Lo87.アンデッドキングになりたい邪悪なゾンビのココッテちゃん
ココッテちゃんは話を続けます。
「死者蘇生が出来ない以上、チイはゾンビを量産しない方が良い。救うのは私で終わりにするべき」
「あー……うん、そうだね」
ココッテちゃんの意見にユーくんが同意します。ココッテちゃん、私のことを「チイ」って呼ぶんですね。小鳥みたいでかわいいですね？
そんな考えは露とも出さず、私は真顔で言います。
「私も全てを救うなど傲慢なことは言うつもりはないんですけど……ココッテちゃんみたいな可愛い子なら後先考えずやっちゃうと思いますよ？」
「チーちゃん、後先考えて？」
「チイ、バカだな」
そう罵倒しながらココッテちゃんは私の頭に手を置き、ドレインタッチで私のオーラを吸います。にゅあ～、吸われる～！
久々に吸われたけど……やっぱちょっと気持ち良いかもしれません。デトックスとはこういうことを言うのでしょう？
「とりあえず、今はチイという養分がいるしダイジョブ」
「じゃあ問題ないですね！ 遠慮せずどんどん吸ってください！」
「問題はそこだよね。これでココッテちゃんはチーちゃんからずっと離れられなくなるってこと。ずっとチーちゃん依存の生活が続く」
「……やっぱそこ問題になります？」
「だからココッテちゃん以外のゾンビを増やしちゃダメって言ってるの」
「ですよねー」
要するに、ココッテちゃんとユーくんが危惧しているのはそこなんですよね。ココッテちゃんが神気を補給できなければ魔物に逆戻りするなら、ずっと私依存の生活をしないといけなくなります。私以外に神気を出せる人がいるなら別にいいんですけど、ユーくんの出せる神気の量は私より少ないですからね。
うーん、サクちゃんくらいですかね？ 神気がたくさんありそうな人。ハルテン最強の神術士らしいですし？
「神気以外だとなんか対策ないんですかねー？」
「たぶんムリ。魔瘴に一番効果あるのがシンキ」
「普段ココッテちゃんが使ってる神気はココッテちゃんが生み出したものじゃなくて、全部チーちゃん依存なの？」
「そ。ゾンビはシンキ生み出せない」
「え、そうなんですか？」
「ふじょーだからな」
「ふじょー……不浄ですか？」
「死はケガレ。そゆこと」
すみません、ココッテちゃんの理屈がよく分かりません……死はケガレですか。確かに神道的にはそういう考えもありますけど、仏教だと【即身仏】とかいう死んで仏様になる人もいるくらいですし、なんとかなりませんかねぇ？
この世界の宗教は知りませんけど、全ての死がケガレだと思ってしまうのは早計では？
「私の終わりは決めてある。冒険終わったら、チイと別れて【アンデッドキング】になる」
「え、アンデッドキングになるんですか！？」
「そして全世界をシハイする」
「え、支配するんですか！？ なんで！？」
「面白そうだから？」
「思いっきりやってること魔王側じゃないですか！？」
ココッテちゃんは何を考えてるかわからないレイプ目で言います。この子、めちゃくちゃ壮大な野望かかげてますね！？
「じゃあ、そうなったらボクがココッテちゃんを倒しにいくね！」
「ウム。楽しみ」
あ、楽しみなんですね？ それならオーケーです！
「チーちゃん、わかった？ これ以上ココッテちゃんみたいな邪悪なゾンビを蘇らせちゃ駄目だよ？」
「ココッテちゃんって邪悪なんですか！？ 村の子どもとかに好かれてるし、良い子だと思ってました！」
「チーちゃん、ココッテちゃんに散々酷い扱い受けてるけど感想それ？」
「え、構ってもらえるの嬉しいですけど？」
「うわぁ」
ドレインタッチ受けたり、たまにメリーゴーランドやジャイアントスイングみたいなプロレス技も受けますけど、私は好きなので問題ないですね。むしろもっとやって欲しいです。
「それも魔王を倒したアトのハナシ」
「あ、よかった。魔王はちゃんと倒すんですね」
「マモノは魔王に操られるからな。私は操られるのキライだ」
「え、そうなんですか？」
「さっきシンキが無くなったときも、勝手に身体が動いてた」
ふえー、知らなかったです。魔物って魔王に操られてるんですね？
「操られるってどんな感じでした？」
「頭が塗りつぶされる。ジガが消える」
「自我が消える……催眠みたいなものですか……」
ココッテちゃんは催眠かけられてるからレイプ目なんですね。えっちですね？
「サイミンというか支配。サイミンなら頑張れば拒否できる。支配はムリ」
「ほえー、支配ですか……」
支配もえっちですね。この世界の魔物はえっちでは？
「またチーちゃんが変なこと考えてる」
「えっ、ば、しょんなこと無いですよ！？ ココッテちゃんで変なことなんて考えてません！！」
「いいが」
「え、いいんですか！？」
ココッテちゃんは寛大にも認めてくれました。わーいココッテちゃんだいすきー♪
「私はチイのモノだからな」
「え、えっちですね……？」
「なんか話すのメンドくなった。またしばらく話さない」
「えっ！？ ちょっ！ もっと話しましょうよココッテちゃん！！」
「むー」
「もう元のモードに戻ってる！？」
「これでココッテちゃんはまた10年くらい口を閉ざすことになるね」
「だからどこのミストバーンなんですかココッテちゃんは！？」
まぁミストバーンさんはその後またすぐ話すんですけどね。詐欺ですね。
しかし……色々と考えさせられますね。
私は一度、ユーくんの蘇生に成功してます。心臓が止まっているところからの蘇生です。でもそれは死人が生き返ったというわけではなく、まだ死んでなかったからっていうのが真実でしょう。
そして、ココッテちゃんの蘇生は成功していたように見えて、成功していませんでした。
死んでから日にちが経ち過ぎたってのもあるでしょうし、ゾンビだったってのもあるでしょう。
結局私に死者蘇生はできないということです。というかこの世界に死者蘇生みたいな便利なものは存在しないのかもしれません。
つまり、今後の方針は【いのちをだいじに】ってことです。当たり前ですが。
私の中に『死んでも生き返らせればいいよね』などと楽観的に考えていたところは確かにありました。そこにココッテちゃんは釘を刺してきたのでしょう。
結局は神様のパワー、神気にも出来ない事はあるということです。
魔王討伐の旅。おそらくこの先、死にそうなことがおそらく何度も起こるでしょう。
ならばヒーラー担当の私が必ずこの子たちを救わなければ……みんな死なずに、絶対に魔王を倒してやります！
その為にも、ウェダインコーチから色々と教わらなければいけませんね……いや、走らされてるだけですけどね今のところ。なんだか修行が地味にもほどがありますね？
まぁ神気以外で出来ることが低レベルすぎるので仕方ないんですけどね！
