25、みんなを呼び寄せました
ちょっといつもより長いです。
「っは!」
目を覚ます、僕の自室に飾られている風景画が目に映った。
「…そうだ。さっきまでアルの所にいたんだっけ。」
だんだん意識がはっきりしてきた。
「はやくみんなをこっちに呼ばないと…」
召喚するためにとりあえず立ち上が――――れない。
「ふぇっへっへ~逃がしませんよカイト様~むにゃむにゃ…」
「そうだった…フィーに束縛されてたんだった。」
首に思いっきり巻きついてるから無理矢理立つわけにもいかない。
…本当に寝てんのこの娘?
「…おきないでね~」
僕は慎重にフィーの腕を解いていく。
途中何度も起こしそうになって、冷や汗が止まらなかった。
「さて、早めに召喚しちゃわないと。」
あの4人が何をしでかすかわからないからね。あと、このままだと孝の生命も危うい。
「でもどうやってやればいいのかな?]
『そのあたりは私にまかせて!』
「!」
急に頭の中に声が響き渡った。
というかこの声って、
「アル!?これは一体どういうことなの?なんで僕の頭の中に直接声が響いてるの!?」
『あら、念話は初めてだったのかしら。ふふ、可愛い反応しちゃって♪』
「あのねぇ…」
起きて早々疲れたよ…
「まぁいいや。それよりみんなの召喚方法を教えてくれない?」
『わかったわ。それじゃあまず、ステータス画面を開いて。やり方は前に教えたとおりよ。』
僕は頭の中で『ステータス』と唱え、手を空中にかざす。
すると案の定、前に見たものと同じ、半透明の画面が目の前に浮かび上がった。
どうやら今日の戦闘でいろいろと変わったみたいだけど、今はそれどころじゃない。
『そしたら一番下にある『異世界召喚術』ってのをに触れてみて。』
言われたとおりに画面を指でスクロールさせ、下にある『異世界召喚術』をタッチする。
すると、触れた手が淡い赤色の光を帯び始めた。
「なにこれ!?」
急に光始めたからつい驚いてしまった。
『慌てないで。これで準備はできたわ。あとは、呼び出したい人のことを強く念じて』
「念じるって言ったって…具体的にはどうしたらいいの?」
『そうね…その人の特徴や顔、性格や思い出を念じてみたら?』
随分アバウトだね…そんなんで本当にいいのかな。
「まぁやるしかないか!」
僕はみんなの顔を思い浮かべることにした。
性格や思い出なんかでやったら、変なことまで思い出してトラウマに繋がりかねない。
『念じたかしら?そしたら最後に、『異世界人召喚』と唱えて』
「なぜにフリーフォール!?」
あれか、穴に突き落とす的な意味合いか!
実際、僕も穴に落ちてここまできたんだし…
『!まずいわ。一人、女の子が包丁を持ち始めたわ。何をしでかすかわからないわよ。』
え、誰、そんなことしてるの。本当に何やろうとしてんの!?
「ええい、『異世界人召喚』!」
瞬間、目の前に漆黒の穴が5つ開いた。
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「…海斗がいない…海斗がいない世界なんて…生きていてもしょうがないよね…」
果穂は今、とてつもなく絶望している。
ずっと、ずっと、ずっと一緒に過ごしてきた最愛の弟、もとい私の夫にする予定だった海斗が、ある日突然、私の目の前から姿を消した。
そこら中を捜し回った。可能性のある場所すべてを捜し回った。
いつも海斗の行くスーパーから、タンスの中まで捜した。
だけど、手掛かりすら掴むことができなかった…
私の手には一本の包丁が握られている。海斗がいつも使っていた愛用の包丁だ。
私はそれを自分の胸に突き立てる。
「死んだらまた、海斗に会えるよね…」
今、お姉ちゃんが会いに行くよ。
私は包丁を胸に突き刺そう力をこめた。
「え?」
瞬間、私の足元に穴が開き、
「!キャアアアアアアァァァ」
私はその穴に吸い込まれた。
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孝はこの状況にどう対処したらいいんだろうか…
腐れ縁で俺の友人だった海斗がいなくなり、俺は至るところを捜し回った。
しかし、誰に聞いても、どこに行っても、手掛かりは見つからなかった。
なかば諦めて、気分転換に散歩をしていた。
そして帰り道。目の前には真っ黒な穴が空中に開いていた。
普通だったらその穴を避ければいいだけなんだが、なぜかそのままにしてはいけない気がしてならない。
「くそっ!どうなってんだよこれは…」
というか普通、空中に穴が開くか!?という考えは、なぜか思い浮かばなかった。
とりあえず、穴の中を覗き込む。
何も見えない。本当の『闇』が目の前には広がっていた。
俺は、恐怖からなのか、後ろに一歩下がろうとした。
「おっと、ごめんよ。」
「へ?」
背中に軽い衝撃。
瞬間、ドンッっという音と共に俺は穴の中に落とされた。
「おっさーん!何しやがるんだー!」
落ちながら俺は、どんどん遠くなっていく穴に向かって精一杯の文句を言った。
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「お兄ちゃん…寂しい…私…寂しいよ…」
お兄ちゃんがいなくなってから二週間、志穂はずっと寝込んでいる。
隣に住んでいる叔母さんにお世話をしてもらっている身だ。
「私、お兄ちゃんがいないとなんにもできないんだよ…」
思えばお兄ちゃんにはずっと頼りっぱなしだったな。
家事だけじゃなく、お買い物に付き合ってもらったり、勉強も教えてくれた。
風邪をひいたときは、学校を休んでまで看病してくれた。
そんなお兄ちゃんが私は大好きだった。
…でも、今はもういない。
「ふぐっ、ふぇ…おにいちゃん…おにいちゃあああああああん!!」
お兄ちゃんのことを考えていたら、いつの間にか、私は泣き叫んでいた。
「ぐすっ、もう、いや!ひぐっ、お兄ちゃんに、会わせてよ、神様…」
私のそんな願いに呼応するように、目の前に先の見えない穴が開いた。
「…お兄ちゃん?」
私の体がその穴にどんどん吸い込まれていく。
普通は得体の知れない物に吸い込まれたら、とりあえず抵抗するだろう。
しかし、私はなんの抵抗もせず、その穴に身を委ねた。
「お兄ちゃん、いまそっちに行くからね。」
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「ねぇ…」
「…何?」
優奈は隣に座っている親友、美琴に話しかけた。
「あたしたち、これからどうしようか…」
目の前には灰色の空、下には豆粒のように見えるほどの小ささの車が走っている。
そう、ここはとある高層ビルの屋上。何も考えず、あたしたちはここにきた。
美琴が口を小さく開く。
「…海斗がいなくなってしまったのは私たちのせい。…だったらけじめをつけるべき。」
「そう…だよね…」
あたしと美琴は手をつなぐ。
そして、ビルの側面に立った。
「親友同士、一緒に逝こうか…」
「…海斗共有同盟。…死んでも一緒、だね。」
「うん。それじゃあ…」
あたしと美琴は、体の重心を空へと投げ出した。
体はそのまま、重力によって地面へと吸い寄せられる。
そして、
「「え?」」
地面に直撃する寸前、あたし達は暗闇へと、誘われた。
いよいよメンバーが増えてきました。ここまで超急展開ばかりで本当に申し訳ありません。もう少し丁寧に書けるように心がけていきます。
感想・アドバイスなど受け付けています。書いていただけるととても励みになります。どうかよろしくお願いします。




