エピソード 2ー6 リスティアにとって普通の選択
リスティアとナナミの学校での生活は無事にスタートを切った。いや、無事ではあるが平穏にとは言いがたい。ナナミはそこそこ、リスティアは思いっきり目立ちまくっていた。
そんな訳で、ある日の昼休み。
リスティアがナナミと一緒に廊下を歩いていると、にわかに周囲が騒がしくなった。なにごとかを周囲を見回すと、ドレスを身に纏う少女が注目を浴びていた。
美しい銀髪に、意志の強そうな蒼い瞳。煌びやかなドレスを纏っている女の子は、リスティアが妹にしたくなるような凜とした雰囲気を纏っていた。そんな少女が、同じくドレスを身に纏う二人の少女を従え、まっすぐにリスティアのもとへと向かってくる。
「リスティア様、貴族ですよ。絶対、問題を起こしちゃダメですからね?」
ナナミが耳打ちをしてくる。
「分かってるよぅ……」
言われるまでもなく、理事長からも貴族と揉め事を起こすなと釘を刺されている。だからリスティアは足を止めて、少女が自分のもとにくるのを待った。
「貴方がリスティアかしら?」
「ええ、あたしがリスティアです」
「そう。あたしはセラフィナ・ジュノー。ジュノー辺境伯の娘よ」
銀髪の少女が名乗りを上げた。ジュノー辺境伯と言われてもリスティアは知らない。
けれど、辺境伯というのは主に国境沿いに領地を持つ伯爵で、隣国との国境を護るために大きな力を持っているのが一般的――ということは知っていた。
「初めまして、セラフィナ様。お会いできて光栄です」
「……見え透いたお世辞は必要ないわ」
きっぱりと言い切られてしまった。
綺麗な年下の女の子と言うだけで、会えて嬉しいのは本音なのだけれど……ここで弁解しても、相手は信じてくれないだろう。そう思って微笑みをもって受け流す。
「それで、セラフィナ様は、あたしになにかご用でしょうか?」
「貴方の噂を聞いてきたのよ」
「……噂、ですか?」
「ええ。編入してきて数日で、ずいぶんと活躍しているようね。中でも、剣術や魔術の腕がずば抜けていると聞いているわ」
リスティアは思わず視線を逸らした。剣術や魔術の腕で目立つつもりはなかったのだが、例によって例のごとくにやらかしてしまったのだ。
とは言え、この件についてはリスティアにも言い分がある。
自分より前のナナミを参考にして、ナナミよりちょっぴり凄い程度の成績を叩きだしたら、百年に一人の逸材だともてはやされてしまったのだ。
まさか、私は駆け出しの冒険者ですって言ってたナナミちゃんが、十年に一人の逸材だったなんて……ナナミちゃん、もう少し自分の能力を自覚しようよ――などと考える。
まったく無自覚なリスティアは、他人の振りを見て我が振りを直すことは出来なかった。
それはともかく――
「あたしの剣術や魔術の噂を聞いてきたというのは、どういうことでしょう?」
「――ふん。下賤な平民が、そうやって惚けるのも大概にしたらどうかしら?」
不意に、セラフィナの斜め後ろに控えていた金髪の少女が敵意のある言葉をぶつけてきた。
「……惚ける、ですか?」
「そうよ。貴方、剣術や魔術の実技で、セラフィナ様より評価が高かったからって調子に乗っているでしょう? 平民のくせに、本気のセラフィナ様に勝てるとでも思っているの?」
「え? ええっと……」
なぜそんな話に? と、リスティアはクエスチョンマークを飛ばしまくった。
「ドロシー、止めなさい。彼女はそんなことは言っていないでしょう?」
「いいえ、セラフィナ様。口に出していなくとも、態度を見ていれば分かります。それに、セラフィナ様だって、辺境伯の娘。負けたままではいられないはずです」
「それは……」
セラフィナが言葉に詰まった。
リスティアが調子に乗っている云々は信じていなそうだけど、辺境伯として負けたままでは云々はその通りなのだろう。その顔には、様々な感情が浮かんでは消えていく。
そして――
「たしかにドロシーの言う通りね。辺境伯の娘として、あたしの成績を超えた貴方を、あっさりと認めるわけにはいかない。貴方に勝負を申し込みますっ!」
なぜか、そんな話になってしまった。
◇◇◇
セラフィナ・ジュノー。十六歳。
ジュノー辺境伯の一人娘であるセラフィナは興奮していた。噂に聞く女の子、リスティアがものすごく綺麗な女性だったからだ。
ふわぁ、なにこの綺麗な人! こんなに綺麗なのに礼儀作法は完璧で、剣術や魔術もあたしより上なんて、凄すぎだよぅ! なんて内心で大はしゃぎ。
けれど、辺境伯の娘として、決して他の貴族に舐められてはいけない。そう教え込まれているセラフィナは、そんな内心を抑え込んでリスティアと話をする。
魔術の腕を見せて欲しいとか、もっとお話を聞かせて欲しいという思いで一杯だった。
けれど、内心を見せることの出来ないセラフィナは上手くしゃべることが出来ず、セラフィナを慕っているフローレン子爵家の娘、ドロシーが暴走したことで話がややこしくなった。
貴族が平民の娘に圧力を掛けるなどあってはならない。最初に抱いたのは、ごく真っ当な感情だった。そして次に、リスティアに嫌われたくないと考える。
だけど、辺境伯の娘として負けっぱなしでいられないのも事実。そして、セラフィナ自身が、リスティアの実力を間近で見たいと思っている。
だから、セラフィナはリスティアに戦いを挑んだ。
まずは貴族としての権限で実技室の使用許可と、見届け人の先生を確保。リスティアとその連れ。それに友人のドロシー達を引き連れて移動した。
そうしてやって来た実技室には、かなりの数のギャラリーが集まっていた。先ほどのやりとりを見ていた者達が、友達などを呼んで集まっているらしい。
それに気付いたセラフィナは、リスティアに対して申し訳ない気持ちになる。
実技の試験では、リスティアの方が高得点を叩きだしたということは聞き及んでいるし、素晴らしい実力者なのだろうとも思っている。
けれど、セラフィナは辺境伯の娘として実戦も経験しており、実戦と訓練がまるで別物であることを知っている。そんな自分が、決闘で負けることはありえない。
ギャラリーの前で、リスティアを負かせてしまうことを申し訳ないと思ったのだ。
だけど、ここまで来て止めるわけにはいかないと、セラフィナはルールの確認を始めた。
「試合形式は、木剣と殺傷力の低い攻撃魔法を使っての一騎打ち。有効打を与えるか、相手に参ったと言わせた時点で勝利でいいわね?」
「うん。それで良いよ~」
そう答えるリスティアはどことなく楽しそうだ。これで嫌がっていたらますます落ち込むところだけど、リスティアが嫌がっていないのはありがたい。
セラフィナは、純粋に決闘を楽しむことにした。
手を抜くことなく、全力でリスティアとぶつかりたい。そんな風に考え、決闘を開始したセラフィナは……ある意味では期待通り。けれど、予想とはまったく違う状況に陥っていた。
開幕早々に、セラフィナは木剣を下段に構えて飛びだした。そうして、回避しづらい足下を狙って剣を横凪にする。それは、お行儀の良い剣術ではなく、相手が嫌がる攻撃を繰り返して勝利する。セラフィナが実戦で培った戦術。
リスティアがそれを防ぐには、飛び下がるか剣で受け止めるかの二択。どちらにしても、リスティアの行動を予測しやすくなる。そこに連撃を放って、一気に押し込む予定だった。
けれど――
リスティアはまるでセラフィナの動きを読んでいたかのように、まったく同じ動きで横凪の一撃を放ってきた。その鏡に映るかのような一撃は、セラフィナの剣と真っ向からぶつかる。
かぁんっと甲高い音を上げ、互いの木剣が弾かれる。セラフィナはしびれそうになる指に力を込め、返す太刀で切り上げの一撃を放つ。
実戦慣れしているセラフィナだからこそ、怯まずに繰り出せた連続攻撃。だけど、それすらも、リスティアはまったく同じ動きで弾いてきた。
反動で剣を取り落としそうになったセラフィナは、たまらず飛び下がる――と見せかけ、第一階位の魔法を無詠唱で発動して、リスティアの動きを牽制した。
そうして、追撃に来たリスティアの不意を突き、回避で体勢が崩れたリスティアに反撃の一撃を放とうと剣を握り直す。
だが、リスティアは追撃してこなかった。それどころか、回避すらもしなかった。セラフィナの放った魔法を、視線を向けるだけで消し飛ばしてしまったのだ。
それをありえない――とは言わない。セラフィナの放った魔法は第一階位なので、第二階位の魔法を使えば、容易く消し飛ばすことは可能だ。
けれど、詠唱と魔法陣を省略して一瞬で発動が出来るのは第一階位のみ。セラフィナと切り結んでいたリスティアに、第二階位の魔法を発動する余裕があったとは思えない。
だとすれば、リスティアが使用したのは、セラフィナと同じ第一階位の魔法。
同じランクの魔法で、セラフィナの魔法を消し飛ばした――つまり、魔法の威力がセラフィナの放った魔法と同等以上と言うことになる。
セラフィナはそれをたしかめようと、リスティアから距離をとった。そして、詠唱のみを省略し、自らを中心に魔法陣を展開する。
繊細で大きな魔法陣。小さな魔法陣を一つだけ内包する、第二階位の魔法陣だ。
一般的なのは、目立つ魔法陣を省略し、詠唱のみをおこなう方法。セラフィナがあえて逆の手段を執ったのは、自分の使用する魔法をリスティアに教えるため。
先ほどはスピードをもって相手の不意を突くという戦術をもちいたが、今度は純粋な力比べを申し込んだ形で――果たして、リスティアはその勝負に応じた。
セラフィナが展開したのと同じ魔法陣を、コンマ零秒の遅れもなく展開して見せたのだ。
セラフィナの意図をくみ取り、同じ魔法を使用してみせる。それだけでも頭の回転の速さがうかがえる。そして、模倣であるはずなのに、オリジナルよりも芸術的に美しい魔法陣。
魔法陣の展開はイメージであるがゆえに、手で魔法陣を描くよりはよほど綺麗に描くことが可能ではある。可能ではあるが――それにも限度がある。ここまで綺麗な魔法陣を、セラフィナは見たことがなかった。
なら、その威力は――と、セラフィナは感情を高ぶらせる。
セラフィナが展開しているのは、電撃の魔法。相手に当たれば一撃で無力化する威力を秘めておりながらも、その殺傷能力は極めて低い。
決闘で好んで使用される魔法だが――それは殺傷能力が低いと言うだけではない。
同じ電撃の魔法がぶつかったときに、対消滅が起こらない。より威力の高かった方が、相手の魔法を飲み込んでしまう性質があり、力量を測るのに向いているのだ。
貴方の魔法と、あたしの魔法、どっちが上か勝負よ! と、セラフィナは気合いを入れて、自ら起動した魔法を放った。
けれど――
「嘘、でしょ……?」
セラフィナはその光景を前に、呆然と立ちすくんだ。
セラフィナの放った魔法が、リスティアの放った魔法に競り負けた――からではない。けれど、競り勝ったわけでもない。
二人の放った魔法が、対消滅を引き起こしてしまったからだ。
電撃が対消滅なんて……そんなこと、あり得るの? いえ、実際に起きたのだから、あり得るのでしょうね。だとすれば……二人の魔法の威力がまったく同じだったから、かしら。
互いの威力がまったく同じで、電撃がその場で放電したという仮説を立てる。
その理論が正しいかどうかは分からない。けれど問題なのは、仮説が事実だとして、威力がまったく同じなんてことがありえるのか、と言うことだ。
「分からないなら、たしかめてみるしかないわね!」
セラフィナは、詠唱と魔法陣を使って、自身が使える最高の攻撃魔法――第三階位の魔法を展開を開始する。
魔法陣の展開と詠唱に要する時間はおよそ十秒。そのあいだに第一階位や第二階位の魔法を撃たれたら中断を余儀なくされる。大技を放つタイミングとしては最悪で、セラフィナを応援しているギャラリーからも悲鳴が上がった。
だけど――というか、やはりというか、リスティアは第三階位の魔法を展開した。それも、魔法陣の細部に至るまでセラフィナの魔法陣と同じ、威力だけを上げた電撃の魔法。
果たして――二人が放った魔法は、再び対消滅を起こした。
やっぱり偶然じゃない! と、セラフィナは興奮する。
普通はありえない現象が二回続けて発生した。それが偶然でないのなら、人為的なもの。だけど、セラフィナはただ全力で魔法を放っただけ。
であれば、リスティアが狙って引き起こしたと言うことだろう。
だけど、対消滅を起こす――つまりは、まったく同じ威力の魔法を放つには、相手の魔法の威力を完全に把握し、それに合わせる力量が必要となるはずだ。
セラフィナの魔法を一方的に消し飛ばすよりも、圧倒的な力と技術が必要となるだろう。
そして、それはつまり、リスティアの力量が、セラフィナを凌駕しているということに他ならない。それを理解したセラフィナは――狂喜した。今まで、試験でセラフィナの成績を上回るような生徒はいても、総合力でセラフィナを上回る生徒は存在していなかった。
セラフィナはそれを誇らしいと思うと同時に、どこか寂しいとも思っていた。だけど――いま、目の前に、セラフィナを容易く凌駕する少女がたたずんでいる。
リスティアに、自分よりも強い少女に挑みたい。挑んで、あらゆる技術を使って、勝利したい。そんな激情に駆られた。
「全力で行きますわよ!」
セラフィナは自身に強化の魔法を掛け、リスティアに向かって躍りかかった。
◇◇◇
セラフィナの連続攻撃に、同じ攻撃で対抗するリスティアはご機嫌だった。
そもそも、リスティアの目的は、妹を作ること。そのためにギルドでランクを上げたり、困っている子供を助けたりしようとしているのだ。
学校での潜入調査の依頼を受けたのだって、結局のところはそれが理由だ。
だから、リスティアは普通の女の子であると同時に、周囲から憧れられる程度の実力は示す必要があると思っている。
つまり、リスティアが目指すべきなのは、少しだけ強い、普通の女の子。だから、学校で一番になるわけにはいかない。二番、もしくは三番くらいが理想だ。
それなのに、試験でやらかしてしまったのは失敗だった。けれど……セラフィナは魔法や剣術において、同学年では一番の成績の持ち主らしい。
つまり、セラフィナと良い勝負をした末に敗北すれば、リスティアは学校で二番。ちょっぴり強いだけの、普通の女の子の完成である。
という訳で、セラフィナの攻撃を、まったく同じ攻撃でしのぎ続けたリスティアは、頃合いを見て降参しようとしたのだが――それより先に、セラフィナが剣を収めてしまった。
そして――
「凄いです、お姉ちゃん!」
セラフィナがそう言って、両手を広げて飛び掛かってきた。
剣を収めたとは言え、試合はまだ終わっていない。普通に考えれば、それは攻撃の一環。いや、そうでなくとも、いきなりそんなことを言われて警戒しない者はいないだろう。
そんないきなりで意味不明な行動に対し――
「お姉ちゃんだよ!」
リスティアは両手を広げてセラフィナを抱き留めた。突然の事態に、ギャラリー達は呆気にとられて硬直するが、セラフィナはまったく気にした風もなく、
「えへへ、リスティアお姉ちゃん~」
リスティアの豊かな胸に顔を埋め、スリスリとすり寄ってくる。
お姉ちゃん、お姉ちゃん! 念願のお姉ちゃんと慕う可愛い女の子!
良く分からないけど、セラフィナちゃん可愛いよぅ――と、リスティアは全ての思考を放棄して、セラフィナを愛でることにした。
しかし、そんな幸せな時間は長く続かなかった。
「セラフィナ様、なにをやっているんですか!?」
セラフィナの取り巻き、ドロシーがセラフィナを引き剥がしてしまったからだ。
「え、ド、ドロシーがどうしてここに?」
「なにを言っているんですか、セラフィナ様、最初からいたじゃありませんか」
「そ、そうだったわね。それで、どうかしたの?」
「どうかしたのはこちらのセリフですわ。突然その方をお姉ちゃんなどと、あまつさえ抱きついたりして、一体どうなさってしまったんですか?」
「そ、それは、その……リスティアお姉ちゃんがあまりにも強くて感激してしまったんです」
「まさか、セラフィナ様。彼女に負けたとおっしゃるんですの……?」
ドロシーが大きな声で聞き返した。それを聞いたギャラリー達が一斉にざわめく。けれど、セラフィナは取り乱すことなく、「そのとおりよ」と頷いた。
「本気ですか? いえ、負けたことはともかく、相手は下賤な平民なのですよ? よく見てください、周囲を。彼女を応援しているのはみな、下賤で卑しい平民じゃないですか!」
ドロシーはギャラリーの一角、ナナミ達を指差した。そうして「それなのに、彼女をお姉様などと、辺境伯の娘である貴方が、本気でおっしゃっているんですか?」と捲し立てる。
「それ、は……」
セラフィナはここに来て初めて、困ったような表情を浮かべた。そして視線を彷徨わせた後、「そうだわ」と声を上げた。
「お姉ちゃんをジュノー家の養子にして、貴族クラスに編入させれば良いんです! そうすれば、お姉ちゃんが蔑まれることはなくなりますもの!」
「セラフィナ様、それは、ちょっと……本気でおっしゃっているのですか?」
ドロシーはリスティアに背を向けていて、その表情をうかがうことは出来ないが――相当に困っているのだろう。その声が震えている。
それはともかく――
「という訳でリスティアお姉ちゃん、ぜひあたしの家の養子になってください!」
セラフィナが親しみのある笑顔で、リスティアの両手を掴んだ。
サラサラの銀髪に、キラキラとした蒼い瞳。顔立ちは綺麗で、美人系の女の子。だけど、リスティアを慕う姿は可愛い。
そんなセラフィナが、リスティアをお姉ちゃんと慕っている。
いままでのように、年上のお姉さんという意味ではない。親しみを込めてお姉ちゃんと呼び、養子になってとまで言っている。
リスティアが心から求める、義理の姉妹という関係がすぐ目の前にあった。
そんなセラフィナの視線を真っ正面から受け止めていたリスティアは――
「ごめんね」
セラフィナの手を振りほどいた。
「……どう、して?」
「あたしが出自で差別されるのは気にしないよ。だけど……貴方達のいう下賤な平民には、あたしの大切な人達がいるの。大切なみんなを差別する人達と仲良くは……出来ないよ」
下賤な平民と口にしたのはセラフィナじゃない。けれど、セラフィナは差別が当たり前であるように受け入れ、対策としてリスティアを養子にしようとした。
いくらセラフィナが可愛くても、いくらセラフィナが初めてお姉ちゃんと呼んでくれた女の子でも、ナナミを差別するのなら仲良くすることは出来ない。
シャーロットのように、ナナミやマリアとも仲良くしてくれるのなら、喜んで妹にしたというか、こっちから頼んだくらいなのに……凄く凄く残念だよ。
リスティアはそんな風に考えながら踵を返した。
「リスティアお姉ちゃん、あたしは……っ」
背後でセラフィナが呼びかけてくるが、リスティアは歩みを止めなかった。
そして――
「こ、後悔しますわよ! あたしの手を振り払ったこと、絶対に後悔させて見せます! だから、覚えておいてください!」
背後から響いたのは、セラフィナの捨て台詞。リスティアはそんなセラフィナの言葉を聞きながら、大切なナナミのもとへと戻った。
このお話と同じタイミングで、新作のプロローグを短編としてアップしています。
タイトルは「無知で無力な村娘は、転生領主のもとで成り上がる」
本当の意味で普通の女の子が、転生領主を初めとした規格外の人達に翻弄されつつも成り上がっていく物語です。作者名から他作品に飛べるので、良ければご覧ください!




