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第86話 文化祭の出し物

 美佳子(みかこ)さんとマサツグのお陰で生活に変化が出来た。何より久し振りに動物と触れ合う機会が出来たのが良い。

 猫は初めてだけど、犬と同じで一緒に生活するのは楽しい。やっぱりペットとして愛されて来た長い歴史を誇るだけはある。

 猫ってもっと素っ気ないのかと思っていたけど、意外と人間に興味を示している。まだ懐いたとは言えないけど、顔見知り程度には覚えてくれたらしい。

 マサツグと仲良くなるという最近の目標を掲げつつ、いつもの学校生活を送っていた……筈だった。平穏な日々が崩壊する話を朝練の最中に告げられた。


「悪い一哉(かずや)、今何て言った?」


「ん? だから文化祭でメイド&執事カフェやるって」


「いやそこじゃなく、コンセプトの方だ」


「男女逆転、()()()()の事か?」


 頭が痛くなって来た。意味が分からないけどやりたい事は分かるのが嫌過ぎる。つまりなんだ? 男子がメイドになって女子が執事をやるか?

 何でそうなったんだよ、他にもっと普通のやり方があっただろう。何でわざわざそんなイロモノ枠全開の方向に舵を切ったんだよ。

 いやまあ女子の執事は良いとしてもだ、男子のメイドは余計過ぎるだろ。蛇足も蛇足で最悪の地獄じゃないか。

 誰が喜ぶんだよその要素。俺や一哉がメイドの格好をしても、ただただ滑稽なだけだろう。澤井(さわい)さんとか霜月(しもつき)さんの執事姿は需要があるだろうけどさ。


「何でそんな極端な話になったんだよ?」


「だって、咲人(さきと)がメイクを始めたって言うから」


「それだけでか!? まだスキンケアしかしてねぇよ!」


 体育会系特有の面白そうなら何でもノリで行け、という精神が全力で発揮されていた。いや分かるけどね?

 友達がやっていたら絶対に見に行くし、間違いなく爆笑出来たと思うよ? でもそれをやる側に回るのはゴメンだ。

 俺はそこまでお笑いに全力投球していない。芸人気質も持ち合わせていない。しかも凄くふわっとした理由で出された提案じゃないか。

 俺に男子全員のメイクを施せるわけがないだろう。自分の顔ですら1回やって貰っただけだ。

 自分ではやっていないし、そもそも女子向けのメイクではない。女の子っぽく見せる方法なんて分からない。


「大丈夫だって、お前は女子の担当だから」


「はぁっ!? 尚更分からん!?」


斎藤(さいとう)山本(やまもと)が男子の担当をするから、お前は女子を男っぽく見せたら良いんだって」


 そっちかよ!? というツッコミを入れる元気も出て来ない。俺の責任が重大過ぎるだろう。

 女子15人全員に、俺が男子っぽいメイクを施せと言うのか。せめて本人に許可を取ってから決めて欲しい所だ。

 幾らなんでも事後報告が過ぎるだろう。しかもクラスの中心であるギャル2人の役割が既に決まっている。

 つまり今から別の内容にしようと言うには、それなりのプランを求められる。どうするんだよコレ。美佳子さんにガッツリ指導をお願いしないと無理だぞ。

 それでも間に合うかは分からない。準備期間としては残り1ヶ月と少し。球技大会と体育祭を挟んでの文化祭である。それまでに出来る様にならないといけない。


「嘘だろお前……」


「いや~昨日の帰りに斎藤達と話してたら面白そうって話になったんだよな」


「クッ……バイトをしているが故の弊害……」


 昨日クラスメイト達が部活終わりに、集団で駅前のファミレスに行っていた。どうもその時に話が進んだらしい。

 俺が美佳子さんとマサツグに癒されている間になんて事をしてくれた。メンバー的に澤井さん達も居た筈だから、俺の味方はほぼ居ないに等しい。

 クラスの中心人物が集まった中で決められた事なのだ。今から反対派を集めても覆らないだろう。これはもう逃れられない決定事項だ。

 厄介な事になったものだ。自分がただ個人的にメイクを覚えようとしただけとは意味が違う。そこに重要な理由が上乗せされてしまった。どうするんだよコレ。


「おはよ~2人とも! どう? (あずま)君やってくれるって?」


「おう澤井! 咲人、やってくれるよな?」


「はぁ……あんまり期待しないでくれよ」


 俺に出来る回答は、これが精一杯だ。何ともまあ、波乱に満ちた秋になってしまったものだ。

 一哉に任せようと決めたのは俺なのだから、ある意味自業自得ではあるんだよな。美佳子さんとの日々を優先するあまり、学校行事への興味を失い過ぎていた。

 もう少しちゃんと考えるべきだったんだ。来年は気を付けないといけないな。今年はもう仕方がないとしても。

 いずれにしても、やるべき事が分かっているだけマシだろう。元々出来る様になりたいとは思っていたんだ。

 メイクを勉強する良い機会になったと思えば、それ程悪い気もしない。先に相談してくれよって気持ちは多少なりともあるけれど、不愉快かと言えば別にそんな事は無い。


「それで、メニューとかは決めたのか?」


「いや? まだこれからだ」


「東君は何が良いと思う?」


 そこもまだ決まっていないのか。ならせめてメニューに関してはしっかり関わっておこう。

 だってこのクラスで料理を出すとなれば、俺が料理担当になる可能性は高い。なまじ調理実習で料理が得意だと知らせてしまっている。

 出来ないフリをしておいた方が良かったか? いやでも中学から一緒のクラスメイトが知っているから今更か。何ともまあ、忙しい日々になりそうだなぁ。

体育会系あるある、ノリと勢いで決めがち。


そして活動報告にも書きましたが、彼氏出来た報告をしても炎上しない大人気Vtuberと祝福するリスナー達の実例が現れてしまった件について。

フィクションとして書いていたのに、現実がフィクションを侵食して来てしもうた。咲人と美佳子の結婚配信を私が書くまでに現実でやらないでくれ……頼む……

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