの？」

お願い！美琴さんはまともであって！

「…海斗の服の匂いと海斗の肌と海斗の体温と海斗の――――」

「志穂殿、どうやら美琴殿はもうだめなようじゃ。」

「うん…わかってるよ…」

もうやだ。まわりにまともな人が少なすぎるよ…

「そんなことより早く寝ましょうよ。私そろそろ我慢の限界…」

「…私も、早く楽園に逝きたい…」

「もう好きにしてください…」

「大変じゃの、妹という立場は…」

いやいやムラマサちゃん。たぶん全世界でこんなことで頭を悩ます妹はかなり少ないと思うよ？

「それじゃあみなさん、寝ましょう！」

「「「おー！！」」」

「おー」

「お、おー！？」

なんであそこの４人はあんなにテンションが高いのだろうか。

絶対寝る前の人のテンションじゃないよ…