Lo63.あれ?なんかまたランク上がっちゃいました?(なろう感)
「【悪神オオイカヅチ】……ですか」
悪神オオイカヅチ。悪の神とはなかなか凶悪そうなやつです。
そしてオオイカヅチ……ネーミングからすると和風ですね。日本由来のやつなのでしょうか? わかりません。
「混沌魔物とは違うのでしょうか?」
「普通の混沌魔物は魔障の濃いところで勝手に生まれるんやけど、悪神は魔王が直々に生み出したやつや」
「アタシも直接見たことはねぇが、伝承に語られる恐ろしい化け物だ。そいつらを倒さねーと世界に平和は訪れねぇ……とか言われてるとか」
「そうですか……かっこいいですね」
「そこでその感想おかしない?」
なんだかよくわかりませんけど、すごくすごそうな気配がしますね。
「本来は魔王やら悪神が出てきたら、それに対抗するように勇者も出てくるらしいんやけどな……」
「そんなんあてになんねーからアタシらでなんとかしなきゃなんねーんだぜ」
「アッハイ」
勇者かぁ……そもそも勇者ってなんなんでしょうね?(哲学)
私も神様からは勇者扱いされてこの世界に来た気がするんですけど、未だに何かの間違いだと思ってます。将来的にユーくんに期待しましょう。
「一応、今聞いたことは口外せんとってな。いずれ戦うにしても未来の話や。今は一般人はなんも知らん方がええ」
「確かにそうですね。なんだか恐ろしそうな存在ですし」
「まぁ、子どもが言っても誰も信じねぇだろうからここで言ったんだけどな」
「はっはっはっ。こんなにかわいい幼女の言葉を信じない存在がこの世にいるはずないじゃないですか~」
「なんやねんその自信」
「お前、表面的には謙虚そうに見えるが神経めちゃくちゃ図太いな?」
「それほどでもないですよ?」
なんかこう、自分でも異世界来て性格変わったなぁと思うんですけどね。
まぁ今の私は地衣小糸じゃなくてチーちゃんですから。あっちにいたときもネットではいつも大体この性格です。リアルでは隠してただけで。
この姿になってから、完全に性格がチーちゃん仕様に切り替わってますね。でも幼女なので許されます。
ヨッツさんの話が終わったタイミングでユーくんが起きました。まだ疲れているのか、眠気まなこで私に聞いてきます。
「話終わったー?」
「終わりましたね!」
「いや終わってへんやろ。とりあえず今後のきみらの処遇について決めなあかんな」
え"? 私たちの処遇ですか?
「あの、私は何もしていません! 潔白です!」
「いや、なんでそうなんねん。逆に何かやっとるんかと疑うわ」
いやつい先ほど、この国の神帝様に天使のコスプレさせてましたからね。不敬罪で逮捕されるかもしれないので、黙っときましょう。
「……とりあえず、二人ともDランク昇格やな。信じられへんけど、ほんまに混沌魔物倒しとるみたいやし」
「おお、Dランクですか!? ……えっと、私達って今何ランクでしたっけ?」
「何で覚えてへんねん! あんたらはFランクや! Eすっとばして2段階昇格やで!?」
「わぁい、2階級特進です」
「やったね! よくわかんないけど!」
よく分かんないんですけど、良いことっぽいので喜んでおきましょう。Dランクですかぁ。高いのか低いのかよくわかりません。
するとウェダインさんが口をはさんできました。
「おいおい、混沌魔物倒せるなら実力的にはBランクはあるだろ? 実際、もっと速く昇格した例を知ってるぜ?」
「そういうやつは冒険者になる前の前歴で、【王直属騎士団所属】とか【有名傭兵団の団長】とかの輝かしい実績があんねん。もし本当に実力がBランクやとしても無理なもんは無理や。実績が全然足りへん」
確かに、前歴なんも無いですね私達。よくいるポッと出の新人幼女でしかありません(よくいるか?)
「それに混沌魔物倒したゆーても、人が見とる前でやったわけやないやん。先日ガロンドはんらを倒した程度の実力しか人前で見せれてへんなら、いきなりBまで上げてもトラブルの元やで」
「えと、ガロンドさんって冒険者ギルドで絡んできた人ですよね? あの人のランクはいくつ何ですか?」
「ガロンドはんはDランクや。せやからDランクまではスピード昇格しても周りも認めてくれるやろ。でもBランクのガイナスはんに完敗しとる試合見られとるのに、いきなりBランク昇格は心情的にも無理あるやろ」
ヨッツさんがそう言うと、ユーくんも納得したようにうなづきました。
「たしかにそうだね。まだボクらBランクに全然相応しい実力じゃないよ」
「……ガイナスとシャイナスはアタシから見ると『なんであいつらまだBランクなんだ?』って思うくらいランク詐欺なんだが」
あ、ウェダインさん視点でもそんな感じなんですね。
やっぱりあの二人はランク詐欺なんですねぇ。あの人達より上のAランクの人はどんだけ強いの?と思っていましたが、そんなことは無さそうです。
「あっちもあっちで『前歴無し、実績無し』で冒険者になっとるんやからしゃーないやん。Gランクスタートってのを考慮すると、超スピード昇格しとるで」
「まぁ過去を秘密にしているって時点で、前職でなんかあって冒険者堕ちしたタイプだな」
「堕ちいうなや。まぁ、荒くれが多いのは確かやけどな」
ふむふむ、過去を秘密にしてるあたり、あからさまに何か事情がありそうですねあの二人。何かっていうと……何かです!(思考放棄)
「ちなみに冒険者のランクって上がると何かメリットあるんですか?」
「正直あんま無いで」
「え、無いんですか!?」
「高ランク向け依頼が受けやすうなるってくらいで、依頼自体にはランク制限とかあらへんしなぁ。極端な話、Gランク冒険者が混沌魔物の討伐依頼受けてもええしな」
「え~、じゃあランク上げるメリットあんまり無いんだ」
「正確に言えば、ランクは重要だがランク”だけ”上げてもさほど意味がないってことだぜ」
「ん?どういうことでしょうか?」
なんだかよくわかりません。普通は低ランクだと受けられない依頼とかあって、そこで主人公は低ランクなのに高ランク依頼をクリアしちゃって、「あれ? 俺また何かやっちゃいました?」って展開になると思ってたんですけど。
ランクとは一体……
「一応、ランク上げることで『実力』と『信頼』っていうのをギルド側で保証しとるんや。あんたらは『実力』はBランク並みでも、『信頼』においては全然浅いやん。そんなんいきなりBランクに上げても意味ないんや。とりあえず、『Dランク並みの信頼はギルドで保証する』って意味で、Dランク昇格なんやで」
「ほえー、色々考えてるんですね」
「あとランクに応じた信頼に応えられんなら、容赦なくランクは下がるで。例えばBランクなのにDランク並みの仕事しかできひん冒険者とかランク詐欺やろ? そんなん依頼者もガッカリするわ」
「キルロード兄妹はBランクなのに明らかにAランク並みの仕事をしてるんだぜ?」
「まぁ、あいつらは近いうちにランク上がるやろ。というか今回のナメクジの混沌魔物を倒しとったら普通にAランクに上げるつもりやったで?」
「あ、もしかして私達、あの二人の昇格を邪魔しちゃいました……?」
「現場にいない方が悪いんだぜ」
……それはそうですね。もし私達が倒さなくても、ウェダインさんの方が先に現場に行ってたっぽいですし。
「ガイナスたちはそんなこと恨まないと思うよ?」
「あ、はい。あの二人ならそうでしょうね」
「まぁ別に急いでAランク冒険者になったからって特権とか無いしな」
「強いていえばAランクとBランクじゃ名乗ったときに周りのビビり方が違うってのが特権やな」
「冒険者はランクで露骨に態度違うんだぜ」
なるほど。冒険者にとってランクってのはほぼ名誉的な称号なんですね。そう聞いて安心しました。
要するに、学歴社会における【東大卒】みたいなものですね。経営者(依頼者)は雇うかどうかは学歴で判断する……みたいな?
今の私たちは、小卒から高卒くらいの学歴にはなれたのでしょうか?
「Dランクになると護衛依頼とか明らかに受けやすくなるで。大体の依頼主がEランク以上希望しとるしな。しばらくはDランクで実績積んどき。あんたらが本物なら……そのうちランク上がるやろ」
「めんどくさいけどなー、護衛依頼。仕事がやりやすいかどうかはマジで依頼主によるぜ? 混沌魔物倒せるなら討伐依頼受けた方がいいだろ」
「めんどくさいのはやだなぁ」
「まぁ、そこらへんはまた考えてみますね」
そう言って話題が落ち着いたところで、ちょっと聞きたいことが出来ました。
「そういえばダンジョンの取得物ってギルドに提出しなきゃいけないんですかね?」
「ぉん? なんか手に入れたんか? 魔物討伐の際に出た魔石とかはランク昇格の実績になるから報告してほしいんやけど、ドロップアイテムは別にランクに影響せんから別にどっちでもええで。買い取りは優先的にやっとるけどな」
「あ、そうなんですか。良かったです」
ミミズの宝箱でゲットしたSSRの天使の輪っかとか、ぶっちゃけ売りたくないですしね。
「チーちゃんはアレのこと秘密にする気なの?」
「いや、言っちゃったらヤバいことになったりしませんか?」
「逆だよ。ヤバいことになるかもしれないから言った方が良いと思うよ。人前で使ったときにどう誤魔化す気なの?」
「うっ、正論です」
ユーくんに諭されてしまいました。この子、本当に10歳児ですか? 頭良すぎるでしょ……
ですが、その考えには穴があることに気付きましたので指摘だけはしときましょう。
「ですけど、それは少し穴がある理論ですよユーくん。報告連絡相談は確かにトラブルの抑止になるかもしれないですけど、もし目の前の二人が極悪人だったら卑劣な手でこれを奪われたりして……」
「あ、それもそうだね。じゃあ喋るのやめるかぁ」
「あんなぁ、めっちゃ聞こえとるんやけど」
「おうおう、アタシら極悪人だぜー?」
「極悪人ちゃうわ!……たぶんな!」
「ちょっと自信無くなってるんじゃねーぜ」
という反応を頂いたところで、私は天使の輪っかを提出しました。
「あ、結局教えるの?」
「はい。まぁ信用できるかどうかはまだ分かりませんが、こういうのもギャンブルですね。とりあえずこれの価値も良くわかりませんし、鑑定してもらうという意味もあります。もしギルマスさん達が欲をかいてこれを奪おうとするなら抵抗しましょう」
「せやから目の前で堂々とそういうの言うなや」
「チーちゃんって人のことを信用してるの? してないの?」
「私は基本的に人間を性悪説で見てますが、幼女に関しては性善説で見てます。今回はまぁ、微妙ですね。ケモポイントでちょっとプラス寄りの評価です」
「ケモポイントってなんやねん」
「チーちゃんって意外と露骨にえこひいきするよね」
「はい!」
「はいじゃないが」
まぁ、私の判断基準が偏ってるのは自覚してますので良しとしましょう。(良くないが?)
あ、もちろんさっきから目の前で堂々と色々ぶっちゃけてるのもわざとです。何かしら反応が欲しくて……いや、たぶんこれ心理的な駆け引きとかじゃないですね。なんか反応欲しいだけですね。てへぺろ
「まぁ、ヨッツさんがサクちゃんの味方サイドだと分かったので、それによる加点もありますね。ヨッツさんはミカド様を裏切れませんよね?」
「嫌なとこ突くわぁこの子」
「えへへ」
「えへへじゃないが」
「んで、一体これはなんやねん」
「まず、これを頭の上に乗せます」
私は輪っかを頭に装着しました。輪っかは私の頭の上でふよふよ浮いています。
そして、私の背中に白い羽根が生えました。
「どうですか?」
「……なんやこれ、どうなっとん?」
「なんか羽根が生えたんだぜ」
「……かわいいですよね?」
「……それがどうしたんや?」
「つまりかわいいということです」
「いや、つまりなんやねん!」
「かわいい。それだけでものすごく価値のあるアイテムだと思いませんか?」
「……それだけなんか?」
「ゴミだぜ」
むぅ、散々な言われようです。これの価値がわからないなんて。とんでもない極悪人です。
「ちなみにこれを身につけると空が飛べます」
「ん? なに言っとん?」
「こういうことです」
可愛さを褒めてくれないので、私はふわっと空中に浮かんで静止しました。
するとヨッツさんがツッコミを入れました。
「は? 飛べるんかこれ!?」
「そりゃ羽根が生えたら飛べますよ」
「おー、すごいぜ」
「なんで先にこれ言わんかったんや!」
「最大の価値はかわいいところだと思いましたので」
「チーちゃんにとって飛べるのは副次効果なんだね」
「いや、別にそこはどうでもいいやんけ!」
さて、反応を見るとヨッツさんは驚いていますが、ウェダインさんはそこまで驚いてない感じです。うむむ、この反応の差はどういうことでしょうか?
「ヨッツさんはこういう不思議なアイテム知ってますか?」
「魔道具か? そら魔法鞄とか色々知っとるけど、空飛ぶ魔道具はあんま知らんな……空飛ぶ箒みたいなんはたまにあるっぽいんやけど」
「あ、普通にあるんだね空を飛ぶアイテム」
「じゃあ可愛いくらいしか差別化できませんね」
うむむ、流石異世界。空飛べるのすごい!って思ってましたけど、あんまり特別じゃないみたいですね?
「いや、あんま無いし殆どが結構な魔力消費するし操縦難しいとかで扱えるやつ少ないで」
「魔法の箒とかと違って体勢維持も楽そうだしな、それ」
「あ、分かります? 割と簡単に空飛べるんですよこれ」
「へー、自由度高いな。両手両足がフリーになるのもポイント高いぜ」
「これってやっぱり価値が高かったりしますか?」
「たぶんめちゃくちゃ高いぜ? 空飛べるってのはそれだけで有利だしな。オークションで出したら高値で売れるんじゃねーか?」
「100万センカ以上は余裕でつくやろな」
「おお、100万センカですか!?」
大体、日本円で1億円といった価値です。すごいですね。えっちな同人誌買い放題です。ぜひ日本円で欲しいです!
「まー、アタシはいらないけどなそれ」
「え、いらないんですか? 空飛べるのに?」
「光輪と羽根が生えるのが普通に恥ずい。あれめっちゃ目立つぜ」
「……かわいいですよ?」
「まぁ、容姿で人を選ぶやろな。おっさんが羽根生やしてもカッコ悪いし」
「むむむ」
なんと、コスプレアイテムとして優秀だと思ってたのにまさかのビジュアル面からの文句が出ました。
「まぁ、逆にアリだろ。お前らは人前でバンバン使って良いぜ」
「えっと、これ高価なんでしょう? これ使って目立つと盗まれたりしませんか?」
「目立つからこそお前らのもんだって分かるじゃねーか。盗まれてもすぐアシがつく」
なるほごー。意外とこういう使うと目立つものは闇ルートで捌くのもしんどいのかもしれないですねぇ。
「それ売るつもりないなら積極的に所有権を主張していけ。冒険者なら高い装備使うことにビビんなよ。高ランク冒険者になると大体みんなクソたけぇ魔道具使ってんだぜ」
「なるほど……一理あるね。相談して良かった!」
「おう、素直なやつは伸びるぜ」
「ウェダインはんはひねくれ者やけどな」
「だから伸びねぇしギルドの犬やってんだぜ。すまんな」
「金章持ちがよう言うわ」
「金章持ちって何?」
「ギルド専属冒険者はランクが無い代わりに実力を示す勲章が与えられることがあるんや。勲章持ちってだけですごいのに、金の勲章持ちはもうめっちゃすごいで。冒険者ランクでいうとAランク相当やな」
「すごい! ガイナス達より上なんだ!」
「おう、その通りなんだが照れるぜ」
このケモかっこいいお姉さん。Aランク相当でしたか。カッコいいだけありますね! すごいなーかっこいいなー
結局、天使の輪っかは私たちのチームでガンガン使う方針になりました。うーん、カワイイが止まらないですね。
売ったら100万センカくらい軽く手に入って億万長者になれるんですけど、そんな大金あっても持て余しますしね。一応、盗まれないように気をつけましょう。
日本で生きていたときは現実では根暗、ネットでは饒舌なチーちゃんでした。今回はケモ二人を前にして饒舌な部分がよく出てますね。
チーちゃんはロリコンですが、ケモポイントは別枠で評価高いんです。




