Lo11.前の転生者も色々とアウトだった件
ユナさんは私のほかにも異世界から来た転生者を知ってるようです。珍しくないのかも、異世界転生。私の希少性と存在価値が下落しましたけど、まぁ元々底辺な気もするので、そこらへんは気にしません。
……あれ? そういえば私が【転生者】だってユナさんに言いましたっけ? たしか『異世界から来ました』くらいしか言ってなかったよーな……
まぁ別に秘密にしてたわけじゃなく、転生の説明が上手く出来そうにないからしなかっただけなんですけどね。
そもそもこの世界って輪廻転生とか前世とかの概念あるんですかね? 天国とか地獄とかも。
転生を説明しようとしたら、そこらへんの宗教観に色々と突っ込んでしまいますので、あえて言わなかったんです。
べ、別に年齢を隠したかっただけじゃないですよ!? そう、複雑なんです! 色々と!!
「あの、ユナさんは【転生者】とか【異世界転生】についてどれだけ知ってます?」
「んー、ざっくり言えば死んだ人が別世界で記憶を持ったまま生まれ変わることでしょ?」
「おおぅ……ほぼそんな感じです。それってこの世界の一般常識なんですか?」
「たぶん常識ではないわねー。だからあんまり人に言わない方が良いわよ」
ほうほう。やはり一般常識ではないんですね。転生者に会ったことのあるユナさんだから知っているということですか。
「その反応を見ると、チーちゃんもやっぱり死んでからこの世界に来たのねぇ」
「はい、お恥ずかしながら……まぁほぼ自業自得で死んだのでアレなんですけど。しかしよく私が偽ロリと見破りましたね……」
「そりゃあ分かるでしょ~。だって言動が全然子どもっぽくないんだもの。うちの子は能天気に『姫様だから』と思ってるけど、そういうのちょっと賢いとか教育とかじゃカバー出来ないわよ~」
がーん、そんなにバレバレだったんですか。
まぁアラサーの精神体だからね、仕方ないね。できれば心もロリでありたいです。
「ふふふ……年齢、当ててあげよっか?」
「え、ちょっとイヤなんですが……」
「落ち着いた言動、社会にもまれたとしか思えない低姿勢の処世術、そして『幼い女の子が好き』という隠せない性癖からすると……」
ぎゃー! 私の性癖もバレバレだった!? 隠してたつもりなのに!! ユナさんこわい!!
「あなたは……50歳の独身男性ね!」
「全然違いますよ!? 28歳の女ですよ!!!」
「まぁそんなところよねー」
「あ……」
あああああ、勢いでツッコミ入れて実年齢ばれちゃった!? さては、あえて的外れなことを言って私から自白を引き出しましたね!?……ユナさん、なんという策士ですか!?
これでアラサーのロリコンがロリを装って幼女に近づいてたのがバレちゃいました。処される……これは処されちゃいます!!
ところがユナさんはにっこり笑って私の頭をナデナデしてくれました。あるぇー? 思ってた反応と違います。
「まぁ元々私は貴方の前世が女の子だと思ってたけど、それが聞けて安心したわー」
「……えーと、ユナさんは私のこと気持ち悪いとは思わないんですか? あなたの仰る通り、私は女の子が好きな成人女性ですけど……?」
「あー、その反応だと元の世界ではあんまり受け入れられてなかった感じかしら?」
「そこは人によるので何とも言えないですね~……ただ、姉には気持ち悪いって言われました……」
「そっかぁ」
はぁ……あんまり思い出したくない思い出です。そりゃ現代日本は割と寛容な時代だと思いますよ? ただそれはマクロな傾向であって、ミクロな部分ではこういう経験もあるわけです。しかも私の場合、ただの女好きじゃなくてロリコンですからね……
まぁ、今思えばロリコンになったのは姉のせいなのもあるかもしれませんね。年上の女性にあんまり良い思い出が無いんですよ。
男? 男については元々そんなに興味無いです。これは生まれつきです。
「残念ながら、この世界でも女が女を好きっていうのは一般的じゃないわ」
「そうですよね……」
「この絵もあんまり人に見せられない絵を描こうとしてたんでしょ~?」
ひぃっ、バレてーらー。まだ健全な部分しか見せてないのに鋭すぎるでしょ……
「でも、素敵な絵だと思うわ。たぶん貴方にしか描けない絵なんでしょうね」
ユナさんはギュっと抱きしめてくれました。
えっ、こんな私を褒めてくれてるんですか? 優しすぎないこの人? リアルで見せたらドン引きな絵を描くんですけど私。
「完成したら見せて欲しいわ~」
「えーと、その、あんまり人に見せるようなものじゃないというか……そのぉ」
「楽しみにしてるわね~。チーちゃんの描く人に見せられない絵♪」
「ひぃぃ~、ご、ご勘弁を~~」
この人、もしかして見た目ほど清楚じゃないのかもしれません。
清楚系Vtuberがあんまり清楚じゃないように……!!(めちゃくちゃ失礼)
「あ! そうです! 転生者!! 転生者の話題でしたね!! ユナさんが以前会ったという転生者はどんな人だったんですか!?」
「すごく強引に話題転換してきたわね。まぁいいけど~」
強引でも何でもいいんです! このままだと話題がどんどん怪しい方向に行きそうだったので!!
「んー、これはあんまり良い話じゃないし黙ってようかなーと思ったんだけど、まぁ良い機会だしチーちゃんには話してもいいかなー」
「あんまり良い話じゃない……とは?」
「んー、そうねぇ。あの人は……結構問題ある人でねぇ……」
問題のある人……とな?
うーん、私自身すごく問題のある人間なので、何ともいえないですね。しかしユナさんがそんなことを言うとは、一体どんな人だったんでしょう?
そうして、ユナさんは以前会ったという転生者のことについて話し始めました。
「そんなに悪人ってほどじゃないのよ。正義感はある人だとは思うの。それで救った人間もいるし、私も救われたこともあるから一応恩人に対して悪口は言いたくないんだけどねー」
「えっと……悪人じゃないんですよね? 何か問題でも……」
「一言で言うと、馬鹿だったのよね」
「身も蓋もない!? まぁ、私も人のこととやかく言えるほど賢くないんですけど……」
「頭が良い悪いの問題じゃなくて、愚かな方の馬鹿よ」
いや、その言葉刺さってる刺さってる! 私も大分愚かな方の馬鹿ですよ!?
「んー、チーちゃんとはタイプが違うかなぁ。チーちゃんは和を乱さないし人の言うことを素直に聞いてくれるでしょ? あの人は和を乱すし人の言うことを聞かない人だったのよ」
なるほど。悪人ではないけど、KY(空気読めない人)だったかぁ……
「ただ性格に難があるだけならまだ良かったんだけど、あの人はすごく強くてねぇ……それこそ伝説の勇者ヤマトの再来みたいに言われてたわ」
「えっ、私はクソザコなのにえらい違いですね?」
「なんでも、転生特典として神様からチートを貰って俺TUEEEみたいな……そんなことを言ってたわね。良く分からなかったけど、自分が選ばれた勇者だーとか言ってたわよ」
ええっ!? その人は貰ってるんですか!? 神様からチートを!!
「ううぅ、アワシマ様ずるいです。私にもチートくれても良かったのにぃ」
「アワシマ様? なぁにそれ?」
「へっ……? 何って神様の名前ですよ。私をこの世界に転生させてくれた神様です」
「この世界の神様はイルザナミア様よ。アワシマ様というのは知らないわね~」
イルザナミア様……初めて聞く名前です。この世界の神様ってアワシマ様じゃないんですか?
「その、イルザナミア様の外見って……ドロドロしてますかね?」
「ドロドロはしてないわね~。というかドロドロしてる神様って何?」
「あー……もしかして、ユナさんが会った転生者というのは、アワシマ様経由の私とは別口でこの世界に来た……とか?」
「そこらへんはよく分かんないわ~」
ユナさんでもよく分かんないんですね……うーん、そのへんは今後明らかになるんでしょうか?
「でも、そうなると前の神様は失敗したのかもね。勇者選びを」
「失敗……ですか」
「うん。いくらすごい力を持っていても、それを使う人間が出来てないとねぇ」
それはまぁ、正論ですね。変な人に武力持たせたら怖いですからね。だからアワシマ様もあえて私にチートを持たせずにこの世界に転生させたのかもしれません。
でも正直、最低限身を守る程度の力は欲しいですよね~……
「何より頭が痛いのは、あの人がユーくんの父親ってことかしら」
「ふむふむ、ユーくんの父親……って、え!? そうなんですか!?」
ユーくんの父親ということは、つまりユーくんの母親であるユナさんとは……え、ヤッたってことですか? そういうことですか?
いや、まだです。ユナさんとユーくんがそもそも血縁関係じゃない可能性もあります! 見た目ちょっとタイプ違いますし……(ユナさんはおっとり系、ユーくんは活発系)
……いや、髪色は同じ淡茶色で似てるんですけど。こう、母子じゃなくて実は親戚の子とか姪っ子ってパターンとかもあるかもです!!!
「あの……ユナさんとその人の関係は……?」
「あー、なんて言ったらいいかしら……別に私とあの人は夫婦ってわけじゃなくてねー。腐れ縁みたいなものかしら?」
ホッ、良かった。私のユナさんは穢されてなかったんだ……やはりユナさんは清楚……
「まぁヤることはヤったから、ユーくんが生まれたんだけど」
「ぐはっ……」
ヤってんじゃないですかー! やっぱ実の母子関係じゃないですかー!!
「あの人は性格はともかく、強くて美形だったからモテてたのよ。私以外にも相手が結構いてねぇ……私は4番目くらいかしら?」
「な、な、な、なんとぉ……!?」
なんてやつだ。羨ま……けしからん、けしからんですぞ!! 異世界でハーレムとか許されませんぞ!!! しかもユナさんほどの美人さんを4番目ですと!? これは絶許案件ですぞ!!!
「あのー、つかぬ事をお伺いしますが、その頃のユナさんって一体何歳でしたか……?」
「12歳」
「ぐはぁっ!」
「まぁ、子供産めるようになったのがその年齢で、実際は10歳くらいから手は出されてたけど……」
「ぐはぐはぁっ!!」
「あの人も転生後は若い身体貰ってるんだけど、元の世界じゃ30歳だとか言ってたわね~。魔法使いやってたんだって」
「中身30歳童貞おじさんなんですか!?!?」
ロリコンじゃないですかー!!! 元の世界だと完全にお縄になるやつじゃないですかー!!!
チート貰って!? 俺TUEEEで!? ハーレム築いて!? ロリに手を出して!?!?
役満じゃないですか!!! レッドカード退場もんですよ!!!! それ!!!!!
「……あの、その人はその後どうなったんですか?」
「お姫様さらって指名手配になった後は知らないわね~」
「ホントろくでもないですねその人!?!?」
「だからユーくんにもあんまりそのへん話してないのよ。秘密にしといてね?」
「そりゃ話せないですよ!? R-18ものじゃないですか!!!」
どうやら私の前に来た転生者はとんでもない野郎だったようです。神様、そんなのを異世界によこさないでくださいよ!
いや、ロリエロ同人作家の私が言うのもなんですけどね!
「ま、あの人と比べると、チーちゃんはずっとマシだから安心してね」
そうやってユナさんは私の頭を優しくナデナデしてくれました。
いや、比較対象がちょっとアレすぎるんですけど!?
しかしユナさんが12歳で経産婦だったとは……ユーくんが10歳ってことは今のユナさんは22歳くらいですかね?
見た目10代と見間違えるほど若いと思ってましたが、晴れて私より年下と確定してしまいました。
老けないエルフ的な年齢じゃなかったんですね……つまり今の私は年下の女の子にナデナデされて可愛がられてる中身アラサーロリコン……うーん改めて考えると私も色々と酷いですね?
神様、やっぱ色々と人選に問題ありますよ!!




