Lo8.あれから10年経ち、13歳になった私は……
転生して異世界に来た私は、魔王を倒しにいかずに森の中で出会ったユーくんとユナさんの家の子になりました。
そして……
あれから10年経ちました
3歳くらいの幼女だった私はすくすくと育ち、13歳の美しい少女となりました。
検討に検討を重ねてきた魔王討伐ですが、遂に旅立つ日がやってきました。
……
…………はい、嘘です。
実際は10日くらいしか経ってません。
当然私は幼女のままです。成長するなんてとんでもない。
望まない進化はいつもBボタン連打でキャンセルです。
というか私って成長するんですかね? 私の考えたオリキャラ設定としては『チーちゃんは永遠の幼女』ですけど、この体を作ったアワシマ様がそこまで反映してくれてるのか不明です。
しかしこういうカスみたいな嘘って考えるの楽しいですね。私もユナさんの影響を受けてきたのかもしれません。
「ふぃー……」
私は背伸びをして腰をこきこき鳴らします。幼女なのにおっさん臭い仕草ですか? 低い姿勢を取り続けてると腰にくるんですよねー
はい、ただいま薬草採取中です。
薬草採取っていえば駆け出し冒険者のド定番クエストですよね? それを今やっているわけです。
「結構取れたわねーお疲れ様ー」
「はい、大量です! ユナさん!」
私は背中のかごを見せびらかします。たくさん薬草が入ってます。
現在私はユナさんのお手伝いをしつつ暮らしています。幼女の姿とはいえ、ただ飯食らいではいられません。何でもするって言いましたからね。
何でもすると言ったんですけど、今のところえっちな要求はありませんでした。べ、別に期待してなんか無いですよ!?
右手には刃渡り5cmくらいの小さなナイフを持っています。
幼女の小さなおててで薬草を引きちぎるのは結構しんどいので、刃物で切り落としてます。
ユナさんは小さな子どもでも普通に刃物持たせます。まぁ中身28歳なので扱いには気を付けますけど、私が外見通りの3歳児だったらヒェッとなる光景です。確実に現場猫さん案件です。
ここらへんは異世界では普通の感覚なのか、ユナさんが特殊なのか分かりません。
「しかしこれが薬草ですかー……」
私は採取した薬草をまじまじと見つめます。
ヨモギです。
どう見てもヨモギです。
「お団子に混ぜても美味しいのよねー」
草団子じゃないですか。
やっぱりヨモギですね。
異世界の薬草ってヨモギだったんだ。
ヨモギなので割とそこらじゅうに生えてます。雑草ですからね、こいつら。生命力がクソ強いです。
除草剤もヨモギにかけるときは普段の2倍使いますからね。マジで希少性があんまり無いです。
採取するときは根元からじゃなく、新芽の若い部分を取るのが新鮮で味も良くていいらしいです。どうせまた生えてきます。雑草なので。
ユナさんは調合とか出来るらしくて、このヨモギで下級ポーションとか毒消しを作れるのです。
この前飲ませてもらいましたけど、割と悪くない味でした。ちょっと苦いお茶ですね。全然飲めます。
……これってただのヨモギ茶じゃないですか?
でもそんなヨモギ茶のような下級ポーションを飲むと擦り傷程度だったらすぐ回復するのが不思議です。そこはファンタジーなんですね。
「こっちも取れたよー!」
ユーくんが何か引き摺って駆けてきました。
イノシシです。そんなに大きくは無いですけど50kgくらいはありそうです。ユーくんは自重より重そうな獲物を平然と引き摺ってます。うわ力つよい
イノシシの首とか頭に複数の切り傷があります。腰にあるショートソードで斬ったのでしょう。ちょっと血が毛皮にこびりついて猟奇的です。
「一撃で倒せなかったー」
「あらーまだまだねー」
ユーくんが一撃で倒せなかったことを残念がっていますが、イノシシってとっても速くてしぶといんですよ。普通に考えて、子どもが剣1本で倒すのは無理です。というか大人でもめちゃくちゃ危険です。やはり異世界、私のいた世界とは強さの基準がなんか違いますね。
「必殺剣も習得できないし、まだまだレベル低いから無理なのかなー?」
「えっ、この世界って【レベル】なんてあるんですか?」
レベルって……10日くらいいたのに、そんな話初耳なんですけど?
「ん? チーちゃんのいた世界には無いの?」
「えーと、概念だけはあるというか、お話の中の存在ですかね……?」
「へー、そうなんだ。ふしぎな世界だね」
いやいや、そっちの方が不思議ですよ。レベルがあるなんて、まるでゲームの世界みたいです。でも私が「ステータスオープン!」とか「アイテムボックス!」とか言っても何も起きなかったじゃないですか。
うーん、でもレベルはあるんですねぇ。謎です。どういう仕様ですか?
「ボクまだレベル3しかないんだ。なかなか上がらないんだよー」
「レベルってやっぱり魔物を倒すと上がるんですか?」
「そうだよー」
そこはアワシマ様が言ってた通りのようです。チートを貰えなかった代わりに、自力でチートを得ろとアワシマ様は言ってました。
魔物を倒して経験値を得てレベルアップ。そういう世界です。
……結局魔物を倒さなきゃいけないんですかぁ。ゲームなら喜んでやりますけど、リアルだとなんか嫌ですねぇ。血とか飛び散るんでしょうか?
エロは好きでもグロは苦手なんですよ、私。
「お母ちゃんがレベル4になったら旅に出ていいって言うから、頑張ってレベル上げしてるんだ」
「ふむふむ、旅ってどこに行くんですか?」
「もちろん魔王討伐の旅だよ!」
どうやらユーくんは本気で魔王討伐の旅とやらに行くつもりだそうです。
ふと、
思ったんですけど……
私じゃなくてユーくんが本来の勇者なんじゃないかな!?
ええ、そうです。きっとそうです。さもなくば『10歳の幼女』がこんなに強いはずないです。
……あ、ユーくんのことですけど、正式に10歳の幼女だと確定しました。少年みたいな見た目しているけど、まぎれもなくロリでした。
やはり私のロリコンセンサーは信頼できますね。(だからそんなもの搭載するなと)
どうやって確認したかは……ご想像にお任せします。
ユーくん、もといユージア・フレットちゃん(10)はちょっと無防備すぎるんですよ……何回チラ見せがあったと思ってるんですか……というかお風呂も一緒に入りましたし……
これで私の中身がロリじゃなく28歳だと知られたらどうなるんでしょうか? あまりにも犯罪すぎますね。おまわりさん私です。
正直、ボーイッシュロリは幼女みよりショタ感の方が強いので、ショタコン向けコンテンツだと思ってあまり手を出してなかったんですよね。私は女の子っぽい女の子の方が好きなので。
でもちょっと、描いてもいいかもしれないですねボーイッシュロリ……幼女なのに、男の子みたいな距離感で絡んでくる……ちょっと性癖が広がってしまいました。
それに普段男の子の格好をしてる女の子に、めちゃくちゃ可愛い女の子の服着せる妄想が捗ります。いいですよね……なかなか将来性があります。いずれその機会が来るのを待ってます。
ともかく。
ユーくんが本来の勇者であり、魔王を倒してくれるならば願ったり叶ったりです。私は彼女のサポーターに徹すればいいのでは?
アワシマ様もきっと私をユーくんに会わせる為にここらへんに私を転移させたのでしょう。これは神の巡り合わせ。ええそうです。きっとそんな感じがします。決してアワシマ様はてきとうに初期ポップ位置を決めたわけではないはず(願望)
「頑張って強くなってくださいね、ユーくん! 私も応援してます!!」
「えへへ、チーちゃんありがとー!」
私がユーくんに応援を送ってると、ユナさんが何か考えながらポツリと呟きました。
「……そろそろ、チーちゃんも本格的に鍛えなきゃねー」
え、今何と言いました?
また嘘だったりしませんか?




