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幼女勇者チーちゃんの異世界奮闘記 ~限界ロリコンアラサー女がオリキャラ幼女に転生した結果 ><~  作者: オフィ


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85/206

Lo85.ユーくんと一緒に『勇者』になります! あれ、『聖女枠』じゃないんですか私?

「おはよう、チーちゃん!」

「ユーくん、おはようございます!!」


 いつものように挨拶をかわす朝。朝からユーくんは元気いっぱいのようです。


 さて、色々と秘密を暴露してしまって一夜明けました。私が28歳ということもバレてどうなることやら……と思いましたけど、意外にも特に関係性に変化は無さそうです。


 結局のところ、ユーくんはユーくんで私は私です。

 ただ、ユーくんは本当は怖がりなところがあるとか、そんな自分を変えたくて勇者を目指してるとか、そういう心情を知ることが出来て良かったと思います。


 今、ユーくんの顔には笑顔が戻ってます。それでいいじゃないですか。


「ユーくんが元気でて良かったです!」

「うん、ごめんね。心配かけて」

「よく分かんないですけど、解決して良かったです!」

「あー、よく分かってなかったんだ」


 ユーくんは苦笑しながら言います。おや、なんでしょう? 少し大人びた表情ですね……成長したということですか?


「結局ね。色々抱え込んでたんだと思う。たぶんそれは何も解決してないよ」

「え、解決してないんですか!?」

「でもなんかチーちゃん見てたら別にいっかって思って」

「なるほど……んん? なんかよく分かんないですけど、ポジティブになれたんですね?」

「うん!」


 なんかよく分からんがヨシ!ってことですね。

 てゆーか、ユーくんの悩みって多分色々とあって、私が予想してた「ウェダインさんに脅されたから焦ってた」みたいなのも不十分でしたね。

 自分が勇者だと思えなかったとか言ってましたし、今でも火の魔法が怖いとか言ってましたし、なんか色々とあるんでしょう。

 それでも……それでもですよ? ユーくんが笑顔になって良かったです。


「よかったです! ユーくんは私にとって『勇者』ですからね!」

「チーちゃんもボクにとって『勇者』だよ?」

「……あれ、そういえば『聖女枠』じゃないんですか私?」


 今思い出しましたけど、旅に出た頃は一応『聖女』扱いされてましたよね私?


「ううん。チーちゃんは『勇者』だよ。神様に認められたからじゃなくて、ボクがそう思ったから『勇者』だよ」

「て、照れますね……」


 ユーくんが私のことを『勇者』と呼んでくれました。それは『神様に選ばれた(理由不明)』より、私の人となりを知ってから言ってくれたのが嬉しいです。というか、ユーくんに認めてもらえたのがとても嬉しいです。


「というか、チーちゃんを知れば知るほど、『聖女』のイメージから爆速で遠ざかってるし」

「うぇ!? ちゃんと癒し手として頑張ってるのに!?」

「チーちゃん、絶対聖女に向いてないと思う」


 上げて落とされました!? 私、聖女枠じゃなかったっぽいです!


「じゃ、じゃあ私たち二人で勇者ですね!」

「うん! ボクたち一緒に勇者になろうね!」


 そういって合意を得ていたら後ろから頭を唐突にチョップされました。振り替えるとココッテちゃんが不満顔で見つめてます。


「むー」

「え、ココッテちゃんもですか?」


 すみません、あんまり喋らないもんで気付かなかったです……いやーこんな可愛い子を仲間外れにしちゃいけませんね!


「ココッテちゃんも一緒に勇者になろー!」

「んー」


 いやそれ、イエスかノーかどっちなんですかココッテちゃん?

 まぁよく分からないんですけど、ココッテちゃんはいつものように私の頭をポンポンと気安く触りました。可愛い女の子にポンポンされるってご褒美ですよね!

 ココッテちゃんは私の頭を軽く撫でて、とっとと部屋から出ていきました。むぅ、自由人め。


 ……あれ? なんか物足りない感が……はて?

 そう思ってふと、気付きます。


「あ……いま、ココッテちゃん【ドレインタッチ】使わなかったですよね?」

「え、そうなの?」

「はい。全く吸われなくて普通に撫でられただけで終わりました。何でですかね……?」

「うん? 良いことじゃないの?」

「いや、吸われるの結構気持ちいいので別に私は構わないんですけど……」

「気持ちいいんだ……」


 多少ユーくんに引かれた気がしますが、それはそれとして。

 ドレインタッチなしで幼女にただ撫でられただけ……うーん、なんとなく罪悪感ありますね。ただのご褒美じゃないですか。こちらから何か差し出しておかないと等価にならない気がするんですけど。

 ココッテちゃんの意図が読めませんけど……いや、あの子はなんとなくで行動してそうなので深読みしても無意味な気もしますね?



 さて、馬車旅が再開します。

 ウェダインさんがユーくんに話しかけてきました。


「おう、なんか解決したか」

「わかんない!」

「わかんねぇのかよ」


 そういいつつ、ウェダインさんも元気なユーくんを見てちょっとホッとしたような顔をしていました。

 そんなウェダインさんにユーくんが聞きます。


「ねぇ、ウェダインさん。今日も特訓してくれるの?」

「ん? もう対人戦はやめだぜ。混沌魔物(カオスモンスター)相手の特訓にはならないからな」

「えっ、じゃあ何でやったの?」

「そんなんお前らの実力を知る為に決まってんだろ。つまりギルド職員としての情報収集の一環だぜ。手の内教えてくれてありがとな」


 ウェダインさんは悪そうにニヤリと笑います。


「ええっ!? そうなの!? 大人は卑怯だー」

「どうとでも言うといいぜ」

「……でもウェダインさん。それは建前でただの照れ隠しだったりしますよね?」


 私がそう言うと、ウェダインさんが無言で頭をポコンと叩きました。あうっ!


「なんで叩くんですかー!」

「何か叩きやすい位置に頭があったからだぜ……しかしあれだな。普通は子どもを叩いたらそれなりに罪悪感が湧くもんだが、なんかお前の場合全く沸かないんだぜ」


 何気に酷いこと言ってないですか!? 私もしかして、ウェダインさんにも子ども扱いされてないんですか!?


「うん。わかる」

「いや、ユーくんも納得しないでください~」


 ユーくんも良くないことでウェダインさんと意気投合してしまいました。もう! みんなもっと私を子ども扱いするべきですよ!

 こんなに可愛い身体なんですよ!?


「まぁ、一応アドバイスくらいはしとくか。ユージア、お前はもっと一撃の火力を高めたらいいぜ」

「一撃の火力?」

「混沌魔物ってのはどいつも耐久力が並じゃねぇ。たとえ身体の魔瘴を浄化して祓っても、そもそも素で堅いんだぜ」

「それを打ち破る為に火力が必要ってこと?」

「おう。見た感じ、火力じゃお前がチームの中で一番高い。だが荒いな。もっと洗練できるはずだぜ」

「むぅ、未熟ってこと?」

「そうだぜ」


 未熟ですか。まぁ、ユーくんは最近魔法が使えるようになったのでその通りですね。


「ユーくん! 裏を返せば、まだまだ伸びる余地があるってことですよ!」

「でも残り10日かそこらでなんとかなるかなぁ?」

「忘れたんですかユーくん。ユーくんが火の魔法使えるようになってまだ2週間くらいしか経ってないんですよ?」

「あ、そうだね」

「まじかよ。素人もいいとこじゃねーか」

「【男子3日会わざれば刮目して見よ】ってことわざがあります! だから10日あれば劇的に成長するはずです!」

「たしかに!」


 いや、たしかに!とか言ってますけどユーくん男子じゃないですからね? と心の中でツッコミします。

 まぁ前向きに考えると、この短期間でも子供ならたぶんめっちゃ成長できるはずです。少年漫画だと大体そうです。

 テストでもテスト前一週間の勉強ってかなり重要ですしね。残り10日という期間でなんとかなるはずです!


 まぁ大人になると刹那の間に過ぎる時間ですけどね。


「でも結局どうすれば良いんだろ……魔法なんてあんまり詳しく無いし」

「言っとくけど、アタシをあんまアテにすんなよ。一応魔法は使えるが、特殊すぎて参考にならねーぜ」


 え、あなた魔法使えるんですか? 完全に戦士だと思ってました。特殊な魔法ってどういうのでしょう……?


「つーか、魔法ならそこにいるBランク冒険者チームに魔法使えるのいるから教えて貰えばいいじゃねーか」


 そう言ってウェダインさんがBランク冒険者の【ハンドチョッパーズ】を指差します。スドーさんが困惑しました。


「ハァ!? 俺っちかよ!」

「おう。この初心者に色々教えてやれ」

「そんなこと俺らに何のメリットが……」

「教師役を引き受けるなら今回の件で【リトルブレイカー】の貰う報酬の1割分、【ハンドチョッパーズ】に加算してやるぜ。およそ15万センカか」

「えっ、給料天引きされるんですか私たち!?」


 いやウェダインさん勝手に決めてますけど、職権濫用ですよねそれ?

 15万センカって軽く言ってますけど、日本円で1500万円くらいですからね!?


「安い授業料だろ。本来お前らがやる交渉を代行してやってんだぜ? 命がかかってるんだからな」

「た、たしかに……」

「それにこういうのはボランティアでやらせるより、きちんと金で契約しといた方がトラブル少なくていいんだよ」


 おお、そこまで考えてたんですかウェダインさん。勉強になるなぁ。


「で、お前らはこの条件でやるのかやらねーのか?」

「うん、やる! お願いします!!」


 ユーくんは即断即決でした。私も異論ありません。まぁ確かにウェダインさんの言う通り、命かかってると思ったら安い授業料です。


「はー、仕方ねーな。まぁ高い報酬だし、危険も無く15万センカ手に入るのは……ん? これめっちゃ俺ら得してねーか?」

「大分得してるわよ。でもやるからにはちゃんとやるからね! ギルド専属冒険者を介したちゃんとした依頼としてね!」

「おう、乗り気で嬉しいぜ」


 そういうわけでハンドチョッパーズさん達もあっさり合意を得ました。

 それでユーくんは良いとして……


「私とココッテちゃんはどうやったら強くなりますかね?」

「お前はともかく、ココッテは一番伸び代がねーからな……」

「む」

「褒めてるんだぜ? 初日でココッテが不意討ちしてきてアタシが小手で防いだやつあっただろ。あれ、実はかなり追い詰められてたんだぜ?」

「え、そうなんですか? 軽くあしらったものかと……」

「あれが威力高かったら手首もげてたぜ。ぶっちゃけパワーの差でごり押ししただけだ」

「それで伸び代が少ないというのは?」

「ほとんど完成してるんだよ、こいつのスタイルは。足りないのは単純に地力だな。だがこれが一番鍛えるのに時間がかかるんだぜ」


 なるほど。ココッテちゃんはウェダインさんからもかなり高評価のようです。しかしそれゆえに伸び代が少ないとは……

 ココッテちゃんは納得したようにポンと手を叩きました。


「何かわかったの?」

「ん」

「なるほどー」


 ユーくんがココッテちゃんと話して勝手に納得してます。


「……何言ってるんだぜ?」

「良くわかんないけど、ココッテちゃんは大丈夫みたい」

「あ、ユーくんもよくわかんないんですか」

「いや、なんとなく分かったぜ。たぶんこいつは勝手に伸びるタイプだ。アドバイスはかえって邪魔かもな」


 まぁそれならいいんですけど。ココッテちゃんはそういうことにしておきましょう。


「で、私はどうしましょう?」

「走ってろ」

「えーなんで私だけ……」

「お前だけ遅いからだぜ」


 うぅ、今日も私は地道なダッシュ訓練ですよ。ユーくんと一緒に『勇者』になると言ったものの、全然勇者っぽい特訓じゃないんですけど!?

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