Lo97.他人の家で勝手にうろつく幼女達
さて、神帝様のおうちに一週間お邪魔することになったのですが、なんせ悪神との決戦前です。
たぶん命をかけて戦うことになるっぽいので、何かしらやっておかないといけない気がします。(あいまい)
よくわかんないんですけど!(情報不足すぎぃ!)
神帝様のお屋敷のお庭はサッカーボール場4個分くらいの広さです。その中でなんか武装した屋敷の警備のおじさんにユーくんが戦いのアドバイスを貰ってます。
というか警備のおじさん強そうですね? 制服の上からでも分かるくらい筋骨粒々で、顔にキズもあり鋭い眼光、なんか歴戦の戦士っぽさが凄いです。ここは元傭兵の再就職先か何かでしょうか?
うーん、このままユーくんと一緒に修行パートもいいかと思いましたけど、正直ウェダインさんに散々しごかれたのが後を引いてますねぇ。
要するに、ちょっと今日は頑張りたくない日です!(情けないことを堂々と言うな)
では、私に出来ることは何かと思ったんですけど……
うん、情報収集とかどうでしょう!
だって悪神とか何もよく分かんないですし!
この世界の人には常識っぽいんですけど、私は日本人ですからね。この世界のこと未だに何にも分かりません!
とりあえず訳知り顔っぽいサクちゃんに色々聞いてみましょうかね?
「あのー、サクちゃーん」
「……むにゃむにゃ。ここはわしにまかせてさきにゆけぇ……はるまきぃ……にたまご……」
……いや、これ寝てる!? 真っ昼間から縁側ですやすやと!!
しかもかっこいい感じの台詞を寝言で言ってます!どんな夢を見てるんですか!?
春巻きとか煮卵とか食べ物の名前出てますけど、もしかしてそれ人名だったりします!?
すると食べ物系の珍名の持ち主、アンコロモチさんが毛布を持ってやってきて、苦笑しながらサクちゃんを簀巻きにしました。
「あー、寝ちゃったでござるか。活動限界でござるな」
「活動限界ですか?」
「サクちゃん、最近1日20時間くらいは寝るんでござるよ」
「めっちゃ寝ますね!? 赤ちゃんですか!?」
「まぁ深夜にずっと起きてて騒いでることもあるでござるが」
「夜泣きする赤ちゃんですか!?」
すっやすやのサクちゃんはもう起きそうにありません。この赤ちゃんめ。
「えっと、そういう体質なんですか?」
「んー、消耗した神気を回復する為らしいでござるなぁ。神気って基本的に自然回復するしかないでござるし」
「ほえー。じゃあ消耗してたんですかサクちゃん」
「1ヶ月前に大きな戦いをしたのが尾を引いてるでござるなぁ」
1ヶ月前の大きな戦い……たしか【大侵攻】とかいうやつがあったっぽいですね。まぁ私はその頃、異世界に来たばかりでユナさんちに居候してたんで現場を知らないんですけど。
「あの、大丈夫なんですか? サクちゃん」
「ぶっちゃけ大丈夫じゃなかったんでござる。結構力を使ったらしく、一週間ほど丸々寝込むほどだったんでござるが……」
「え、そんなに大変だったんですか!?」
平気そうな顔をしてるので全然そうは見えなかったんですけど、大分大変だったみたいです。
「でもなんか急に起き上がって突発的に『つちのこ探す』とか言って出掛けて行ったでござるよ」
「急ですね!? そして意味不明!」
それで私達に出会ったわけですか。うんうん、よく分からないです。どこからどう話が繋がってるんですか?
「帰ってきたらなんか妙に元気になってたんでござるが、まだ寝足りないみたいでこんな感じでござる」
「あの、大丈夫なんですかサクちゃん。もう一週間後に決戦ですけど」
「まぁ、コンディションを整えてるようなもんでござるよ……たぶん」
アンコロモチさんはそう言いますけど、ちょっと心配ですねぇ。
「そういえば、あのときサクちゃんが持って帰ったツチノコさんどこにやったんですかね? 見かけませんけど……」
「ずっとそこにいるでござるが」
「ほにゃ?」
アンコロモチさんは私の頭を指差しました。
気になって頭を触ると、むにゅりとナニカに指が沈みこみます。髪の毛とは思えないつるつるした触感。え、私ハゲた?
って、んなわけないですよね!?
ぺいっとソレをひっぺがすと、あのとき見たピンクのツチノコが落ちてきました。
うわ、頭に乗ってました!
「いつから私の頭の上に乗ってたんですか!?」
「ずっとでござるが」
「いや、いつからなんですか!?」
少なくともアンコロモチさんと出会ったときには既に……ということですか? そういえばなんか頭にずっしりとするような感触がしてました! 心なしかどや顔してるように見えるピンクのツチノコさん。
……鈍感すぎませんか、私? というか何で私にツッコミを入れないんですか皆さん? こういうの結構スルーしますよね? 何気に傷つきますよ?
「元気でしたか、ツチノコさん」
「……」
「あ、モモコちゃんでしたね」
「……」
ツチノコは喋りませんが、まぁ元気そうなのでよしとしましょう。じとっとこっちを見てるだけです。うーむ、大人しい。
「この子は魔物なんでしょうか?」
「幻獣や神獣の一種でござろう」
「魔物とは違うんですかね?」
「人を襲わないやつは基本的に魔物とは言わないでござるよ」
へー。そんな違いがあったんですね。よく分かりません。
「一説によると、ツチノコは幸福をもたらすと言われるとか言われないとか……」
「あいまいですねぇ。だからサクちゃんはツチノコを求めたんですか?」
「さぁ? サクちゃんは無駄なことも好むので、これも無駄なことかもしれないでござるなぁ」
「無駄ですかぁ」
無駄とか言われてなんかガーンとショック受けてるっぽいツチノコ。この子、人の言葉を理解してませんか? うん、ありえそうですね。なんせファンタジー世界ですし。
そんな無駄なことを考えてると……
「ん」
「んにゃっ!?」
突然声をかけられたと思ったら、ココッテちゃんが私の襟首を掴んでました。び、びっくりしたー!
そしてそのままずーるずーると私を引きずって歩いていきます。
むぅ、いつも唐突ですねぇこの子は。
「どうしたんですかココッテちゃん」
「ん」
ふむ、分かりません。この子あんまり喋らないですからねぇ。
まぁ、連れていきたいところがあるんでしょう。大人しく引きずられておきます。
「チーちゃん氏!?」
「大丈夫ですよー多分」
心配するアンコロモチさんに適当に返事して拐われていく私。アンコロモチさんは私のことを『チーちゃん神様』とか呼んでましたが、縮めて『チーちゃん氏』に改めてもらいました。
うん? アンコロモチさんのござる口調も考慮すると、なんかいにしえのオタクの呼び方っぽいですね?
ずるずると引っ張られる私ですけど、まぁココッテちゃんに連れ去られても悪いことにはならんでしょう。
悪いことになっても全然良いんですけどね。ココッテちゃんは可愛いから全然許します!
ココッテちゃんは広い庭園を勝手に歩き回り、着いたのは立派な白塗りの大きな蔵でした。立派です。江戸時代とかに使われてそうですね。
ココッテちゃんは迷わず蔵の扉を開けます。いや、余所者が開けて良いんですかこれ? 一応聞いてみますか。えっと、そこの茂みとかに誰かいますかね?
「あの、忍者さんがいたら聞いて欲しいんですけど、この蔵って勝手に入って良いんですかね?」
たぶん姿は見えないけど、この屋敷にいるっぽい忍者さんに聞いてみました。まだ姿を見てないし忍者と決まったわけじゃないですけど、こういうところにいるのはきっと忍者です。(偏見)
すると何故か木の上から飴ちゃんが飛んできました。あ、忍者さん木の上にいたんですね。
この飴玉を渡した意図は謎です。えっと、食べていいってことですよね? 私は飴玉の包みを開いて糖分補給しました。柑橘系のフレーバーですね? コロコロしてて美味しいです。
「……うん、飴玉は『丸い』? つまりさっきの『蔵に入ってもいいか?』という質問に対しては『マル』ってことですね?」
思い付きで適当な理屈を言いましたが特に返事も何も無かったのでそういう解釈で良さそうです。
なんですかこの屋敷にいる謎の忍者さんらしき存在との異次元コミュニケーション? 私の脳はついていけるのでしょうか?
「ん」
ココッテちゃんがギイイっと蔵の扉を開けます。中は……灯りがついてますね?
目の前に見えたのは、ずらっと並ぶ立派な武器や鎧です。剣、槍、斧、鎧、盾……なかなか中二心をそそるような装備がずらりと並んでいます。100個以上並んでないですか?
「ここは……武器の倉庫ですか?」
「ん」
「いや、ホントに入っていいんですかここ? なんかお高そうな武器もありますよ? 盗まれたりとか思わないんですか?」
「んー?」
ココッテちゃんがすっとぼけ顔で返事をします。この子、他人の家でやりたい放題ですね?
しかしまぁ、今のところ屋敷の人におとがめ無しですし探索していいってことですか。というかなんで怒られないんですかね? もしかして幼女補正? 私達が幼女だから甘々対応してます?
ありえますね。なんか屋敷の人に挨拶するとお菓子もらえますし。私も幼女相手だと何でも許すので。
「それにしても広いですね。小学校の体育館くらい広くないですか?」
「むー」
「あ、ココッテちゃんには分からないですね。要するに冒険者ギルドの魔物解体場くらいの大きさことです。あそこも広かったですしねぇ」
ハイセイカの冒険者ギルドでせっかくだから解体スキルでも習おうかなって思って気軽に覗いた解体場。
そこでギルドの職員がインドゾウサイズの魔物をめちゃくちゃでかい刃物でギコギコと解体してるのを見て諦めました。あれは重労働すぎますね。重機持ってこい。
まぁそれはそれとして蔵の中を探検です! 私達は幼女なのできっと許される!
あれ、でも最初から灯りがついてるってことは誰かいるんですかね?
そう思って奥に進むと……
なんか抜き身の剣を抱えて倒れてる女性を発見しました!?
エ、ナンデ!?
私は倒れてる女性に慌てて声をかけます!
「だ、大丈夫ですか!? 生きてますか!? よく分かんないんですけど神気送っておきますね!?」
私はポワっと手から神気を出してその人を光で包みました。なんか分かんないんですけど、元気になれー!
すると……
「……あらぁ、『対話』の途中でうっかり寝てしまったようですね……」
剣を抱えた女性はゆっくりと目を開けて危機感の全くないのんびりとした声を出しながら上体だけを起こしました。その腕に抜き身の剣を持ったまま。いや危ないですよそれ!?
「え、えっと、大丈夫ですか?」
「……可愛いらしいお客様ですねぇ。トツカさんもそう思いませんか?」
「……とつかさん?」
なんかこの人、剣に話しかけてないですか?
ちょっとふわふわした人ですね?
髪の毛の色は薄い青紫色。さらりとした長髪をふんわり結っています。どこか神秘的な美少女ですね。
彼女がその長髪を何気ない仕草でかきあげると、先端が竹の葉っぱのようにとがった形をした耳が見えました。
これはもしや……エルフ耳!?
もしやファンタジーの定番種族、エルフですか!?
うわー! 異世界初のエルフきたー! しかも美少女だーーー!!!
「あなたは一体……?」
「あらぁ、そういえば名乗ってませんでしたね。私はヒオウギアヤメと申します。こちらの剣がトツカさん」
あ、トツカさんって剣の名前なんですね。いや、なんで剣を紹介するんですか? まぁ挨拶されたなら返しましょう!
「あの、初めましてヒオウギアヤメさん、トツカさん。私はチーちゃんでこっちがココッテちゃんです。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いしますねぇ」
ほわほわした雰囲気の美少女エルフさんですけど、その挨拶は美しく礼儀正しい感じに見えました。
うーん、美しい。これは幼女だとやられてましたね。相手が美少女で九死に一生を得ました!
すみません。1月は残業がめちゃくちゃ多くて書く気力と体力尽きてました。
今は大分回復したのでぼちぼち再開いたします。うにゃー!仕事しんどーい!でもお金ほしー!




