11、一緒に寝ました
~そして現在~
「そんな事があって僕の家庭は両親が家にいないんだ。」
そう言って僕は話を終わらせた。
ちなみに今はまだフィーと湯船に浸かっている。
「…なんかすごいですね、カイト様のお父様。今も生きているんですか?」
フィーが目を丸くしてそんなことを聞いてきた。
「たぶん生きていると思うよ。元の世界では定期的にメールでやり取りしてたし。」
「めーる?」
「ああいや、こっちの話さ。」
実際いままでのメールを見る限りだと生きているのは確かみたいだ。たまに死にかけてるみたいだけど…
あるときなんか
『俺いま目の前に花畑がみえるんだ。すっごく綺麗なんだ。』
なんてメールがきて慌てて返信したよ。
ホント大丈夫かな?
「そういえば、カイト様のことは分かりましたがお母様のほうはどうされたのですか?」
「ああ母さんか。あの人は父さんが家を出て行ったことを話したら『誠さんを守らなきゃ!』とかいって出て行っちゃった。両親不在になっても僕たちが困らないように準備はしていってくれたけどね。」
「でもそれって当時11歳だったカイト様には相当ショックだったのでは?」
フィーが心配そうにそう言ってくる。
優しい娘だな~
「確かにショックだった。でもそこでずっと立ち止まっているわけにもいかなかったからね。それに姉さんや志穂を支えていく必要もあったから。」
「カイト様はお強いのですね。わたしだったらきっとしばらく立ち直れなかったと思います。」
「あはは…強くなんてないさ。いままでがむしゃらに生きてきただけだし、家族が一人もいなかったわけではないんだしさ。」
これまでに何度も姉さん達には助けられたしね。
本当にありがたい話だよ。
「さて、話も終わったことだしそろそろ上がろうか、フィー。」
「え、もうあがってしまわれるのですか?」
「いや、もうかれこれ1時間くらいたってるからね!?」
普通は完璧にのぼせてるからね。
「むぅ~仕方ないですね。それではわたしが先にあがりますね。」
ザバァッっと音をたてて湯船からあがったフィーはそのまま脱衣所へ向かっていった。
「よかった~。一緒に着替えましょうなんて言われなくて。」
元の世界では姉さん達が風呂に乱入してきたあと似たようなことをいつも言ってきたので、そういう面ではフィーはまともなんだなと思った。
まぁ男の風呂に入ってきてる時点でまともではないか…
「さて、しばらくしたら僕もあがるかな。」
そういいつつ僕はまた湯船に浸かった。
あぁ~癒される。
ちなみに僕の使用済み下着がなくなっていたのは予想通りだったりする(泣)
もうやだ、こんな日常。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
~城内カイトの自室~
「カイト様~はやく一緒に寝ましょうよ~」
僕が部屋に着くとフィーがベッドから手招きしてきた。
「やっぱり一緒に寝なくちゃいけないの?」
「それはもちろん。今日だけでなく明日も明後日もそのさきずっとです。」
つまり僕はもう一人で寝れないのか。というか一生一緒に寝なくちゃいけないの!?
「否定することは?」
「できません♪」
ですよね~。あのとき妥協案なんてしなければ…
まぁもういいか、そんなことは。
「わかったよフィー。さっさと寝ようか。」
もう僕はあきらめたよ父さん…。だって抗える気がしないんだもん…
「はいっカイト様!」
ものすごくいい笑顔でフィーはそう答えてきた。
ぐっ、か、可愛い。ああもう消え去れ煩悩!
「そ、それじゃあおやすみ。」
僕はベッドに入ってフィーに背中を見せるようにして寝転がった。
フィーと向かい合わせに寝てしまったらまずい気がしたからだ。
「もう、カイト様ったら。だったらこうです!」
瞬間、背中に柔らかい感触が伝わってきた。そんなことし、た、ら…
「あれ、カイト様。ど、どうして…」
「どうしてこの状況で寝れるんですかー!?」
僕の意識はあっという間に夢の世界に入りこんでしまった。
めちゃくちゃ疲れていたのにそんなことされたら気持ちよすぎて余計眠くなるじゃないか。
「どうしてわたしが抱きついたらすぐ寝てしまわれるのですか。興奮しませんか普通?」
「まぁいいです。こうなったらカイト様の体を好きなだけいじらせてもらいますから。フヘ、フヘヘ♪」
薄れゆく意識の中でそんな声が聞こえてきたが聞かなかったことにしたい。




