Lo116.すーぱーのヴぁ
ユーくんが小さな火の玉で大岩を爆破して破壊した後。
私たちは轟音を聞きつけて集まってきたお屋敷の人に普通に怒られました。ここ、神帝様の屋敷のお庭ですからね。
置いてあった岩もなんか庭師の人が運んできた良い感じの岩だったらしく、要するにちゃんと整備された庭園の庭石なんですよね。
そりゃ怒ります。
サクちゃんはなんか爆笑してましたけど。
そんなわけで反省した私たちは、都市の外で修行することにしました。
「ボクね。勘違いしてたんだ。火魔法って『大きければ大きいほど強い』って思ってたんだ。でも実際は逆だった。
火魔法は『小さくすればするほど強い』んだよ」
「小さくすればするほど……?」
「ただし、ただ弱い火を出すんじゃなくて、『強い火』を『小さくする』の」
「つまり、『圧縮』するってことですか?」
「そゆこと」
「ふっふっふ……どうやら、火の魔法の真髄に気付いたようですね私達」
「くっくっく……またこの世の真理の一つを解き明かしてしまったようだね……!」
何故か悪役ムーブで笑う私達。しかしまぁ、これで『火魔法が強い』と世間で言われてる理由も分かってしまいましたね。
火には質量が無い分、おそらく圧縮するのも容易なのでは?
「それでね。さっきは大きな火の玉と小さな火の玉で『同じ火力の火』を使ったと思ったんだけど、なんか同じ火力でも圧縮して小さくした方が強かったんだよね」
「それは……『ボイル=シャルルの法則』が当てはまるかもしれませんね」
「ボイルしたタコの法則……?」
「公式でいえば、『PV=T』。つまり『圧力×体積=温度』ということです」
私が地面にガリガリと理屈を書きだします。懐かしいですねぇ、ボイル=シャルルの法則。高校の時に倣ったんでしたっけ? 物理学でも重要な公式です。
「ユーくん、火の玉を小さくしたときに魔力によるパワーを加えませんでした? そうしないと小さくならないと思いますけど……たぶん」
「確かに小さくするときにギュっとしたね。そのときにも魔力使ったかも」
「この公式によると、『圧力が高くなると体積が小さくなり、温度が上がる』んです。つまり魔力によるプレッシャーで火の玉が小さくなって、中の温度が上がったんですね」
「それで威力が上がったのか……すごいね、チーちゃんかしこいね!」
「まぁこれでもユーくんより長生きしてますからね! えへん!」
……とまぁ中身28歳の幼女が偉そうに言い切りましたけど、この理屈で合ってるのかよく分かりません!
魔法って物理学とか関係あるんですかねぇ……? まぁいいか。小さくしたら威力上がったしそういうことで!
……これが現代知識チートですね!? 異世界で初めて実感したかもしれません!!
「ついでにいうと、解放したときのエネルギーが一瞬で爆発したのもよかったのかもしれませんね。おそらくそれで【燃焼】が【爆発】に変わりました」
「ねんしょーがバクハツに……?」
「『爆発』っていうのは言うなれば『めちゃくちゃ激しい燃焼』ですからね」
「そうなんだ」
「そうなんです……たぶん!」
「あ、自信ないんだ」
はい、全然自信ないです。もう忘れかけてますからねそのへん。それに『爆発』って別に燃焼によるものじゃなくて、空気とかの破裂も『爆発』だったような……? まぁそのへんの定義は良いです!
「まぁとにかく。『爆発』っていうのは威力が高いと相場が決まってるんです! つまりこれこそ火魔法の真髄……!」
「これを極めると『必殺技』になるかもしれないってことだよね!」
「そういうことです!」
「じゃあ練習しよう!!」
「あ、爆発はマジで危ないので周囲に人がいないか確認してからやりましょう。これマジで危ないので」
そうして私達は火魔法の真髄に辿り着いてしまったのでした……!!
(過去回想終わり)
「……ということなんですよ、サクちゃん」
「いや、全然分からんのじゃけど。もしかしてちぃ子の脳内でストーリー展開しとった?」
「はい!」
「はいじゃないんじゃが。それを説明してほしいんじゃが」
「あるぇー? 漫画とかだとこれで説明できてるんですけどねぇ?」
「現実じゃとみんな同じ幻覚を見た集団催眠じゃろそれ」
サクちゃんは集団催眠にかかってくれませんでした、残念。
催眠というジャンルは好きです。良いですよねぇ催眠。意思を失ってとろんとした目がいいです。
「まぁとりあえず、百聞は一見に如かず。サクちゃんはちょっと見ててくださいね!」
「すごいことになるかもだよ!」
「うむ。良く分からんが、楽しみにしとるぞ!」
私はユーくんに抱えられたまま火魔法組の中に行きました。
「あっ、チーちゃん。チーちゃんが来たってことは遂に『あれ』をやるのね!」
「トゥルカさん! はい、やりますよ!!」
冒険者チーム『ハンドチョッパーズ』の紅一点、猫耳をつけた偽獣人(普通の人間)のトゥルカさんが駆け寄ってきました。この人は風魔法を使います。火と風は相性が良いらしく、それによって火魔法組の補助をしていました。
「おおおおお、緑の幼女がキター!」
「ということは……やるんだな、今……ここで!」
「はい! 勝負は今! ここで決めます!!」
火魔法組の皆さんとは船内で事前に『必殺技』について打ち合わせをしてました。ここに来るまで半日ありましたからね。準備は万端ですよ!
「皆さん、打ち合わせ通り火力を一か所に集めてください!」
「火力を一つに!!」
「狙いは大海龍! ウェダインさん達の活躍で弱ってきました! 今こそ当てるチャンスです!!(たぶん)」
「応!!」
私のてきとうな見解に一致団結する火魔法組のみなさん。たくさん倒してきたおかげで息が合ってきたようですね!
尚、オオミズチさんの動きは鈍っているのかどうかはよく分かりませんが、段々と魔瘴を貼らなくなって水流のバリアもおざなりになってますからね。
魔瘴を貼る→剥がされる→魔瘴を貼る→剥がされるのループに参っちゃったんでしょうか?
今はこっちを無視してウェダインさん達を先に潰そうと水流を攻撃に転用しています。
しかしその判断が間違いだったということを今からたっぷりと教えてあげますよ!
火魔法使いさん達が私の頭上に火魔法を集中していきます。なんかですね、レベルの高い火魔法使いさんは『火魔法は圧縮して使う方が強い』って知ってたみたいで慣れたもののようです。
世紀の大発見だと思いましたけど、無知なのは私達だけでしたかー。
しかし、ここからはオリジナルムーブです。
火魔法が集まり、火球が形成されます。ここから更にパワーアップさせますよ!
私は神気を集めて火球にぶつけます。白い輝きが火球を覆うように包みました!
「……まだいけそうです! 皆さん、2発目お願いします!」
私が火魔法組の皆さんに声を掛けました。
ふふん、これはですね。私がユーくんとの修行で生み出した技です!
元々、私は神気での【消火】が出来ました。ユーくんによる森林火災を抑える為に編み出した神術ですけど、今やってるのはそれを応用した形になります。
要するに、神術によってなんか上手いこと火を封じ込めて延焼を防ぐと共に、エネルギーの流出を防止します。
それにより、普段の火魔法より限界突破して火の威力を溜めることが出来るのです!
「二発目装填!」
「いくぜー!」
「うにゃー!」
そして火魔法組の皆さんから二発目の火魔法が火球に装填されます。
さて、ここで補足情報。
火魔法組は全員で16名。ですが2交代制で火魔法を使っている為、今まで発射してた火魔法は一度に8人分の魔法、つまり8発分の合体魔法でした。
しかし、今は火魔法組16人の魔法を集中させてます。つまりこの火球は16発分の合体魔法、そして先ほど二発目を装填したので32発分の合体魔法となります。
しかもA~Bランク冒険者の使う火魔法です。要するに今の段階でもめっちゃ強いと思われます(通常の32倍)
しかし相手はあの超巨大な混沌魔物、オオミズチさんです。この船よりずっと大きい化け物です。それで仕留めきれますかね?
……もうちょっとだけ、強化しますか♣
「……まだいけそうなんで、もう1発お願いします!」
「まだやるの!?」
「いやいや、これ以上はちょっと……」
あ、冒険者さん達がちょっと怖がってます。ユーくんはその冒険者さん達に発破をかけるように言いました。
「でも、ちょっと見たくない? 火魔法の可能性を……爆発を越えた爆発……『爆ごう』の威力を!!」
「『爆ごう』……理論上は聞いたことあるが」
「爆発の上位互換……音速を越える爆発か……」
うへぇ、この世界の人は博識ですねぇ。『爆ごう』の存在まで知ってるなんて。これじゃ現代知識チートとか出来ませんよ!
「それじゃいくのだわ! 3発目装填!!」
「あ、まじかあいつやりやがった!? じゃあ俺も3発目装填!!」
「じゃ、じゃあ俺も……」
「私も!」
冒険者さん達が3発目の火魔法を火球に集めます。これで16人×3発。48発分の火魔法が集まりました!
私はそれを神気で包み……気合いで圧縮します!
「にゅううううう~!!」
「おお、火の玉がどんどん小さくなっていく!?」
「よく分からん幼女がよく分からん理屈で小さくしてる!?」
「にゅうううって何!?」
火球がどんどん小さくなっていきます。やがてバレーボールくらいの大きさになりました!
「あれだけの火魔法がこんなに小さく!?」
「まるで初心者の使う火球サイズじゃねーか!」
「でもこれの威力、絶対やばいよ……」
「うん、やばい。絶対やばい」
「結構自重なしにやったものねぇ」
ふむ、どうやらやばいみたいです。なら安心ですね! 多分オオミズチさんにも通じます!!
私は風魔法使いのトゥルカさんに声をかけます!
「トゥルカさん! 打ち合わせ通りに風魔法を!! 貴方のコントロールが鍵です!!!」
「せ、責任重大だなぁ~。というか私で良いの? 私Bランクなんだけど。Aランクの人もいるんだけど」
「この作業は威力よりコントロールです!」
「トゥルカが一番コントロールいいからね!」
そう、この火球を相手にぶつけるにはノーコンの私では無理っぽいです。いや、今までも散々光の玉をぶっぱしてきたんですけど、あれは多少狙いを外しても広範囲に広がりますからね。
というか、私の神術より風魔法の方がスピードも上ですし。私は圧縮するのに仕事してるので、圧縮しながらこれを運んでぶつけるのも神経使いそうですし。
まぁそんな感じで色々な理由でトゥルカさんに頼む方がベストだと判断しました! この人はユーくんに魔法の制御を教えてくれた師匠でもありますしね!(1週間だけ)
「今までも散々命中させてきたよね。トゥルカなら大丈夫だよ!」
「いよっ、影のMVP!!」
「ネコミミ(偽)もかわいいですよ!」
「あからさまに持ち上げすぎでしょ……まぁやるけどね!」
トゥルカさんが風魔法を使って火の玉を包みます。
おお、出来ました……! なんか……なんかすごい感じの……合体魔法の【爆弾】です!!!
そして火の玉がトゥルカさんの風魔法による突風で、勢いよく発射されました!
「いっけえええええーーー!」
「うにゃーーーーー!!」
トゥルカさんの風に寄って運ばれた火の玉はオオミズチさんの無防備な長い長い胴体のど真ん中に着弾しました!
すとらーいく! ばったーあうと!!
「よし、今です! 火力解放!!」
ぶつかった瞬間、私は火の玉に使っている神術を解除しました!!
途端に膨らむ圧倒的な圧力! 火の玉は弾けて強い光があたりを覆います!!
そして光から遅れて、とてつもない爆音と衝撃が船まで届きました!!
「うおおおお!?」
「ちょっ、やばばばばば」
「やりすぎでしょこれ!?」
冒険者さん達が口々にその魔法の威力を称えます!
おおう、必殺技を編み出したかいがありましたね!
「これが私達の超必殺技、名付けて【超新星爆発】です!!!」
「チーちゃん、真面目に必殺技名考えるときと不真面目なときの落差がすごいよね」
こうして新必殺技【超新星爆発】が炸裂したのでした!!!
ちなみにボイル=シャルルの法則は『PV=T』ではなく『PV/T=一定』なのでチーちゃんの言ってることは微妙に間違ってます。




