Lo93.サクちゃんのお屋敷にお泊まりすることになりました!
今更ですけど、ちょっと気になったことがあるので聞いてみます。
「そういえば、首都に入ってすぐサクちゃんに会えましたけど……もしかして私達が来ることを知ってて待ってたんですか?」
「おーそれか。別に待っとったわけじゃないんじゃが……実は儂、ちょっとお主らの位置を知ることが出来る術を持っててのぅ。たまたま近くにおったから会ってみただけじゃなー」
「おお、なんという偶然! まるで運命の再会ですね!!」
「いや、ボクらの位置を知ってて会いに来た時点で全然偶然じゃないよチーちゃん」
……確かに! 全然偶然じゃないですね! 確信犯ですね!!
最近ツッコミに回るようになったユーくん。細かいところによく気が付く良い子になりました。
私のせいですかねこれ?
「それにしても、私達の位置が分かるとはどうやって……?」
「そこは企業秘密というやつじゃ」
「なら仕方ないですね!」
「深く追及してこないのがちぃ子の良いところじゃのう」
「チーちゃんは適当なだけだと思うよ?」
まぁ、別にサクちゃんに位置を知られても私は困らないですしね? 秘密っていうからには秘密なんでしょう。
「ところで、お主らなんでオウカに来たんじゃ? 観光か?」
「あ、そこは知らないんですね」
「てっきりギルドとかから情報がいってると思ってた」
「ぜんぜんしらんぞ儂は」
サクちゃんは本当に何も知らなそうな顔をしています。
ふむ、それではギルドからサクちゃんに連絡いってたから私達の位置が分かったというわけではなさそうですね? 何か他に方法があるんでしょう。
私は胸を張って答えます。
「サクちゃんに会う為に決まってるじゃないですか!」
「おお、儂に会いに!? 嬉しいのぅ!!」
「あとついでに悪神討伐しにきました!」
「なんじゃとー!?」
「そっちついでだったんだ」
サクちゃんは悩むようにむむむっとうなると、言いました。
「そういえば冒険者じゃったなお主ら……」
「うん、ツチノコ探し隊じゃないよ?」
「むむ~~そうじゃったかぁ~~~」
そうです。実は私達は冒険者なんです。
まぁあんまり仕事してないからよく分かんないんですけどね。
ココッテちゃんなんて一度も仕事してないからGランクなんですよ?
……なんか色々な段階すっ飛ばしてないですか私達?
冒険者の駆け出しは薬草採取とかゴブリン討伐とかお使いクエストから始まるイメージあったんですけど、色々ぶっ飛ばしてもう悪神討伐ですからね?
「むぅ、正直難しい気分じゃ。お主らが冒険者としてギルドに認められてきとるなら儂は干渉しないのがスジなんじゃが……」
「何が難しいの?」
「正直、早すぎると思っとる。今のお主らではな」
「むむぅ」
「サクちゃんはやっぱり反対ですか?」
「そこなんじゃよな~。うーむ、どうしたものか……」
サクちゃんは難しい顔で悩みます。おや? てっきり反対される流れかと思いましたが、これは一概に大反対というわけでもなさそうです。
何かしら悩む要素があるのでしょうか?
「あの~私達、悪神と戦ったらやっぱ死んじゃいますかね?」
「うーむ……例えばお主らだけで戦えば確実に死ぬ。悪神とはそういう相手じゃ。じゃが、それは他の冒険者にも言えるしのぅ。AランクじゃろうがBランクじゃろうが死ぬじゃろ」
「……そんなに絶望的なの?」
「じゃから儂がおる。逆に言えばこの国で悪神と直接戦えるレベルなのは、儂一人しかおらん。つまり儂が勝てばお主らは死なん確率もあるじゃろ」
おお、そうなんですね! サクちゃん頼もしい!
他力本願ですけど希望が見えてきましたね!!
「……まぁええか! 悪神は儂が倒すしなんとかなるじゃろ!」
「サクちゃん頼もしいです!」
「ふふん。儂は過去何度も悪神と戦っておるからのぅ! 今回も楽勝じゃ!!」
「そうですね! なんとかなりますね!!」
何度も悪神と戦ってるサクちゃんなら安心ですね!(フラグ
……いや、ちょっとこういう楽勝宣言ってなんか嫌な予感するんですけど。
気のせいですか? フラグの深読みしすぎですか?
「んでお主ら、今日泊まるところとか決まっとるんか?」
「来たばっかりだし、特に決めてないよ」
「ギルドからの依頼ですし、こういうのって泊まるところ提供してもらえるんですかねぇ?」
ここにくるまでの移動費や途中の宿泊先はタダでやってもらえましたし、普通に考えたら残り1週間も何か用意してもらえそうな気がします。よく分かんないですけど。
こういうのウェダインさんに聞いておけば良かったですね。ブートキャンプの影響で他のことを考える余裕ぜんぜん無かったです。
あ、つまり全部ウェダインさんが悪いんですね!(確信)
「それじゃこの家に泊まるといいぞ。ギルドには儂から言っておくからのぅ!」
サクちゃんがウキウキしてるように言いました!
えっ、泊まるんですか!? こんな豪邸に!?
この国で一番偉いっぽい神帝様のおうちですよ!?
私達の身分はただの一般人でDランク冒険者でしかありません。こういうのは遠慮した方がいいですかね……?
「サクちゃんにそこまで甘えるのもちょっと……」
「お主らじゃなくて儂が甘えとんの! せっかく友達が来たんじゃし、泊まってくれんと儂ぁ寂しいぞ!」
「じゃあ泊まります!」
「即断!? まぁボクも別にいいけど……」
「おお、嬉しいぞ!!」
だって、サクちゃんが甘えてきてるんですもん。泊まるしかないでしょう!
あざといな、この国の神帝様めちゃくちゃあざとい。
目に見えるようにウキウキしだした幼女さんはこんなことも言い出しました。
「あとで孫にも紹介しようかのぅ」
「えと、お孫さんですか?」
「お孫さん、何人いるの?」
「2人じゃ。1人は9代目の『今代神帝』。もう1人はその子供じゃな」
2人ですか。意外と少ないんですね? お屋敷が大きいからもっといると思ってました神帝ファミリー。
というかですね……
「あの、現役の神帝様に紹介されるんですか私達?」
「なんか緊張するね……」
「お主ら、儂が『初代』だというの忘れとらんか?」
「でも今は無職なんでしょ?」
「うむ、無職じゃ!」
胸を張って言う無職幼女さん。とてもあざとくて可愛らしいですね。
「とりあえず今代は仕事しとるかもしれんし、先に末の孫にでも会わそうかのぅ」
「おお、末のお孫さん。つまり今代神帝のお子さんですか」
「うむ、あの子も漫画描いてるらしくての。ちぃ子に会うと大喜びするかもしれんぞ」
まじですか? 漫画描いてるんですか末のお孫さん!?
「あれ? チーちゃんが漫画描いてるってどこで知ったの?」
「儂がミミズ倒したときの絵あったじゃろ? ギルドから『この絵公開して良いか?』って聞かれて即オーケーしたんじゃ。作者がちぃ子なのも知っとる」
「なるほど、そういうことでしたか」
肖像権が異世界にあるかは知りませんけど、しっかりサクちゃんに許可取るんですね、こういうことは。
その過程で私の絵をサクちゃんに見られたのは嬉し恥ずかしですね! ちゃんと褒められてるっぽいから良かったですけど。
というか二週間くらい前のことなんですけどレスポンスやたらと速いですね? 私達がのんびり馬車旅してる最中に首都のサクちゃんまで情報が伝わってるわけですか。
馬車より速い何かしらの高速連絡手段があるのかもしれません。
「ちぃ子が儂のこと描いてくれるのめっちゃ嬉しかったぞ。ありがとうのぅ!」
「いえいえ、私は描きたいもの描いただけですし、こちらこそありがとうです!」
しかしサクちゃんの末の孫が漫画描くとは思いがけない情報です。会ってもないのに親近感が湧いてきました!
早く会いたいですね!
ユーくん、当初は子どもらしくボケ担当だったのですが、最近は危機感を覚えたのかツッコミに回ることが多くなりました。
周りにボケが多すぎて、誰かツッコミ入れないと収拾がつかなくなると学習したからです。
人はこうやって大人になるんですね?




