23、夢の世界にいきました
「はぁ、はぁ。や、やっと着いた…」
全力疾走したおかげで、なんとか誰にも見られることなく、自室にたどり着くことができた。
「ふゃぁぁ~おいしすぎます~」
フィーはいまだに気絶している。うわ言でいまだに僕の料理のことを言っているようだ。
「とりあえずフィーをベッドに寝かせよう。このままじゃ、さすがにきつい。」
僕はフィーを起こさないようにそっとベッドに寝かせようとした。
「…これ、どうしよう。」
寝かせようとしたのはいいんだ、うん。
ただ、フィーの腕が僕の首に巻きついていてはずれないんだ。
「なんで気絶してるのに、僕を束縛するのかな?」
人間って不思議だよね。姉さんたちも似たようなことしてきたし。
まぁそんな不思議体験はおいといて
「この状況、どうしよう…」
このままの体制はさすがにきついし、かといって一緒のベッドに寝るなんてこと、僕にはできない。
とりあえず、ベッドの脇に腰掛けて様子を見る事にした。
「ふあぁ~、なんか僕まで眠くなってきた。」
フィーの寝顔を観察しているうちに、なぜか僕まで眠くなってきてしまった。
「…少しだけ、ほんの少しだけ寝よう。」
僕のそんな言い訳とは裏腹に、目を瞑った途端、僕の意識は睡魔に飲み込まれた。
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目を開くと目の前には、いつか見た雲海が広がっていた。
「あれ、ここって?」
「ひっさしぶり~カイト君♪二日ぶりくらいかしら。」
状況の確認をしていると、背後から声を掛けられた。
デジャブ感が半端じゃない。
「なんで僕はまたここにきているのかな、アル?」
後ろに振り返ると僕の想像通り、淡い水色の髪をした長身の女性が立っていた。
ちなみに服装は、白いローブ姿である。やっぱり神様ってみんなこんな格好してるのかな。
「いやぁ実はカイト君に伝えたいことがいくつかあってさ~。だからカイト君の意識をこっちの世界に持ってきちゃった。」
なるほどね~。ふむふむ、
「帰っていいかな?」
「いきなりひどくない!?」
アルは信じられないというような顔をしてそう切り返してきた。
「いや、いきなりここに呼ばれても困るんだけど…」
まだ食器洗ってないし、フィーの介抱と、僕の束縛も早く解かないといけないし。
「すぐ終わるから!それに向こうの世界の時間は君がここにいる間は止まっちゃうし。」
「…本当に?」
「本当だから、ね、お願いだよ~!」
アルは僕に手を合わせて頭を下げた。
創造神が一般人にそう簡単に頭を下げていいの?
「わかった、わかったから頭を上げて。」
とりあえず、話を聞く事にしよう。
閑話休題
「まず、いい話と悪い話、あなたに謝りたい事の3つがあるんだけど、どれがいい?」
いきなり選択肢からか。
「それじゃあ悪い話・いい話・謝りたい事っていう順番で。」
ちなみに僕は苦手なものから食べる派です。
「じゃあまず悪い話から。話をする前に、まずはこの水晶に映っている映像をみてくれない?」
そう言ってアルは僕の目の前に、人の頭位の大きさの水晶を出現させた。
「どれどれ…」
僕は素直にその水晶に映っている映像を見る。
『よし、こんなものかな?あとは――――』
そこには僕の料理中の姿が映し出されていた。
「あ、ごめん。間違えちゃった。こっちだった。」
「ねぇ、今の映像何?なんで僕の姿が映し出されてるの?」
しかもローアングルから。
「こっちのほうの水晶を見て頂戴。」
僕の質問は華麗にスルーされた。
…理不尽すぎるでしょ。
「今度はちゃんとしたものだろうね。」
「まぁ、これが本当に見せたかった物だけど…ショックを受けないでね。」
アルの言葉が気になったが、そのまま、水晶の映像を見る事にした。
「こ、これは…」
瞬間、自分でもわかるくらい、体から血の気が引いた。




