Lo21.アレの肉美味しい
あの後、森に広がった火事はなんとかなりました!
ユナさんが水の魔法を使い、消火してくれたようです。いえーい!
まぁ、それしなかったら森全焼コースだったんですけどね……火事ってこわい。
「この子は生まれつき魔力が高くてね。元々魔法使い向きなのよ」
「勇者タイプじゃなかったんですか!?」
「本人がそう言ってるだけねー」
気を失ったユーくんを抱っこしながら、ユナさんは言いました。ついでに私もおんぶされてます。おんぶに抱っことはこのことですね! てへ!
「あのとき出した火柱って魔法なんですか? でもユーくん、今の今まで魔法使わなかったですよね?」
「使えなかったのよ。昔、家を全焼させたトラウマがあってねぇ。なんせこの子、火の魔法しか使えないから」
「そうなんですか」
家を全焼させたとはなかなか不穏な感じですね。トラウマになっても仕方ないです。
しかしユーくん、勇者じゃなくて魔法使いタイプだったとは……うーん、見た目のヤンチャさからはあんまり想像つかないですね。従来の勇者のイメージは基本的に戦士寄りですからね。というか名前が既に勇者っぽい名前なんですけど、ブラフですか?
「まぁ、これで使えるようになったみたいだし、一応合格かなー」
「スパルタですね……」
「私、可愛い子ほど谷に落とすタイプなのよねー」
「ひええ」
ユナさん、ちょっと鬼畜かもしれない。でもこれがユナさんなりの愛なら仕方ない。
「……もしかして、ユーくんがあの火の魔法を使えたら、最初から一人で倒せてました?」
「うん」
「え」
「嘘嘘。ほんとはちょっと微妙かも。チーちゃんが神気で魔瘴を剥がしてくれたから、丸焦げになったところもあるし」
「そ、そうなんですか!? 役立たずじゃなくて良かったです!!」
良かったー! 私、結局出てきて一瞬でやられましたからね。一応役に立ってたようでなによりです。
「ところで……ユーくんは大丈夫なんですか? 結構痛め付けられてた気がするんですけど……」
「怪我はしてるけど、今回は死んでないし大丈夫じゃない?」
「その基準はどうかと思いますけど……」
「今寝てるのも、久々に魔力使った反動で疲れてるだけね」
「そうなんですか」
どうやら、深い傷はなさそうです。血もそんなに出てないですし。どこか折ったりしたかもと思ってましたが、骨折もなさそうでした。
「そういえばユーくんは火だけしか魔法使えないのなんでですか? ユナさんは水とか使えますよね」
「得意不得意があるからねー。ちなみに私はそんなに魔法は得意じゃないわー」
「うわぁ、嘘っぽい」
「ほんとほんと。魔法だけならユーくんの方が才能あるわ」
「そうなんですか……やっぱり私も魔法使いたいですねー」
「チーちゃんは駄目ね」
なんか私は駄目っぽいです。解せぬ
「でも、火の魔法しか使えないなら回復手段に困りますね……」
「何言ってるの?チーちゃんが回復役でしょ?」
「へ? えっと……後方からポーション投げでもすればいいんですか?」
「ポーション投げてどうするのよ」
どうやら違ったみたいです。いえね、昔やったゲームでポーション投げて回復する技があった気がしたんです。でもよく考えたら投げたらビンがぶつかって痛いだけでは???
「そうじゃなくて、神気を使って傷を癒すのよ。出来るでしょ?」
「え、そんなの出来るんですか?」
「出来るも何も……この前死にかけてたユーくんの傷を治したのチーちゃんでしょ?」
「えっ? そうだったんですか!? てっきりユナさんがなんとかしたのかと……え、嘘じゃないですよね?」
「チーちゃんって、自分のしでかしたことになるとホント疑い深くなるわねぇ」
えっと……信じられないことですが、なんかユーくんの傷を治したの私っぽいです。私はただ魔瘴を払っただけだと思ってたんですが、なんと私に癒しの力が……?
「えっと、そういうのっていわゆる魔法じゃないんですか?」
「チーちゃんの使ったのは魔法じゃなくて【神術】ね。魔法は魔力を使うけど、神術は神気を使うの」
「なんか違うんですかそれ?」
「厳密には色々違うんだけど、まぁ結果的に似たようなものかしら」
「じゃ、じゃあ私は魔法は使えなくても、魔法に似た現象は使えるってことですか!?」
「神気が使えるから当然よね」
それを早く言ってほしかったんですが!!!
しかし、これで私もヒーラーとしてまともな活躍が期待できそうです。いやー、神気身につけたといっても光ったり魔瘴払ったりするだけで、普段は結構足手まといかなーと我ながら思ってたので、一安心ですね。
これで勇者パーティーのヒーラー枠に無事内定です。とてもとても重要職なのでよほどのことがない限りパーティー追放は無いと思われます。まぁユーくんがそんなことするとは思えないですけどね? でも今追放ものが流行ってるので油断できません。
「というか思ったんですけど、神気と魔力の違いってなんなんです?」
「んー、ごはんと麦ごはんくらいの違いかしら?」
「よく分かりませんよ!?」
「味わいが違うのよねぇ……」
「な、なるほど……??」
「とはいえ神気を使える人は少ないから、人前じゃ魔法ってことにしといた方が良いわよ。珍しいから解剖されちゃうわー」
「解剖されるんですか!? わ、わかりました! 秘密にしておきます!」
うん、全然分かりませんがなんとなく分かったことにしておきます。というか神気ってそんなにレアなんですか? まぁ、死にかけないと使えないって言われてるし、そんなものですか。
まぁ、そもそも魔法使える人がこの世界にどれだけいるかも知らないんですけどね?
その後、帰宅した私達。
試しに怪我してるユーくんに「治ってー」と思いながら神気を送り込んだら、ポワポワとした光がなんか傷を癒してました。おおお、私えらい。
目を覚ましたユーくんは既に元気いっぱいで、その後一緒に晩御飯を食べてました。
「この肉美味しいですね? 何の肉ですか?」
「アレの肉よ」
「アレの肉って何!?」
どうやら黒焦げになったラグナディアの死体から、ちゃっかり焦げてない部分を回収していたユナさん。普通に晩御飯に出してきました。
「なんかその……アレって血とかドロドロの真っ黒で瘴気発してましたけど、大丈夫なんですかこの肉?」
「神気で瘴気を払えば美味しい肉になるわ。瘴気を払わずそのまま食べると……死ぬわ」
「フグか何かですか!? あの鹿!!」
「でも美味しいよ?」
「美味しいんですけどね!!」
うん、ちょっとリスキーな食べ物でした。それにしても、どす黒いオーラめちゃくちゃ出してた混沌魔物もちゃんと食べれるんですねぇ……
それになんか普通の肉よりめちゃくちゃ美味しいんですよ。とってもジューシーです。もぐもぐもぐ
そのとき急に身体が光り始めました。
≪レベルアップおめでとうございます≫
≪レベル3になりました≫
唐突に頭に響くレベルアップのアナウンス。やはり東北イ〇コボイスです。〇コ姉様色っぽい。
私と同時にユーくんもポワポワ光ってました。レベルアップの光です。なるほど、他人からはこんな風に見えるんですね。ちょっと目立ちますね。
「うわわ、ボクもレベルアップした! これでレベル5だよー!!」
「おおー! おめでとうございます!! 私はレベル3です!!」
「おめでとー!!」
お互いをたたえ合う私とユーくん。ラグナディアと戦ったからでしょうか? なんかレベルアップしたみたいです。ほぼユーくんが倒したようなものですけど。
「しかし、レベルアップのタイミングが不思議です。こういうのって戦闘直後に上がるものじゃないですか?」
「そんなすぐには上がらないわよ。筋トレだってすぐには効果出ないでしょ? どこの世界の話?」
「えーと、なんでしょうね。あはは」
「なんか休憩中とかに上がること多いよね。でも寝てる最中は無いかなぁ。起きたらすぐレベルアップの声が聞こえることあるけど」
「寝てる人を起こさないように配慮してくれている説あるわね、神様が」
「なるほどぉ……まぁ神様がなんかしてるんでしょうね」
ドラ〇ンクエ〇トじゃ戦闘後すぐにレベルアップするんですけどね……
しかし、お食事のタイミングでレベルアップしたので、もしかして今食べてるアレの肉の影響かもと思ったのですけど……ト〇コのグル〇細胞じゃないんだからそんなことは無いですよね……無いよね?
とか色んなこと考えながらお肉をもぐもぐしてると、ユーくんが真剣な顔で切り出しました。
「お母ちゃん、出発の日だけど……一週間後に決めたよ」
「そう。とうとう旅に出るのね」
……どうやら旅立ちの日が決まったようです。




