Lo89.ドレンVSチーちゃん!予告しますけど、おそらくチーちゃんの敗北で終わります!!
私は槍戦士のドレンさんと対峙してました。ドレンさんが困惑しながらウェダインさんに言います。
「えーと、マジでやるんスか? オレBランクっすよ? こんな子ども相手に本気でやれるわけないでしょう?」
「そーですそーです! もっと言ってやってくださいドレンさん!」
私はここぞとばかりに声を上げて抗議します。しかしウェダインさんはそんな私の訴えをめんどくさそうな目でスルーして、ドレンさんに言いました。
「なぁ……お前まだ指導が足りねーのか? そうかそうか……」
「いえ! なんでもありません! 喜んでやらせてもらうっス!!!」
ウェダインさんの脅しのような言葉にドレンさんは即座に従いました!
あ、あれ? ドレンさんそんな感じじゃなかったですよね? この人も私とは別メニューでウェダインさんにナニかされたんですかね?
すっかり体育会系の舎弟みたいになってしまったドレンさん。ウェダインさんには逆らえないようです。
「なるべく痛くしないようにするからよ……悪く思うなよ嬢ちゃん」
「ひええ、ご勘弁を……」
槍を構えるドレンさんと棒を構える私。
いやこれ武器の差もすごいですね!? ドレンさんのはBランクだけあってなんか強そうな槍です! 私はただのひのきのぼうです!! 折れませんかねこれ!?
「チーちゃんがんばれー!」
「ん」
なんかユーくんとココッテちゃんも他人事のように応援しています!
ちょっとぉ!? パーティーメンバーのピンチですよ!?
助けようとは思わないんですか!?
「うちのドレンは強いぜ? 気張っていけよチーちゃん」
「貴方なら勝てるわ、チーちゃん!」
なんか【ハンドチョッパーズ】のリーダーのスドーさん(革ジャケットおじさん)とその姪のトゥルカさん(ニセ猫耳お姉さん)が応援してきました。いや貴方たちドレンさんのチームですよね!?
「いくぞ!! 一瞬で決める!!!」
「ひいいぃ!!?」
ドレンさんが突っ込んできました! 槍をぶんまわすように広範囲のなぎ払いです!!
横方向は無理!? じゃあ、下に避けます!!
私はくぐるようにして、必死に避けました!!
「なっ!?」
「えっ?」
気付くと私はドレンさんの懐にすぽっと入ってました。いや近い近い近い!
ドレンさんはびっくりしてます。私もびっくりです!
「えっとぉ……」
「ええい! くそっ!」
ドレンさんは即座に腕で私を払いのけました。私はドテッと地面にしりもちをつきます。あひゃう!
「ど、どうなってんだ……?」
ドレンさんが困惑してると、ウェダインさんが私に向かって言いました。
「おい、相手の懐に入ったらぼけーとせずに攻撃しろ。今ので勝ってたぞ?」
「え、え?」
私は地面にしりもちをついたまま困惑してます。え、今ので勝ってたんですか私?
「チーちゃんすごーい!」
「ん」
ユーくんが声を上げ、ココッテちゃんが親指を立てます。えーと、何が起きたんですかね……
ドレンさんはワナワナと震えています。
「今ので……俺が負けてた? 俺はBランクだぞ? こんな子どもに……? いや、今のは俺も油断してて……」
そんなドレンさんに呆れながらウェダインさんが言います。
「あのなぁ……遠慮なく倒していいって言ったぜ?」
「分かったよ……じゃあこっちも本気でいくぜ!」
「いや、本気出さないでくださいよ!? こんな子ども相手に!! さっきのはマグレですよ! きっと!?」
私はそう弁明しますが、ドレンさんが本気モードになったようです!
ビュンッと風を切る音がします!
今度は斜め!? 下からすくうように!?
「にゅあー!?」
私はぴょんっと跳んでかわします! それを追いかけるように槍が切り返されて追撃が飛んできます!
よ、避けられない!? お父さん棒!!!
私はとっさにお父さんを振るって槍の柄にぶつけます! ぶつかったパワーでは当然非力な私は負けて押し出されますが、むしろそれが狙いです!
押し負けた衝撃を味方にして、あえて吹っ飛びます!
ぴょーんと飛ばされて距離を稼ぐと、ドレンさんが槍を構え直しました。
「おいおい、マジかよ。今のも凌ぐとか……」
「ま、マグレです! たまたま上手く行っただけですよ!?」
「二度もマグレは起きねーんだわ」
そう言ってドレンさんはマジな顔になります。そして、ドレンさんの身体から赤いオーラが立ち上りました。
えっ、界王拳ですか? ドラゴンボールみたいですね!?
それを見てハンドチョッパーズのおじさんとニセ耳さんが言います。
「【闘気】か」
「いやいやチーちゃん相手にアレはないでしょー」
「ガチすぎるだろドレン……」
若干引いてるようにも感じます。ふええ、界王拳じゃなくて闘気ですか!?
一流の戦士のみが使えるというあの伝説の……いや、よく知らないんですけど。たぶん神気と似た感じのやつです!
「流石に大人げないとは思うけどな、使わせてもらう。恨むなよ?」
「いや恨みますよ!?」
「じゃあいくぜ!」
「こないでください~~!!!」
いきなり段違いの速さになったドレンさん。一瞬の間に距離を詰めてきます!
うびゃあ速いいい!! 赤くなったから3倍くらい速い!?!?
横なぎになぎ払われた槍の一撃! 迫り来る槍を避けられない私は、咄嗟に【神気】で身体を覆いました!!
【闘気】には【神気】で対抗します! なんか似てるし、なんとかなると思って!!!
ドゴォッ!!!
なんともなりませんでした!!
なんかすごい衝撃をまともに横っ腹に食らって、私はぶっ飛ばされます。
にゅわー!!!
「チーちゃん!」
心配そうなユーくんの声が聞こえます。
ゴロゴロと地面を転がりボロ雑巾のようになった私は、青空に向かって必死に大声で叫びます!!
「こ、降参! 降参です!! 負けです!!! ハイ私の負けーーー!!! 試合終了ーーーーーー!!!!」
それを聞いてヤレヤレと呆れながらウェダインさんが言います。
「まぁ……これくらいにしておいてやるぜ」
「はひゃああ……ありがとうございます……」
「おら、立てんだろ。転がってないでさっさと立て」
「は、はい。立ちます立ちます」
ウェダインさんに急かされたのですっくと立ち上がると、ドレンさんが驚いたように目を見開いてこちらを見ていました。
「今の……結構強く打ったはずなんだが……?」
「いや、あんまり強く打たないでくださいよ! 結構痛かったじゃないですか!!」
「痛いで済むのか……? 闘気での攻撃なのに……」
いや、ほんとに結構痛かったですからね! もう! 幼女には優しくしてくださいね!?
もっと甘やかしてください!!!




