Lo95.チーちゃん、あんころもちに神様とか呼ばれる
神帝の末のお孫さんは、黒髪童顔巨乳のござる少女でした!
さて、改めてサクちゃんの容姿を確認しましょう。
桃色がかった白い長髪。2本の赤いツノ。身長125cmの和服幼女ですね。ついでに貧乳です。
「えっと……全然似てないですね!?」
「まぁのう」
どうやら全然似てないようです。それに対して、アンコロモチさん(ネトゲのプレイヤーネームみたいな名前ですね?)が理由を述べます。
「当然でござる。拙者は初代様から数えて10代目の子孫。初代様の血も1/514。つまり0.2%ほどの薄さしかないでござる。ほぼ普通の人と変わらんでござるよ」
「モチは小賢しい計算するのぅ」
確かに! サクちゃん成分が0.2%しか入ってないなら仕方ないですね。漫画とかだと『ご先祖様と子孫がそっくり』なのはあるあるですけど、よく考えたらこれだけ離れてたら似てない方が普通ですね。
「そういえばツノも生えてないね」
「それだけ血が薄まればそういうことになるでござる。初代様と違って寿命もかなり短くなっているでござる」
「寿命も短くなってるんですか……」
「今ではせいぜい2~300年くらいしか生きられないでござる」
「いや、めちゃくちゃ長くないですか!?」
普通の人間っぽく見えますけど、結局この子も人外だったでござる。
「モチも今年で40じゃしのぅ」
「違うでござるよ! まだピチピチの36歳でござる!! 4歳もサバ読まないでほしいでござる!!!」
「36歳なんですか!?」
アンコロモチさん、まさかの年上だったでござる!? いや、童顔だから10代にしか見えないんですけど!
「年齢の話はやめにするでござる。同年代が皆結婚してて子持ちとか考えたくないでござる!」
わかります、そういうの。しかしその気になればモテると思うんですがこの子。おっぱい大きいですし。まぁ、私の好みとは外れますけどね。
ふと、こたつの上を見ます。紙とインクとペンがありますね。そして紙には絵が描いてあります。
ふむ、アンコロモチさんが漫画を描くと聞いてましたが、確かに漫画風のコミカルな絵ですね。というかこの世界に来てから見た絵の中で、一番絵が上手いかもしれません。
「絵、上手いですね」
「いやあ、趣味でやってるだけでござるし、まじまじと見られると恥ずかしいでござるよ」
「この絵、ちょっとチーちゃんの絵に似てるような……」
改めて絵を見ると、確かに私の絵柄に寄せているようにも感じます。この世界の絵ってどこか昭和から平成初期くらいの絵柄って感じでしたけど、この絵に古臭さを感じなかったのはそのせいですか。
「わかるでござるか!? 実は最近、めちゃくちゃお気に入りの絵師が出てきたのでそればっかり真似て描いてるでござる!」
「えと、最近出た気に入りの絵師って……」
「『チーちゃん』氏でござる!!」
……私ですか!?
というか最近すぎないですか!?
まだギルドに絵を売ってからそんなに経ってませんよ!?
「いやぁ、チーちゃん氏の描く絵に拙者すっかり惚れ込んでしまいまして。あれほどの絵を描ける人物。ぜひ会ってみたいでござるなぁ……」
アンコロモチさんはうっとりするように言ってますけど、目の前に本人いるんですが!?
「チーちゃんはここにいるよ」
「ん? 何をおっしゃるのでござるか?」
「あ、はい。申し訳ないですが……私がチーちゃん氏です」
「またまた~ご冗談を~。こんな可愛い絵が描ける人が本人も可愛いとか何のギャグにもならないでござるよ~」
いや、ギャグとかそういうの目指してないんですけど!?
でもまぁ今の私はめちゃくちゃ可愛いと思うので仕方ないですね?
「チーちゃん、ちょっと描いてみたら?」
「ファンサじゃファンサ」
「え、まぁ別にいいですけど……」
私は机の上の紙とペンを拝借します。まぁ、サラサラっとラフらしきものを描けばいいですかね。
顔だけ描くならそんな時間かからないですし。
私は一番描き慣れたキャラの絵を描きます。すなわち、自画像に使ってるチーちゃんそのものです。ニコッとさせてピースしておけばいいでしょう。
手癖でシャシャッと描いて完成です。はいかわいい~(自画自賛)
「あなたが神でござったか!?」
描き終わるとアンコロモチさんは心底驚いて、飛び上がった後に見事な平伏を見せました。
「疑って申し訳ございませぬ神様。この愚民をいかようにも裁いてくれて結構でござる」
「ええ……」
「罰としてぜひ足蹴にしてほしいでござる」
「なんでですか!?」
何のプレイに巻き込もうとしてるんですかこの子!?
「と、とりあえず私のことは『チーちゃん』って呼んでくれていいですから。足蹴にするのはまぁ、えっと、背中でいいですか?」
「え、結局足蹴にするの!?」
まぁ、足蹴にしてほしいなら別にいいんですけどね。
……と思ったら、既にココッテちゃんが足蹴にしてました。しかも頭を。
「こらー! ココッテちゃん。神帝のお孫さんに失礼でしょ」
「いや、この子わざわざ履物を脱いで素足で踏んでくれてるでござる。心遣いがなっている良い子でござるな」
「それ心遣いだったんだ」
ココッテちゃんは微妙に気遣いが出来る子です。履物で踏むと頭が汚れますしね。幼女に踏まれるのはご褒美ですよね。
「むっ? この子は人間じゃないでござるな」
「分かるんですか?」
「拙者そういうの分かるのでござる」
アンコロモチさんはココッテちゃんをすぐに人間じゃないと看破してしまいました。なかなか勘が鋭い人なのかもしれません。
「困りましたね……これでサクちゃんに続いて二人目です。今後もココッテちゃんの正体を簡単に見破る人が出てくるんでしょうか?」
「おるじゃろうけど、この国じゃ問題なかろう。儂の国じゃし」
「この国以外だとどうなるんですか?」
「しらん」
多分ろくな目に遭わないですねこういうやつ。きっとアンデッドハンターとかに追い回されるんです。
「ん」
「バレたところで全員返り討ちにするってココッテちゃんが言ってるよ」
ココッテちゃんは見た目に反して、私達の中で一番好戦的かつ過激派ですね。
「毎回思うんですけど、『ん』だけでどんだけ理解るんですかユーくん?」
「まぁボクもよく分かんないんだけど、ココッテちゃんはこれで大体伝わると思ってるから、理解るしかないんじゃない?」
「ん」
「ほら、『いい加減このくらい分かれ』って言ってるよ?」
「いや分かんないですよ?」
「理解るでござる……」
「分かるんですか!?」
なんか初対面のアンコロモチさんが理解る側になって私の立つ瀬がないんですけど!
「まぁそれはそれとして」
「それとするんですね」
「神様! 拙者の絵の先生になってほしいでござる!」
「え、えええええー!?」
初対面なのに突然先生になってほしいとか言われましても!? 私そういうことしたことないし、そもそもプロでもなんでもないアマチュアですけど!?
とりあえずよく分かんないのでユーくんに相談してみましょう!(丸投げ)
「ど、どうしましょう?」
「駄目だよ」
ユーくんは即答しました。真顔です。
「そんなぁ~チーちゃん氏の技法を教えてほしいでござるよ~」
「駄目。今は駄目」
泣きつくアンコロモチ氏に対して、にべもなく言い放つユーくん。うーん、ばっさり。
「えーと、ユーくん……」
「一週間後に悪神と戦うんでしょ。色々準備しなくちゃだろうし、そんなことしてる暇ある?」
「はっ……そうでしたね!」
そうです。今思い出しましたが、一週間後には決戦を控えてました。命が色々とかかってます。今は雑事に構わず、このメインクエストは真面目にやらなければなりません。
「悪神と戦うんでござるか!?」
「そうでござる」
「悪神討伐とはなんと猛々しい……いや、なるほど。チーちゃん氏ほどの神様が参戦するなら心強いでござるな!」
「画力は戦う能力と関係ないですよ!?」
アンコロモチさんの中では既に私は神と化しているようです。どうしてですかね?
「しかしせっかく神と知り合えたのに……うぅぅ」
「じゃあ、こうしよう。悪神討伐が終わったらチーちゃんを貸してあげる」
アッハイ。貸されるんですね私。まぁいいですけど。幼女にモノみたいに扱われるのも悪くないですね?
「その代わりの対価として、この一週間の間、最強の神術士であるサクちゃんに神気の使い方を教えて貰うってのはどう?」
「ほーん儂に……儂か!?」
「うん」
なるほど、これはいい案です! サクちゃんは最強らしいですし、色々教えて貰えると更に強くなれるかもしれません!
「うーむ、友の頼みとあらば儂は構わんが」
「絶対駄目でござる」
サクちゃんが了承しかけたところをアンコロモチさんが止めました。
「どうして?」
「サクちゃんは感覚で適当に語るタイプゆえに、教えるのが壊滅的に下手くそでござる……」
「そうだったんですか?」
「そうじゃったんか!?」
なるほど、サクちゃんは教えるのが下手だったんですね……いや、なんでサクちゃんが今知ったみたいに驚いてるんですか? 自覚無いタイプですか?
「神術については、つたないながら拙者も多少は扱えるでござる。チーちゃん神様に教えるのは恐れ多いでござるが……」
「チーちゃん神!? いや、普通に呼んでいいですから!」
「では、不肖でござりまするが、神帝の末孫たるこのアンコロモチ。この一週間の間、出来うる限りを伝授するでござる!」
アンコロモチさんは謎に心強く返事をするのでした。大丈夫ですかね、この人。
……きっと大丈夫ですね! はい!(思考放棄)




