表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【なろう&書籍版】とにかく妹が欲しい最強の吸血姫は無自覚ご奉仕中! / 【コミカライズ版】最強の吸血姫は妹が欲しいっ!  作者: 緋色の雨
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/75

エピソード4 自称普通の女の子は、まったく自重しない 3

聖女に散々と罵られたが、夜の彼女は意外と可愛い

https://book1.adouzi.eu.org/n2044fb/

新作、投稿を開始してます。よければご覧ください!

 

「ごめんなさい、ユフィア」

 孤児院の地下にあるリスティアの秘密基地でユフィアは戸惑っていた。

 自分が愛されていない。だから置いてきぼりにされたのだと二百年近くも悲しんでいたのに、それが誤解だと、ロゼッタに謝罪されたからだ。


 姉の言葉が信じられない訳じゃないが、二百年の悲しみは誤解だと分かったからと言って、そう簡単に消えるものじゃない。


「ユフィア。謝っても貴方の心の傷が癒えないことは分かっているけど、私にとって貴方が大切な妹であることは知っておいて欲しいの」

「……うん、分かった」


 とまあそんな感じでユフィアとロゼッタはひとまず仲直りして、当面はリスティアの秘密基地で仲良く暮らすことになった。

 それは良いのだが……


「二人とも、重いんだけど……」

 秘密基地にあるリビング。ソファに座り、ロゼッタとリスティアに抱きつかれているユフィアはうめき声を上げた。


「あら、だって二百年もひとりぼっちで、寂しい寂しいって泣いてたんでしょ?」

「な、泣いてないわよっ」

 ロゼッタの指摘に反論して、貴方が変なこと吹き込んだんでしょとリスティアを睨む。だが、リスティアはユフィアの頭を抱きしめていて、こちらの視線には気付かない。


「もぅ……ロゼッタお姉ちゃんはともかく、リスティアは私より年下なんだから、お姉ちゃんぶらないでよっ」

「しょんぼり……」

 リスティアはその言葉通りにしょんぼりとソファに倒れ込む。その姿を見たユフィアは、少しだけ胸が苦しくなった。


 リスティアはユフィアが思っていた以上に可愛くて、聞いていた以上に優しい。ユフィアにとって、リスティアは理想のお姉ちゃんだった。

 けれど、ユフィアはもうすぐ二百歳。

 人間でいえばまだまだ少女の部類だが、リスティアはもっともっと年下で、人間でいえば幼女といわれてもおかしくない年齢なのだ。

 そんなリスティアを、平時からお姉ちゃんと呼ぶのはさすがに恥ずかしい。という訳で、ユフィアはしょんぼりするリスティアに対して、ツンとそっぽを向いた。


 そんなユフィアの頭上で、ロゼッタがリスティアに向かって「ところで、私に色々作ってくれるのよね?」と問いかける。


「あぁうん。なにか欲しいものはある?」

「そうね……せっかくだから、部屋の調度品が欲しいわね」

「はーい。それじゃ、調度品をいくつか作るね」

 リスティアは答えるのと同時に、粘土を取り出した。そしてそれを一瞬で生成。信じられないほど芸術的な花ビンを作り出してしまった。


「一つ目、かんせーい、だよ?」

「わぁ、ありがとう。さすがはリスティアね」

 ロゼッタが満面の笑みで受け取るが――


「ちょ、ちょっと待ちなさいよ、リスティア。なによ? いまのはなんなのよ」

 ユフィアは突っ込まずにはいられなかった。


「なにって……花ビンだけど?」

「そうじゃなくて。粘土を花ビンとして焼き上げて装飾も入れるだけならまだ分かるけど、さらっとエンチャントまでしたでしょ!?」

「うん、したよ?」

「したよ? じゃなくて! 詠唱も魔法陣も省略して一瞬でエンチャントって、明らかにおかしいでしょ!?」

「……え? ええっと……あ、そうだ。手品だよ?」

「そんな手品があってたまるか――っ」

 ユフィアは全力で突っ込んだ。


「ふえ? あ、そっか……手品は人間用の言い訳だったよ。……というか、あれ? ユフィアも真祖なんだし、無詠唱でエンチャントくらい出来るよね?」

「いやいやいや、リスティアのは明らかにおかしいからっ!」


 ユフィアだって、簡単なエンチャントくらいなら魔法陣と詠唱を省略しても出来る。

 けれど、リスティアが作り出した花ビンは、色々な意味で普通じゃない。ユフィアが同ランクの物を作ろうと思ったら、全力を出してもそれにそれなりの時間が必要だ。

 だと言うのに、リスティアは可愛らしく小首を傾げている。


「ユフィア、諦めなさい。言ったでしょ、リスティアは規格外だって」

「はあ……お姉ちゃん達から聞いてたけど、ここまでとは思わなかったわよ」

 ユフィアは深々とため息を吐いた。でもって、そんなリスティアに喧嘩を売ったことに、今更ながらに身震いをする。良く生き残れたわね、私――と。



   ◇◇◇



 姉妹を仲直りさせたリスティアは、ロゼッタを孤児院のみんなに紹介して、手料理を振る舞って夕食を楽しんだ。


 ちなみに、ロゼッタとユフィアは、真祖として正式に紹介した。

 けれど、自分が真祖であることを秘密にしたいリスティアは、二人を実の姉妹と紹介しつつも、「あたしは普通の女の子だからね」と子供達に伝えた。

 その結果、子供達は一斉に「うん、分かったー」と温かい表情で頷いてくれた。

 子供達は無邪気で可愛いなぁ……と、リスティアは和む。なお、他の者達は全員、リスティアは無邪気で可愛いなぁと思っていたのだがリスティアは気付かない。

 そんなこんなで、孤児院の食堂で団らんをしているとナナミがやって来た。


「ナナミちゃん、ご飯はもう食べた? まだだったら、なにか出すよ?」

「まだですけど……リスティア様、王宮への報告を忘れてませんか? 森付近に陣取っていた真祖がいなくなった件で、王宮から何度も問い合わせがきてますよ?」

「……あっ」

 ぽんと手を打って立ち上がる。そうして、みんなはのんびりしてて良いからねと言い残して、ナナミと一緒に王宮へと向かった。




 ナナミと一緒に王宮に上がると、その足で会議室へと連れて行かれた。そこには国王陛下の他に、シャーロットとウォルター公爵がいて……プリンを食べてくつろいでいた。


「あら、リスティア、ナナミ。待ちわびたわよ」

「……シャーロット、スプーン片手に言われても説得力がないよ。あたし、みんなが不安がっているようなことを聞いて、急いできたんだよ……?」

「わたくし達は事情を知っていますから。でも、事情を知らない者達が不安がっているので、リスティアには早く来てほしかったんですわ」

「……なるほど」

 それなら仕方ないかなとリスティアは納得し、ナナミと並んで席に着く。


「ごめんなさい。リスティアとナナミにもプリンを出してあげたいのだけど、いまはこの部屋に誰も近づけないようにしているから、話が終わるまで我慢してね」

「別に良いよ、自分で出すから」


 リスティアはアイテムボックスからパフェを出して自分の前に。ナナミは夕食がまだだと言っていたので、ステーキセットをどどんと出してあげた。

 甘ったるい匂いが支配していた会議室に、ステーキの旨そうな香りが広がる。その圧倒的な香りに、陛下達がゴクリと生唾を飲んだ。

 もちろん、その視線はステーキに釘付けである。


「えっと……あの、リスティア様?」

「ナナミちゃん、お腹空いてるんでしょ? 我慢は身体に良くないよ?」

「いえ、あの、この状況で食べるのは精神的に無理なんですけど」

「え? あぁ……えっと陛下。食事しながらの報告でも良いですよね?」

 普通は良いはずないのだが――リスティアに問われてダメと言えるはずがない。

 もっとも、今回はそれ以前の話だ。陛下は救国の英雄であるリスティアの些細な願いを無下にするような人物ではない。

 ゆえに――


「じゅる……んんっ。いや、もちろん、食べながらの報告でかまわんぞ。……ごくり。わしは一口食べてみたいなどと、決して思ってはおらん」

 食べることは快く許可したが、ステーキへの興味を隠しきることは出来なかったようだ。


「ありがとうございます、陛下。という訳で、冷めないうちに食べると良いよ」

 リスティアの無邪気なイジメに、ナナミはだらだらと汗を流した。


「シャーロットお姉ちゃん、助けて……」

 助けを求められたシャーロットが「偉いですわっ」と拳を握りしめて、なぜか自分が頼られなかったリスティアはしょんぼりした。


「リスティア、ナナミのステーキはまだありますの?」

「それは……うん、たくさんあるけど?」

「では、わたくし達にも味見させてくださいませんか?」

「……良いけど、プリンの後にステーキを食べるの?」

 こんなときだけ、真っ当なツッコミを入れるリスティアである。


「順番的にはおかしいですが、凄く良い匂いで気になってしまったんです」

「そういうことなら……良いけど、どれくらい食べる?」

「そうですわね。わたくしはナナミの半分くらいで」

 シャーロットの後に、陛下とウォルター公爵も同じくらいでと続く。ということで、リスティアはステーキをそれぞれの前に並べた。


 なお、そもそもお偉方の前で食事なんて出来ないという意味で助けを求めていたナナミは、シャーロットお姉ちゃんのばかぁ……と拗ねていたが、シャーロットは気付かない。


 今更ながらに気付いたリスティアが、「ナナミちゃん、ごめんね。みんなの前で食べるのは嫌だったかな?」と心配する。

「えっと……はい」

「そっか。ごめんね。でも、大丈夫だよ」

「……大丈夫って、どうしてですか?」

「だって、ほら。みんな、自分のお肉を食べるのに夢中だよ」

 リスティアは他のみんなに視線を向ける。

 さすがに品良く食べてはいるが、旨い旨いと自分のお肉を食べるのに夢中である。


「……たしかに、そうみたいですね。私もお腹空いてきたので、食べちゃいます。リスティア様。心配してくれてありがとうございます」

 マッチポンプ的に好感度を上げたリスティアは、シャーロットに勝ったと拳を握った。



「それで、交渉の結果を教えてはくれまいか?」

 食事が落ち着いてきた頃、国王陛下が口を開いた。


「ロゼッタお姉ちゃんには、いくつかを除いて、あたしが代わりの魔導具をプレゼントすることで了承してもらったよ」

「おぉ、それは助かる……が、いくつかを除いて、というのは?」

「あたしからの初めてのプレゼントとか、とくに思い出深い品は返して欲しいって。あたしとしても、お姉ちゃんの気持ちは嬉しいから、返してくれると助かるかな」

「……ふむ。そういうことであれば是非もない。持ち主を特定して、なにかと引き換えにしてもらえるように、持ち主に交渉するとしよう」

「あ、それなら、あたしが代わりに、お好みの魔導具を作るって約束するよ」

「――なっ!?」


 国王陛下だけでなく、シャーロットとウォルター公爵も息を呑んだ。

 その反応に対して、リスティアは『あたしが手抜きのエンチャント品を作るとか心配されているのかな?』と思ったが、もちろんそんな訳がない。

 リスティアから、お好みの魔導具をもらえるなんて、なんて羨ましいと思っただけである。


「えっと……ダメかな?」

「ダメな訳あるか!」「ダメなはずがないだろう!」「ダメなはずありませんわっ!」

 三人から一斉に突っ込まれた。

 良いのなら、どうして怒られてるんだろう、あたし――とリスティアは首を傾げる。


「ええっと……じゃあ、そういう感じで良いかな?」

「うむ。後で、その思い出深い品とやらの特徴を教えてくれ。こちらで探し出して、交渉するように手を回しておこう」

「うん、分かった。ロゼッタお姉ちゃんに聞いておくね」

「よろしく頼む。それで……お主が魔導具を作ることに対するお礼だが、一体どれだけの物を用意すれば釣り合いが取れるのか想像も出来ん」

 とくになにも考えていなかったリスティアは「ふえ?」と首を捻る。


「お主が魔導具を作ってくれるおかげで、無銘シリーズを返品せずにすむのだ。それ相応の礼をせねばなるまい。なにか、望みはないのか?」

「……そう言われても」

 リスティアが欲しいのは妹くらいでである。

 でもって妹は、自力で作るモノなので……いや、普通は親が作るモノなのだが、とにかくお願いするようなことではない。


「あ、そうだ。学園祭をちゃんと開催して欲しい」

「……学園祭だと?」

「うん。ラシェル学園の学園祭。開催日がもうすぐなんだけど、色々あったから準備が滞ってて、中止になる可能性もあるかもって。だから、ちゃんと開催して欲しい」

「その程度はお安いご用だが……他にはなにかないのか?」

「うん。孤児院のみんなが楽しみにしてるから、開催してもらえるのが一番だよ」

 それにきっとナナミちゃんも……と、心の中で付け加えた。

 ちなみに、それを言葉にしなかったのは、ナナミがすっかりステーキを食べることに夢中になっていて、ここで名前を呼ぶと我に返ってしまうと思ったから。

 珍しく気が利くリスティアであった。

 

 

聖女に散々と罵られたが、夜の彼女は意外と可愛い

https://book1.adouzi.eu.org/n2044fb/

新作、投稿を開始してます。勘違いとざまぁと修羅場のコラボレーション。

よければご覧ください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ