9、僕の家庭事情
~10年前~
「ねぇお父さん、最近女の子たちが僕の体を触ってきて怖いよ。」
当時6歳だった僕は、この頃から既に愛され体質が出ていた。しかしまだ幼かった当時の僕は、まわりの人の自分に対する行動の原因がわからず、恐怖していた。
「そうか、それは大変だったな。俺の所為で海斗には苦労をかけいるようだ。すまない。」
僕に謝っているこの人は僕の父親の新井誠。
昔の僕は父さんが謝る理由がわからなかったが、これには理由があった。
僕の家系は代々、長男に愛され体質が宿る。普通だったら喜んでいるような体質だけど、あまりにも強力すぎて中には発狂した人もいたとかで、いつしか「新井家の呪い」とまで言われるようになったらしい。
父さんはなんとかして僕にこの体質が受け継がれないように研究したらしい。
しかし研究は失敗し、愛され体質は僕に受け継がれた。
そのことを父さんはずっと負い目に感じていたらしい。
「俺が研究を成功させていれば、海斗はこんなことには…」
「お父さん、けんきゅーって何?それにお父さんは何も悪いことなんてしていないよ。」
「海斗、お前って子は…」
父さんは目じりに涙を浮かべながら僕を抱きしめた。
当時の僕は父さんが何に対して謝っているのか分からなかったので普通に許していた。
いまでも父さんのことは微塵も恨んじゃいない。むしろ僕のために頑張ってくれていたことに感謝しているくらいだ。
「うわ、お父さん苦しいよ~」
「あらあら、誠さんはまた海斗を抱きしめているの?羨ましいわね~♪」
キッチンからのんびりした口調でそう言ったのは僕の母、新井真美だ。
母さんも父さんと同様に、家族を心から愛してくれる本当に良い母親だった。
「わたしも誠さんに抱きしめられたいわ~。」
母さん、それでいいのか?
「真美はまた今度ね。」
父さんはそう言って母さんを軽く流す。
「も~そんなこと言わないで。今すぐ抱きしめてよ~」
母さんがそんなことを言っていると
「にぃにぃ、あたちもだきちめて~」
足元から聞きなれた幼い声が聞こえてきた。
「ねぇ~にぃにぃ~。」
「わかったよ、はいギューッ!」
「むみゃ~」
僕は父さんの腕を解いて、幼い声を出していた張本人を優しく抱きしめた。
可愛い声を出しているこの子は新井志穂。僕の三歳年下の妹だ。
「にぃにぃあったきゃ~い」
甘えん坊で、よく僕に抱きしめてほしいとせがんでいた。
それは僕が高校1年になったいまでもかわらなかったりする。(泣)
なんで僕のまわりの人は抱擁を強要するのかな?
「ただいま~。って志穂っ!?なんで海斗に抱きしめられてるの!?今すぐお姉ちゃんとかわりなさい!」
「あ、お姉ちゃん。おかえり~。」
「ただいま海斗♪あと志穂は早く私とかわって。」
当時3歳の妹にまで嫉妬しているこの人は新井果穂。二歳年上の姉だ。
嫉妬深く―――主に僕関係で―――まわりからは誤解されがちだが、家族思いのとても優しい人だ。
高校3年になったいまでは、成績優秀スポーツ万能、おまけにスタイル抜群だったりする。
僕も、そんな姉さんのことを今でも尊敬している。
「私はこれから海斗とらぶらぶしなくちゃいけないんだから!」
この思考さえ除けば完璧なのに。
姉さん、そんなんでこの先大丈夫?
「ふぇ~ん。ねぇねぇがこわいよ~」
「お姉ちゃんあまり強くいっちゃだめだよ。あとでちゃんとギュッってしてあげるから。」
「ほんと!?やったやった~!!」
姉さんは、僕がそう言うと本当に嬉しそうな顔をしていた。
「あらあらうふふ。仲がいいわね~。それじゃあそろそろごはんにしましょうか~。」
「そうだな、俺も準備を手伝おうか。」
「そうしてくれると嬉しいわ~♪」
これが新井家の日常で、当時の僕はいつまでもこの生活が続くと思っていた。
『あの日』までは…
今回は、海斗の過去の話となりましたが書ききれず次回に続いてしまいました。
地の文が難しく、読みづらかったと思います。すいません。
こんな文章でも読んでくれると嬉しいです。
ちなみに地の文は現在の海斗視点となっています。
わかりにくくて、申し訳ありません。




