Lo44.はじめての遠足(だんじょん)!
ギルドでメンバー募集はかけて一晩経ちましたが……
だ れ も き ま せ ん
はい、やっぱり無理ですね! 高望みすぎましたか!
たぶん【12歳未満】って項目が一番足を引っ張ってますね!!
でも変な大人が入ると悪いことされる可能性もあるし、ロリってのは外せないですよね?
そこに決してやましい気持ちはないです! 本当です!!
チームの安全を考えた結果です!!
たぶん! ぜったい!!
結局誰も来なさそうなので、とりあえず2人でダンジョンに向かうことにしました!
ナス兄妹がたまたまギルドに来てたのでダンジョンに行く旨を相談すると、
「いいんでね? 二人でも平気でよ」
「むしろダンジョン自体より、ダンジョン内にいる冒険者に気をつけろ。前にも言ったが、冒険者は民度が低いから何をしてくるかわからん」
「そんなときはばこーんとぶちのめせばいいんでよ」
そんな感じの返事が返ってきて、ダンジョン自体はそこまででもないって感じでした。
「とりあえず日帰りで潜れるところまで行きましょうか。今日のところは行き3時間、休憩1時間、帰り3時間という感じで終わりましょう」
「うん! お弁当用意しなくちゃだね!!」
完全にピクニック気分です。こんなんでいいんでしょうか、ダンジョン攻略って。
時間については適当に決めましたが、まぁ休憩ありの6時間労働です。日本だと8時間労働が最低限みたいな感じですからね。実際は残業込みで10時間労働はザラです。そういった労働に比べると楽だと思います。
ヒャッハー! 日本の労働は地獄だぜー!!
一応、前日にダンジョンに必要そうなものも市場で買っています。とはいえ、ほとんど旅に出る前に用意したものだけで足りてるんですけどね。ランプとか、火起こしの道具とか、野営道具とか、元々持ってます。
装備についてはユーくんはユナさんから貰った【魔剣ユナ・ブレード】と【なんかよくわからない素材の革鎧】が良い物っぽいですし、私もこの【お父さん棒】に愛着があるので装備の更新はしませんでした。
せいぜい、食糧と水を買い足したくらいでしょうか?
なんか金のかからないPTですね? ドラクエ3の武闘家のようです。まぁ、お金は大事ですし温存しておきましょう。
一応、魔物図鑑くらいは目を通してますけどどうなることやら……
ダンジョンは街の外れにあります。そこは二重の外壁で覆われていました。
なかなか堅牢そうな壁ですね。これだけの壁に囲まれるということは、ダンジョンの中から魔物が出てくることもあるのでしょうか?
ダンジョンの外には鱗鎧の狼っぽい赤毛の獣人の女性が立っていました。体表は全て毛に覆われていてケモ度は高い見た目ですが、骨格は人間に近いです。ケモ度60%と言ったところでしょうか?
すぐ近くには小屋があり、そこにも人がいるっぽいです。交代制ですかね?
獣人のお姉さんはこちらに気付くと声をかけてきました。
「んお? お前らか」
「こんにちは!」
「こんにちは。あの、私達をご存知なんですか?」
「おー、先日ギルドであった乱痴気騒ぎを見ててなー。なかなか面白かったぜ。一応、アタシギルド職員やってんだ。派遣だけどな」
職員さんでしたか! それで先日の決闘を見ていたと。しかしそれにしてはなかなか強そうな風貌ですね。冒険者さんだと思いました。
「あの、派遣とは?」
「この国の首都に冒険者ギルド・ハルテン本部があるんだよ。そっから何人か送られてんのよ」
「なるほど……強そうだね、お姉さん!」
「お? 理解ってんねぇガールズ。アタシは強いぜ~。ちょっと前にあった【大侵攻】の討伐隊にも入ってたしな」
【大侵攻】……ガイナスさんが前に言ってた混沌魔物が100体以上押し寄せてきたという国家存亡の危機のことですか。いわゆるモンスタースタンピードですね。
「大侵攻ってどんな感じだったの?」
「そりゃまー、めちゃくちゃでっかいボス級の混沌魔物がわんさか海から上陸してきてなぁ。すげーヤバかったぜ。人生で一番激ヤバだった。アタシじゃなきゃ死んでたね」
「おお、すごいですね! そんなにヤバかったんですか!」
「まぁそこはアタシの大活躍で……と言いたいところだが、まぁ味方側に強いやつがいてねぇ。そいつにほとんど手柄持ってかれちまった」
ほほう、すっごく強い人がいたんですね。ガイナスさん達でしょうか?
「そんなに強い人だったの?」
「おう、ヤベェぜ~。アタシも初めてナマで見たよ、ハルテンの【ミカド様】ってやつをよ」
ハルテンのミカド様……ですと?
つい最近聞いた名前ですね。というか先日読んだ歴史書に載ってましたね?
「確かハルテンの偉い人で、不老不死とかいう……?」
「おおそれそれ。まじでヤバかった。この国で最強ってのも過言じゃねーわマジで」
「そんなにすごかったの?」
「おう、ヤバすぎたぜ。アタシも自分のことを強いと思ってたが、世界ってマジ広いんだなーって思ったわ」
ハルテンの不老不死の帝王、ミカド様ですか。そんなに強いなら一目見てみたいですね。
しかしこの人、ヤバいヤバいばっかりしか言ってなくて実質あんまり情報を語ってませんね? どうすごかったとかそういう具体性が全く無いんですが。
「あ、そだ。仕事忘れてたわ。アタシ今ここのゲートキーパーだったわ」
「ゲートキーパー! かっこいい!!」
ゲートキーパー……いや、つまり門番ってことですけど。
でも英語にするとカッコいいですね、ゲートキーパー。
「このダンジョン行くのかいガールズ?」
「うん、そうだった! 行くよ!」
「たった二人とはクレイジーだねぇ。まぁ冒険は無理しないで適当なところで切り上げな。最初は日帰りがおすすめだぜ?」
「はい、そうします」
「んじゃ、入場の書類に名前と時刻を記入しな。そういう決まりなんでな」
「うん!」
「わかりました! これだけでいいんですか?」
「おう。これで入ったら自己責任って書類だ。ダンジョン内は色々あるからな」
おおう、そういう書類だったんですかこれ。軽い感じで言ってきますけど、結構重いことしてませんか?
「まぁ、安否確認も兼ねてるけどな。何日も出てこない場合とか分かるしな。でもレスキューは特にやってないぜ」
「そうなんですか」
「でも、何日も帰ってないって分かったら仲間とかが自費で依頼を出してレスキューするから役に立つこともあるぜ」
「ふむふむ、なるほど」
たしか私達はガイナスさん達には日帰りでダンジョンに行ってくると伝えていましたね。これで私達がダンジョン内で何日も出れなくなっても、ガイナスさん達が心配して探してくれるかもしれません。
信じてますよ、お二方!!!
「あのちょっと聞きたいんですけど、なんで貴方みたいな強そうな人がゲートキーパーやってるんですか?」
「なんだ知らないのか? ダンジョンから魔物が出たときの為の防衛も兼ねてるんだぜ。ゲートキーパーはゲートガーディアンでもあるんだ」
「ゲートガーディアン! かっこいい!!」
「他のダンジョンのゲートキーパーも大概強いから、あんまり喧嘩売らない方がいいぜ。まぁアタシは特に強いが」
「うん、わかった! 良かったら今度お手合わせお願いします!」
「話聞いてねえなこのガール」
「あはは……」
獣人のお姉さんは苦笑しました。うん、ユーくんはちょっとバトルジャンキーなのかもしれません。それにしても、この人はユーくんが女の子って最初から気付いてるっぽいですね。獣人なので鼻が利くのかもしれません。
あれ? じゃあこの人よりケモ度の高いヨッツさんが気付いてないのは一体……あの人の鼻って見掛け倒しなんですかね?
まぁ私の耳も鼻も大して良くないですし。一応獣人っぽい耳してるんですけどね、私。かわいいだけのなんちゃって獣人ですからね。
「長話が過ぎたな。じゃあそろそろ行ってこいガールズ」
「うん、ありがとね!」
「ありがとうございました!」
そうしてゲートが開かれました。
二重の外壁の中に入ると、そこには小高い丘があり、その真下に洞窟のようなものが見えました。
中は薄暗くて見通せません。
「洞窟……? ここがダンジョンの入り口なの?」
「おそらくそうでしょう」
ほら、看板にも【ハイセイカ・ダンジョン第一層入り口:難易度★1】って書いてあります。ハイセイカはこの街の名前ですね。この街はダンジョンがあるから作られたんでしょうかね?
難易度★1……なるほど、一番レベルが低いということですか。初めてのダンジョン体験にはもってこいのところですね。
「ワクワクするね!」
「はい! 正直私もめっちゃワクワクしてます!!」
未知への冒険です。この世界はまだ経験したことの無いことばかりです!
私達は期待に心を膨らませて、ダンジョンに突入しました!
洞窟内は石材で舗装されています。私はお父さん棒の先に神気の光を灯して照らしながら、ユーくんの後ろについて洞窟の中をこつこつと進んでいきました。
……あれ? 折角ランプとか用意してたのに、結局私がいると使いませんね、これ?
ま、まぁ途中で神気が無くなったり、はぐれたりするかもしれないですし、神気無効エリアとかもあるかもしれないですし……あるんですかね?
洞窟は思ったより短く終わりました。
そして10mほどの短い洞窟を抜けた先は、見渡す限りの草原と青い空が広がっていました。
あれ? なんか外に出ちゃいましたか?




