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第82話 新しい家族

 その場の勢いで美佳子(みかこ)さんは猫を買ったけど、そもそもペットOKなのか? という疑問に到着してから気付いたパデシオン高田(たかだ)

 そんな懸念は無用だった様で、普通にペットはOKだった。既に犬や猫を飼っている家庭が複数生活しているそうな。

 それならばといつも通り美佳子さんの自宅へと戻り、新たな住人であるペルシャ猫と生活する用意を始める。


「そう言えば、この子の名前はそうするんですか?」


「ん~~~そうだねぇ…………良し、君はマサツグだ!」


「また絶妙なラインで来ましたね」


 悪くもないけどちょっと微妙感のあるネーミング。味があるというか、この名前でペルシャ猫だからわりとシュールである。

 普通ならもうちょっと可愛らしい名前にする所を、思いっ切り日本人らしい名前にしてしまう所が美佳子さんらしい。

 微妙なんだけど、そこが彼女の飼い猫っぽい感じがしている。如何にもペルシャ猫ってオシャレなネーミングだと、美佳子さんの猫っぽさはちょっと無いよな。

 この変化球があってこそしっくり来る。ギャップがあってこそ篠原(しのはら)家の一員感であると感じる。

 そんな訳でオスのペルシャ猫、マサツグが暮らすケージを用意しペットショップの箱から出す。


「にゃあ」


「可愛いねぇ~~今日からここが君の家だよ~」


「結構大人しいですね」


 勝手なイメージだけど、猫はやんちゃなイメージがある。襖をボロボロにしたり、爪とぎで壁を滅茶苦茶にしたり。

 まだ幼いからなのか、マサツグが大人しいタイプなのか。気になったからネットで調べてみたけれど、ペルシャ猫はそもそも穏やかな種類らしい。

 あまりイタズラをする事はなく、我儘でもないとの事。比較的飼いやすいタイプだと言う話で、汚部屋の住人でも何とかなりそうだ。

 いや汚部屋では飼えないだろうけども本来は。何はともかく、先ずはマサツグを家に慣れさせる所からスタートだ。

 動物は自分の縄張りを意識するもので、ウチで飼っていた犬もそうだった。ここが住処だという認識を持たせるのは重要だ。


「このままリビングで飼うんですか?」


「まあそうだね~基本はここかな」


「防音室は機材とかありますしね」


 泣き声が外に漏れないというメリットはあるけど、高所から落とすと不味い物品が幾つかある。

 まあそんな場所だろうと、一切の躊躇いなく散らかしていた人だから今更だけど。それに部屋が綺麗なのは、俺が掃除をしているからだ。

 決して美佳子さんの散らかし癖が改善したのではない。ちょっとでも油断をすれば簡単に汚部屋と化してしまう。

 マサツグを出す前にも当然しっかりと掃除をしたので、口に入れる危険性がある物は一切落ちていない。

 そこに関しては一切の妥協をしていない。今でこそペットを飼ってはいないが、まだ生きていた頃は色々と苦労したものだ。あの頃が少し懐かしいな。


咲人(さきと)も何か飼ってたの? 動物慣れしてるよね」


「中2の頃までミニチュアダックスを飼っていましたから」


「それでか~扱いが上手いなと思ったんだよね」


 俺が生まれる前から東家で飼われていたミニチュアダックス、マリーというメスで15歳まで生きた。

 子供も生まれたけど、母さんが居なくなり2人で育てるのは厳しいので知り合いに譲り渡した。

 マリーの子供達は今も譲った家庭で元気に暮らしている。毎年必ず年賀状が送られて来るので、その成長を確認する事が出来る。

 そんな関係から、子犬だけど幼い動物の世話をした経験はそれなりにある。なのでマサツグの相手もそれほど苦戦する事はない。

 犬とは違うので、懐くかどうかは分からないけど。現状では少なくとも嫌われてはいない様だ。


「良いよね~新しい家族って」


「空気がちょっと変わりますもんね」


「ボク達に子供が出来たらこんな感じなのかなぁ」


「え、え~っと、どうなんでしょうね?」


 その発言は結構な破壊力がりますよ美佳子さん。子供が出来たらって事はつまり、子供が出来る行為をする事が前提になる。

 それをこうも温かい雰囲気の中で言われてしまうと、どうしても意識をしてしまうというか。

 いや良いと思うよ? こんな空気感で息子なり娘なりの面倒を見るというのも。2人でハラハラしながら見守る瞬間も楽しいと思う。

 勝手に拾った物を口に入れない様に注意するのは大変だろう。でもそれが良い想い出になったり、多分するんじゃないだろうか。

 人間の子育て良くは知らないけど。子犬でしか経験がないただの学生だし。


「ちょっとだけ、先に体験してみたかったんだ」


「え?」


「その……家族になった雰囲気だけでもさ」


 その少し照れた表情は滅茶苦茶グッと来ましたよ。俺が未成年だから、まだ子供を設けるわけにはいかない。

 だけどこの形でなら、それに近い事は出来る。そんな可愛い理由があったなんて、言われるまで分からなかった。

 確かにマサツグは猫だし、俺達はまだ結婚していない。18歳になれば結婚出来ると言っても、結婚した所で俺は学生という立場のままである。


 そんなのとても対等な関係とは言えないし、世間的なイメージも良くない。まして子供を持つなんて尚更だ。

 だけどペットを飼うだけであれば、疑似的に体験する事が出来るんだ。だったら俺も、そのつもりでマサツグの面倒を見よう。

 毎日ずっと一緒に居るわけじゃないけど、美佳子さんと2人で大切に育てようと心に決めた。

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