Lo48.第三層到着!そしてなんかヤバそうな気配がするんですけど、行かなくちゃ駄目ですか!?
前回のあらすじ。
ウカノミタマ様は東北イ●コに激似でした。
遺跡を抜けて第三層に向かうと、そこはまたしても森でした。ですが第ニ層の針葉樹林と違って、森全体が紅いです。
「紅葉ですね。綺麗です!」
「なんかここだけ秋みたいだね!」
「風情があるのぅ」
見事な紅葉ですばらしい景観ですが、やはりダンジョン。こういうところにも魔物はいるらしく……
突然バキバキっと木々を倒しながら凶悪な様相の赤毛の熊が現れました!
両腕の肘の部分にツノみたいな突起物があります!
「気をつけてください! Dランク魔物のブラッドボーンベアです!」
「おお、チーちゃん物知り!」
「昨日読んだ本に載ってましたからね!」
魔物もDランクになると1層のGランクよりずっと強そうに見えます。
熊はそのまま突進してきました!
速い! そしてデカい!
まるでトラックのようです!!
ユーくんにぶつかる! と思ったところで、ユーくんはひらりと空を飛んでかわし、熊の背に乗りました!
「いくよー! お母ちゃん直伝の一刀両断剣!」
そう言うとユーくんの剣が光りました。神気の光です!
ザンッ!!!
熊の背からユーくんが振り下ろした剣は熊の首をザックリ切り落としました!
頭を失った熊はそのまま木に衝突して止まり、やがて消滅していきました。
「すごいです! Dランク魔物も一撃ですか!」
「えへへ、必殺技使ったけどね」
今回ユーくんが使ったのは、神気を使った一撃です。魔法剣の必殺技とは違いますね。
「魔法ばっかりじゃなくて、こっちも頑張ろうと思ってるんだ。せっかく使えるようになったんだからね」
「たしかそれ、魔法とは違うんですよね? よく分かんないですけど」
魔法は魔力を使いますけど、神術と呼ばれるものは神気を使います。
私は神術が使えますが魔法は使えません。一方、ユーくんは両方使えますが、明らかに魔法の方が得意です。
正直、何が違うのかよく分かりませんね。どちらも不思議な力ですので。
「ほー、やるのぅ」
ハッ!?
サクちゃんがユーくんを見てなんかつぶやいてます!
そういえば神気使えるのって魔法より珍しいんでしたっけ?
私はそしらぬふりでサクちゃんに聞き返します。
「えーと、何かありますか?」
「ん、なんにもないぞ。やるのぅと思っただけじゃ」
「そ、そうですか」
なんか意味深な反応です!
私が意識しすぎなんでしょうか?
「それより、気付いとるかこの気配?」
「え、気配?」
なんか突然サクちゃんが言い出しました。私の代わりにユーくんがそれに対して返します。
「うん。なんだろう。すごく嫌な感じする」
「……おるなぁ。あっちの方か」
二人とも、何か気付いてる風です!
な、何がいるんですか!?
「ちぃ子は鈍感じゃなぁ。もっと感覚を研ぎ澄ましてみよ」
「え、研ぎ澄まし……? や、やってみます!」
こうなったらチーちゃんイヤー発動です!
説明しましょう。
チーちゃんイヤーとはケモミミをピンと立てることによって感覚を研ぎ澄ますような感じはしますが、特に意味は無い行動です!!
そうやって感覚を研ぎ澄ます感じのポーズをしてたら、突然ゾワリと身がよだつような悪寒がしました。
「うぇっ!? な、なんか感じます!?」
「うむ、ようやく分かったかの」
ポーズだけのチーちゃんイヤーでしたが、何故かなんらかの気配を察知できてしまったようです!!
というかなんでさっきまで気付かなかったんですかね!?
ヤバい空気ビンビンじゃないですか!!
例えるなら、高所で捕まるところもなくフラフラしてるときに感じるような悪寒ですね!
要するになんか怖いです!
「ど、どういうことですか? ダンジョンは神様の作ったもので安心安全設計じゃないんですか!?」
「残念ながら、安心安全とかそんなものはないんじゃ。というか危険地帯じゃからな」
「そうなんですか!?」
ダンジョンのことを勝手にアトラクションくらいだと思ってましたけど、何やら話が違うようです。
騙しましたね!?
いや、別に騙されてはいないんですけどね? 私が無知なだけで。
「とはいえ、こういう異変は滅多に起こらんのじゃが。少なくともこのダンジョンじゃ数十年聞いたことないのぅ」
「それってめちゃくちゃ運が悪いってことですか?」
「逆じゃ。めちゃくちゃ運が良いわい。ちょっくら見に行こうかのぅ!」
そう言ってサクちゃんは歩きだしました。いや、正気ですか? めちゃくちゃヤバい感じするんですけど!
「ボクもいくよ!」
「ユーくん!? 大丈夫なんですか!?」
「それは見てから考えよう!」
「そんな台風のときに田んぼを見に行く農家みたいな……」
君子危うきに近寄らず。
そういう諺があります。危ないことには近付かないのが大切という教えです。
正直私は反対ですが……
「チーちゃん。ダンジョンの外は人の住んでる街だよ。危ないことを見逃したらもっと危ないかもしれない」
「で、でも街にはガイナスさん達もいますし、一旦戻ってからでも」
「ガイナス達は朝から出掛けてるよ?」
「そうなんですか!?」
「ごめん、特に言う必要もないかなって思って。今朝のチーちゃんお寝坊だったから」
はうぅ、確かに今朝の私はお寝坊でした!
だって、早起きする必要も無いって昨日で分かりましたし、ちょっと夜更かしして絵とか描いても良いかなーと思って……
その間にユーくんはガイナスさん達と会って挨拶してたってことですか!?
うぅ、しっかりしてますね。自分が情けないです。あんまり夜更かししないようにしましょう!
「分かりました! とりあえず、何があるか確かめるだけ確かめて、駄目そうだったら逃げましょう!」
「勇ましくも情けない発言じゃのぅ」
私の発言にサクちゃんは容赦なくツッコミます。うぅ、だって怖いんですもん。最初に遭った鹿さんのトラウマはなかなか消えません。
「ボクはチーちゃんのこういうところを信用してる。お母ちゃんが言ってたよ。チーちゃんは【臆病】と【勇気】を両方持ってるって」
「そ、そうですかね~?」
「なるほどのぅ」
な、なんか照れますね。私のこういうところ、基本的に馬鹿にされてばかりでしたからね。
そしてヤバい気配がある方へ向かおうとしたとき、その方向からドタドタと慌ただしく足音が聞こえてきました。
「や、やべぇ! やべぇよ!! なんじゃありゃあ!!」
「あんなのが出るとか聞いたことねーべ!!」
「リーダー、大丈夫か!! リーダー!!!」
走ってきたのは冒険者でしょうか? 体格の良いドワーフ4人組が1人を担いで走ってきます。
「駄目だ、意識がねぇべ!」
「くそがぁっ! なんであんなんがいるんじゃあ!?」
「リーダー! リーダー!! 返事をしとくれぇ!!」
担がれてるリーダーらしきドワーフの身体には、ドス黒い魔瘴が絡みついています。
見覚えがあります。これは……
「やはり混沌魔物……」
「うん……」
混沌魔物。
全身を魔瘴に覆われた狂った魔物。
大地を黒く汚染する災害。
あれがまた現れたということですか?
ドワーフ冒険者のおじさんが、こちらを見てギョッとしました。
「お、おい! あんたら!? この先は危ねぇべ!!」
「というかなんでダンジョンの中にこんな子どもがおるんじゃあ!?」
「はよぉ逃げんか! あの化け物がくるぞい!!!」
ドワーフおじさん達が私たちに向かって言います。そりゃ心配ですよね、こんな子どもの見た目ですから。
でもね、中身は28歳の大人。やるべきことはやりますよ。
「あの! その人、少し見せてくれませんか? 治せるかもしれません!」
私はドワーフの冒険者さん達に言います。ドワーフさん達は面食らったように、顔を見合わせました。
「おめみたいな嬢ちゃんが何も出来るとは思わねが」
「ふざけんじゃねぇ! おめえらさっさと逃げんかい!!」
口汚くぶっきらぼうで否定的な口調ですが、根は悪い人たちではなさそうです。自分たちが大変なのに、こちらの心配をしてきました。
とはいえ、問答をするのは得意ではありません。余裕もなさそうですし、やることをちゃっちゃとやってしまいましょう。
「失礼します!」
私はドワーフさんの担いでるリーダーらしきおじさんに近付きます。
酷い状態です。
顔が半分溶けています。金属鎧も腐食したかのようにボロボロです。
これは……強酸? それとも猛毒ですか?
なにか紫色の液体が全身にかかり、シュウシュウと音を立てています。
液体は担いでるドワーフさん達にもかかって服や鎧を溶かしていましたが、そんなの関係ないとばかりにしっかり抱えていました。
大事な仲間なんですね。
「お、おいあんた何するつもりだ」
「あ、あぶねぇべ! この液はやべぇ! あんたも溶けんべ!!」
ドワーフさん達が何か言っていますが、私はそのまま近付き、気を失っているリーダーさんに触れました。
……まだ体温はあります。きっと大丈夫です。
私は神気を高めます。白いオーラが私の全身を覆いました。
リーダーさんに纏わりついている黒い魔瘴が、私のオーラに触れてだんだんと晴れてきます。
やはり、なかなかガンコな魔瘴ですね。ユーくんを助けたときを思い出します。空気中に漂っている黒い魔瘴とは違い、人体を覆っているのはまるで呪いのようです。
私はありったけの神気をリーダーさんに流しました。
勢いよく出た白いオーラが黒い魔瘴を洗い流していきます。
「な、なんじゃ!? 何をしとるんじゃあこの小娘はぁ!」
「わかんねぇけど、なんかすげぇべ!」
白いオーラに押し流されて、魔瘴は消えました。ですが、まだ酷い状態です。
謎の毒液がリーダーさんを溶かしてましたからね。顔が半分ケロイドのようになっています。
毒液を消さなくては。
私は毒液が消えるように念じます。
すると、リーダーさんの身体にかかっていた謎の毒液も、まるで蒸発するかのように消えていきました。
「な、なんだ!? 毒液が消えていくぞ!?」
「ホントだ、ヒリヒリしなくなったべ!?」
もしかしてこの毒液、物質ではないのかもしれません。
実は私の神気は物理にはあんまり効果が薄かったりします。その反面、魔瘴や魔法的なものにはものすごく効きやすいんですよね。
この毒液も魔法的なものなのでしょうか?
ともかく、毒液が消えたので怪我の治療です。
酷い火傷のように溶けてただれた肌が癒えるように念じます。
すると神気は性質を変えて、傷を治し始めました。
シャイナスさんには、神気の使い方のことを色々と教わりました。
シャイナスさんいわく、この力は【願い】に応じて発揮されるようです。
私が強く願えば、傷が癒えたり、結界を張れたり、様々な力を発揮するようです。
今までなんとなくで使っていた力ですけど、今はきちんと願いながら使っています。
ドワーフのリーダーさんの傷が癒えますように、と。
すると、ケロイド状に溶けた肌がだんだんと元に戻り、健康的な肌になっていきました。
「な、なにが起こったんじゃあ!?」
「き、奇跡だべ。いま奇跡が起きたべ!!」
やがて、リーダーさんが意識を取り戻し、パチリと目を開けました。
「……三途の川でバニーのネェちゃんが手を振ってたぞい」
開口一番なに言ってるんですかこのおじさん。
「リーダー!!」
「良かった! いつものリーダーじゃあ!!」
「ほんと良かったべ!」
あ、いつものリーダーさんだったんですか。それは良かったです。
なんですかこのドワーフ集団?
「……お嬢ちゃんが助けてくれたんかい?」
「あ、はい」
「ありがてぇ。本当にありがてぇ。お前さんにはお礼を何度言っても足りんわい。あのままじゃわっちは確実に死んでたぞい」
「いえ、無事で良かったです!」
とりあえずなんとかなったようで良かったです!
しかし今回は浄化→解毒→回復の3ステップを踏みましたけどなかなかめんどくさいですね。1ステップで全て治るようにしたいです。
まぁ、回復するのって怪我人がいなければ練習できないので、修行もなかなか難しいところですが。
「しかし、こんな怪我をするなんて本当に怖いですね……やっぱり倒しに行くのはやめた方がいいんじゃ……」
ユーくんが毒液を浴びて無惨に死ぬ想像をすると怖くなりました。毒使いは厄介だというのは、ゲームの世界では常識です!
「いや、やっぱりいくよ」
「本気ですか!? あんなの浴びたらひとたまりもないですよ!!」
「……えっと?」
「だって何の対策も無しに行っちゃうと毒液で死んじゃいますよ! 人を溶かす毒にどうやって対抗すればいいんですか!? 勝算はあるんですか!?」
「チーちゃん。それさっきチーちゃんが解決したよ?」
「へ?」
えっと、どういうことでしょうか? だって毒はどう考えても危ないですよ?
「えっと、私ごときが身体も鎧も溶かす毒液にどうやって対抗しろと……?」
「のぅ、ゆーじろー? こいつさっきからツッコミ待ちなんかのぅ?」
「チーちゃんってホントそういうとこあるよね」
え、どういうことですか?
お二人には何か秘策があるのでしょうか?
全然わかりません!!!




