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幼女勇者チーちゃんの異世界奮闘記 ~限界ロリコンアラサー女がオリキャラ幼女に転生した結果 ><~  作者: オフィ


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Lo62.ハルテンむかしばなし。建国編

 ヨッツさんがこほんと咳払いし、言い放ちます。


「あの御方こそ、ハルテン国最強の神術士にして……前ハルノテンペスト大帝国の初代神帝ミカド様なんやでー!!」

「あっはい」


 あ、前回と同じ台詞を言ってます。大事なことなので二回言いましたか?


「いや、ちょっとは驚こうや! 衝撃の事実やで!!」

「うわあ、びっくりしました!」

「わざとらしいわ!」


 あー、それなんですけど。私の予想では、サクちゃんが神の化身かなんかだと思ってました。ウカちゃんと知り合いっぽい反応してましたしね。

 正体はミカド様ですかぁ。偉い人ってのは分かるんですけど、ちょっとピンと来ないです。


「その神帝ミカド様……サクちゃんって要するに、この国の王様みたいな人ってことですか?」

「全然ちゃうやろ。あんた、この国の人間じゃないんか?」

「あ、はい。歴史については一応昨日ざっと本を読んで勉強しましたけど、よく分かってないかもしれませんね」


 昨日ギルドの図書館で本を読んだ時点でなんとなくハルテン国の歴史は把握してるのですけど、独学ですし人に聞くのとはまた違うかもしれません。

 あと、ぶっちゃけ今日は色々ありすぎて半分くらい読んだ内容忘れてるので、改めて説明をいただけると幸いです。


「はー、まぁええわ。説明したる。あんなぁ、この国に王様はおらへんねん。国の代表は血筋関係なく実力や実績のあるやつから選ばれて任期制で務めるっていう、この世界でも稀な政治形態なのは知っとるか?」

「あ、はい。なんとなく。たしか他の国と違って貴族もいないんですよね?」

「せやで。なかなか先進的やろ?」


 血筋に寄らない政権体制。中世ヨーロッパ風の世界観だと確かに珍しいんでしょうね。

 政治形態としては現代日本の民主主義と似てるようなそうでないような。


「まぁこんな国になった一番の要因は、ミカド様のおかげなんや」

「ほむほむ」

「ミカド様は大陸で迫害されとった人々を連れてこの島に国を作ってくれたんや」


 おお、すごいいい人ですね。迫害されてた人を助けるなんて、サクちゃん聖人じゃないですか。本当にツチノコ探していた幼女と同一人物ですか?


「そこにワイらの種族も含まれとってなぁ。獣人の中でも最高の頭脳とキュートさを併せ持つキツネネコ獣人は、あまりのスペックの高さに周りから嫉妬されまくって迫害されとったんや」

「ええ? そうなんですか? 可愛いって罪ですね」

「いや、嘘だぜ。まぁ、昔のギルマスの種族は大陸じゃ大変だったってのは本当のことらしいんだが」

「……せやで。ワイの種族は獣人の中じゃ弱くて馬鹿にされとったし、見た目は可愛いからヒューマン国家じゃ捕まえられて愛玩動物(ペット)扱いやった。

 人間(ヒト)扱いされんかったんや、キツネネコ獣人はな。そんな当時のワイの種族をこの国に連れてきてくれたのが、他ならぬミカド様やったんや。せやから、ワイらの種族はミカド様に足を向けて寝られへんし子孫代々語り継いどるんやで」


 重い……! ヨッツさんの種族の背負った歴史が重すぎます……! というかクソですね、大陸の人権意識。


「ミカド様自身もツノを生やしてて人間とは違う種族やろ? せやから、差別せずに『様々な種族が暮らせる楽園を作ろう』って言ってこのハルテン国を作ったんや」

「いい話ですね……」

「その後ミカド様は自らを【神帝】と名乗り、国名を【大帝国】にして全世界に喧嘩を売ったんやで」

「えっ、ちょっと急展開すぎません?」


 いきなりすごい展開になってきましたね。サクちゃん、ヤンチャですね……


「まぁしゃーないんやで。当時、迫害されとった人らが集まって国を作ってたら、大陸国家はいい顔せんやん? 自分の国から脱走者が次々に出るし、奴隷は反乱するしで国力が揺らいだ激動の時代だったんや。

 んで、世界の風潮的に【全部ハルテンが悪い】ってことになって、何度も侵略受けたんや」

「ほえええ」

「いつの世も人は醜いんだぜ」

「全部撃退したんやけどいい加減ブチキレてな。二度と舐めた真似はさせんと思てハルテンは世界征服に乗り出したんや」

「世界征服ですか!?」

「一転攻勢だぜ」

「まぁ、迫害されとる種族ばかりいうても、『強すぎて迫害された』みたいな連中もおったしな。それでも全世界相手じゃ流石に分が悪いが、勝てなくても一矢報いてやろうみたいなノリで始めたんや」

「……それだけ覚悟決めてやったんですね」

「そしたら思ったよりミカド様が強すぎて、気付いたら当時の大国の首都ほとんど陥落しとった。獣人の戦士も、エルフの賢者も、ドワーフの武王も、人間国家の英雄達もぜーんぶミカド様にボコられたんやで」

「えええええ……(困惑)」


 思ったよりサクちゃんはハッスルしていたようです。嘘みたいな話にも聞こえますが、あのダンジョンでの強さを見ると本当のことじゃないでしょうか?


「せやからミカド様、ハルテン最強どころか世界最強説あるんやで」

「おいおい、それ言うと『勇者最強原理主義』のやつらに怒られるぜ?」

「勇者は時代によって弱い勇者もおるからアテにならへんやろ」


 えっと、『勇者最強原理主義』って何なんですかね……? 最強議論厨みたいな人達ですか?

 というか、『時代によって弱い勇者もいる』ってまんま私のことじゃないですか? 私を勇者枠にカウントするかどうかは分かりませんが……なんかアワシマ様には勇者認定されてるんですよね


「そのままだとマジで世界征服するところやったんやけど、その後は征服した国も特に統治せず解放。その理由は【統治がめんどくさいから】っていうのは有名な話やな。

 あとは大陸国家と不可侵条約結んで、国名を【ハルノテンペスト大帝国】からただの【ハルテン国】に変えて島国に戻ったんや」

「いっそそのまま世界征服完遂したら面白かったんだぜ」


 うーん、どうでしょうか。やっぱ本人が統治めんどくさがってるなら無理じゃないんですかね、世界征服。私はそれで良いと思いますよ。


「ミカド様自身は神帝を引退して、政治とかにあんま関わらんようになったが権力だけは持ち続けて、大好きな温泉の開発に精力を注いだりしたとか……」

「自分のありあまる権力を温泉に……素敵ですね!」

「つまりまぁ、ミカド様はそんな感じの人や。よう分かったか?」

「よく分かんないんですけど、すごいってことはわかりました!」


 なんだかサクちゃん、思ったよりすごい人なんですね。あのツチノコを一緒に探した日々が遠いことのように感じます。今日の出来事ですけど。


「本当にすごかったんですねサクちゃん。見た目あんなに可愛い幼女なのに……」

「それも不思議な話でなぁ。昔の肖像画じゃミカド様は背の高い女性として描かれとるんや。今みたいな幼女の姿になったのは、神帝をやめてかららしいんやで」

「え、サクちゃんって偽ロリなんですか?」

「偽ロリってなんやねん。本人いわく、今の姿になったのは【老化】の影響らしいで。ってどっかのインタビューで書かれとった」

「え、なんで老化でロリ化してるんですか!?」

「そういう種族なんやろ……たぶん」

「そういうもんなんですか!?」


 それで納得できるもんなんですかねぇ、この国の人たち? 他にそういう種族いるんですか? いや、ロリ化するのはいいことですけど。


「もっとも、それでチャンスと思った大陸国家がまたハルテンに侵略してくるんやけど、幼女化したミカド様にもボコられて逃げ帰っとるんや」

「幼女になっても全く弱体化してないんじゃねぇかともっぱらの噂だぜ」

「じゃあなんで幼女化したんでしょうか?」

「わからん。ハルテン七不思議の1つやで」


 ふむふむ、なるほど。そういうことですか……はて、どういうことですかね?


「あのー、今の話じゃサクちゃんはどこから来た何者なのかがよく分からないんですけど……」

「あー、それは諸説あるんやで。この世界に顕現した現人神(あらひとかみ)いわれとったりな」

「よその国だと悪鬼だの邪神の眷属だの眉唾な話もあるんだぜ」

「……諸説あるんなら仕方ないですね!」


 私の予想だと、サクちゃんは日本の神様だと思うんですけどねぇ。ウカちゃんのことを気やすく扱ってましたし。

『神様はこの世界には干渉できない』とかいう決まりごともあるっぽいですけど、なんか上手く突破してるんでしょう。知らないですけど。


「で、ミカド様は何でダンジョンに潜っとったんやろ?」

「あ、ツチノコを見つけに行ってたらしいです」

「は? なんでやねん」

「私にもよくわかりません」


 ヨッツさんがクソデカため息をつきました。


「もしかしてそれミカド様ちゃうかもしれへんな……」

「それだと結局このデカ魔石の混沌魔物は誰が倒したんだぜ?」

「じゃあやっぱミカド様かもしれへんな……」

「というか年寄り世代はミカド様神格化しすぎじゃねーか? ミカド様だってツチノコ掘りくらいしてもいいだろ」

「うっさいわ、年寄りちゃうわ。まだピチピチの50代やぞ。というかツチノコ掘りってなんやねん。それタケノコや」

「いや50代はピチピチじゃねーだろ」


 え、50代!? 結構中年だったんですねヨッツさん……獣人って見た目であんまり年が分かりませんね。可愛い小動物っぽいケモ度なので尚更です。


「あ、そうだ。お前らも混沌魔物倒せるくらいには強いんだろ? たぶん近々、招集がかかるかもしれないから覚悟しておいた方がいいぜ?」


 ウェダインさんが思い出したように言いました。招集とは一体? なにかおだやかじゃない話題な気がします。


「招集ですか? 一体何の……?」

「……【大決戦】が始まるんや。この国の存亡に関わる……いや、下手したら世界の存亡に関わる戦いや」

「大決戦? 世界の存亡に関わるほどの……一体、何と戦うんですか?」


 私がおそるおそる聞くとヨッツさんは重々しく答えました。


「……【悪神(あくじん)オオイカヅチ】。魔王が生み出した災厄の化身。世界を滅ぼす最凶の魔物【悪神(あくじん)】の一柱や」

【キツネネコ獣人】

キツネとネコの容姿を併せ持つ可愛らしい小さな獣人。外見はフェネックに似ている。だが、『キツネの獣人はずる賢い』とか『ネコの獣人は自分勝手すぎる』という風評被害が出回っており、両者の特徴を持つキツネネコ獣人は結構嫌われていた。

頭脳は脳筋ばかりの獣人の中では特に優れており、種族的に賢いと言われるエルフや人間を上回る個体も多いが、戦闘能力はクソザコ。

大陸の人間国家では愛玩動物(ペット)扱いでよく捕まえられていた悲惨な歴史があるが、ハルテン国内では割とアイドル扱いで人気の種族。商人をする個体が多い。

ヨッツさんがギルドマスターまで出世したのは愛嬌とずる賢さから。他の種族からは年齢がバレにくいのを利点にして、中年になっても愛嬌をバラまいている。ギルマスなのにたまに受付嬢やってるのもそのため。汚いな、キツネネコ獣人汚い。

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