第91話 咲人と球技大会
スポーツの秋、という事で秋の美羽高校はスポーツの祭典続きだ。球技大会に体育祭、更に11月にはちょっとしたマラソン大会もある。
俺の本番はマラソンの方になるが、球技大会でも一応それなりには貢献出来る。俺が参加するのはバスケットボールなので、持久力には自信がある俺に向いている。
男子の場合はグラウンドでサッカーか、体育館でバスケの選択制だ。ちなみに女子の方は外がハンドボールで体育館がバレーボールだ。
体育館では半分ずつ使い、バスケとバレーを行う。体育館を半分ずつ使うやり方をハーフコートと呼ぶ。
本来のフルコートは縦28メートルの横幅は15メートルとなる。ハーフコートの場合は、縦14メートルの横幅12メートルだ。
「てか咲人、お前バスケ詳しいな?」
「小学校の時にミニバスもやっていたんだ」
「はぁ~ん、なるほどね」
あくまでミニバスだし、小学生の頃の話でしかない。流石に現役のバスケ部を相手に善戦出来る自信はない。
最近あんまりやっていなかったしな。中学時代はバスケを続けていた連中達から、たまに誘われて遊びでやっていた程度だ。
高校に入ってからは、体育でやっただけだ。もうだいぶ勘が落ちているのは授業で確認済みだ。
ただ経験者としてエアボールだけはしない様にしたい所だ。あれをやってしまうと、結構な恥ずかしいからな。
しかしそれにしても、やっぱりバスケ部の連中はレベルが高い。これは中々厳しそうだ。
一応俺達のチームにもバスケ部が2人居るので、ある程度は戦えると思うけれど。
「東、今日は頼むぜ」
「橋野、河村。あんま期待するなよ?」
「東なら大丈夫だって。授業中も結構やれてたしな」
チームメイトでバスケ部の橋野と河村から妙に期待されている。未経験者に比べたらそりゃあ多少マシだろうけどさ。
どちらかと言えばサポート側としての貢献を狙いたい。走り続けるのは得意だから、パス回し要因ぐらいにはなれるとは思うけれど。
スリーポイントとか入る気がしないし、ポイントゲッターとしては厳しいんじゃないかな。
楽しいから競技としては好きだけど、俺自身は平凡な腕前でしかない。バスケ部員が相手に3人居るだけで厳しくなる。
ただチームメンバー的に一哉は足が速いし、バレー部の安達は背が高い。一応球技大会レベルとしては、そう悪くないチームではあるんだけど。
「おい咲人、俺らの番だぜ」
「ま、やるだけやってみるさ」
「女子に良いトコ見せねぇとな」
「一哉お前……いやまあ良いけど」
多分そんなに観てないと思うぞ。普通にバレーの方を観戦しているし。女子の方ではちょうどバレー部員の霜月さんがエグめのアタックを決めている所だった。
こえぇなぁ……あんなのが当たったら絶対痛いだろ。どうやら女子の方では、澤井さん達クラスの美人グループが大活躍しているらしい。
と言うかメンバーが豪華過ぎるだろあのチーム。男子の殆どがバレーの方を観てんじゃん。いや構わないけどさ、別に観ていてくれなくても。
学校で頑張っても、美佳子さんには観て貰えないしなどうせ。そこがまあまあ辛いポイントなんだよなぁ。
なんて考えていた俺を試合開始のホイッスルが現実に意識を引き戻す。
「ピッ」
「坂井!」
「おう任せろ!」
短距離走が得意な一哉は、その俊足を生かしてジャンプボールで零れたボールを拾いに行く。
相手はバスケ部員がこちらと同じ2人である。つまり後は俺達3人の活躍次第で勝ち負けに影響する。
一哉が拾ったボールを橋野が受取りゲームメイクを始める。橋野は俺より少し背が低く、司令塔役であるポイントガードをしている。
河村の方はポイントゲッターであるスモールフォワードで、背が高い安達がセンターになる。
俊足の一哉がシューティングガードで、俺は一応身長的にはパワーフォワードのポジションになる。
スリーポイントとか無理だし、まあ無難な配置かな。昔はセンターをやっていた時もあるし、リバウンドとか縁の下で地味な力持ちでもやっていよう。
「東! 安達!」
「了解!」
橋野の放ったスリーポイントは、残念ながらリングに弾かれリバウンドの姿勢に入る。安達と2人でボールの落下予測地点でジャンプする。
何とかリバウンドには成功し、そのまま無難にレイアップシュートでとりあえずは無難に貢献。
派手さは無いけど、まあそんなもんだよバスケって。そんなバスケアニメみたいにポンポン見せ場がある訳じゃない。
プロリーグやNBAレベルになると、そもそものレベルが段違いなので派手なプレーも豊富だ。でもこれは高校の球技大会だ。
殆どは地味な攻防を繰り返すだけだ。それに俺の立ち位置は、元々そういうポジションである。
何かこう、色々と出来るオールラウンダーな奴が担当する。俺の場合はただの器用貧乏だけど。
「イェーイ! やるじゃん咲人」
「つっても、まだ1本目だしなぁ」
「俺も負けてらんねぇな!」
やや不順な動機ながらも、やる気だけは満々の一哉と笑い合いつつディフェンスに回る。
俺達の1試合目はそれ程厳しいものでは無く、何だかんだで軽く勝利する事が出来た。自己評価としては、ちょいちょい貢献出来たので十分って所じゃないかな。
やっぱりバスケ部相手だとちょっとキツイし、メインはやっぱり橋野と河村の2人だった。
美佳子さんが観ていたらなぁ……もうちょっと無理する気にもなれるんだけど。そんなこんなで、俺達のチームは意外にも決勝までは行った。
でもバスケ部が4人居る相手には流石に勝てなかったけどね。俺はやっぱり、バスケは遊びぐらいで丁度良いかな。
流行ったバスケ漫画って一杯あるし詳しい用語の説明を無駄に長々とやらなくて良いよね? と思ってこの程度に留めたのですけど元バスケ部員故の思い上がりだったらすみません。




