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第81話 思わぬ買い物

 美佳子(みかこ)さんの協力によりデパコスデビューを果たした俺は、そのまま美佳子さんと駅前の繁華街をブラブラしていた。

 欲しい物があったら買ってみたり、ただのウインドウショッピングで済ませたり。

これと言って特に目的のないフリーダムな時間だが、これはこれで悪く無い。

 デートって目的ありきのイメージがあったけど、案外こんな無計画な過ごし方でも楽しいものだ。

 適当に行先を決めていた俺達だったが、ふと美佳子さんがペットショップに行こうと言い始めた。


「何か飼うんですか?」


「今は咲人(さきと)のお陰で基本部屋が綺麗だしね~」


「まあそうですけど、それが理由で良いのかなぁ」


 以前の様な散らかり具合であれば、ペットなんて危険過ぎてとても飼える状況じゃなかった。

 下手に動物が好き勝手に動いて、火種でも落下したら大惨事は確定である。室内は常にアルコールで満たされているだけに、火災の危険性は非常に高い。

 だいぶ解消はされているので、流石にそこまでの危険はないけど。ただペットを飼う場合は、流石に電子タバコへの完全移行はして貰った方が良いよな。


 鳥とか猫とか飼う場合、あの部屋に紙巻きたばこはNGも良い所だ。電子タバコは火を使わないので比較的安全と言える。

 美佳子さんの家で家事代行を始めるまでは、父さんが吸っている紙巻きタバコしか良く知らなかった。

 美佳子さんが使っているのを見て、電子タバコがどういう物か初めて知った。高校生でタバコに詳しいのもどうかとは思うけど。


「散歩は面倒だし、一緒に寝たいしやっぱ猫かな~」


「飼うなら紙巻きタバコの方はやめて下さいよ?」


「もちろんだよ! 火傷したら可哀想だし」


 いや、火傷では済まない可能性があるからなんですけどね。いちいちそこまで言わないけれども。

 まあ飼うのは本人の自由だし、動物が居たら今よりは美佳子さんも、ゴミとか気をつける様になるかも知れないし。

 誤飲とかしてしまったら大変だしな。幸い食べてしまうそうな物はあんまり無いのが救いか?

 散らかっているのは大体缶ビールとかペットボトルとかだし。ああ、でも食べた後のファーストフード関係のゴミがやや不安か。

 フライドポテトの残りカスとか、食べちゃうかも知れない。本当に飼うとなったら、俺が一層気を付けないといけないな。


「いやぁ~どの子も可愛いねぇ」


「子猫って異様に可愛いですよね」


「やっぱりアメショはベタだけど良いなぁ」


 結構大きなペットショップに入った俺達は、犬や猫のコーナーで色んな子猫を見て回る。

 ここはペットホテルやトリミングもやっているみたいで、駅前にしては結構な広さを誇っている。その分展示されているペット達の種類も豊富だ。

 爬虫類や鳥も扱っているらしく、様々なお客さんが訪れている。俺は特に嫌いな動物はいないので、見ているだけでも結構楽しい。

 熱帯魚とかもわりと飼うのは楽しそうに見える。あれはあれで結構大変らしいけど。猫が良いと言いつつも、俺達は結局色んなペットを一通り見て回った。


「トカゲも可愛いとは思うけど、虫を家に置きたくないや」


「餌がコオロギとかですもんね」


「うん、やっぱ猫だね」


「でも結構な値段してますよ?」


 人気だからか、子犬や子猫の価格はかなりのもの。20万円で安い方で、30万円を普通に超えている。

 所謂血統書付きというやつで、しっかりとしたお店であるが故なのだろう。少し成長してしまった関係で、値下げをされていても10万ちょいはしている。

 人気の犬種に至っては100万円を超えている。恐ろしい世界だけど、美佳子さんから見れば大した事はないのだろうか。

 一般庶民に過ぎない俺には、凄く高価な買い物に見えてしまう。50万円の子猫は確かに凄く可愛いけれど。

 こんな小さな命でも、中古車と変わらない値段だ。いや命だからこそ、なのか?


「これぐらいなら平気平気! ん~マンチカンも悪くないなぁ」


「猫を飼った事はあるんですか?」


「昔実家でね~。あの子はサイベリアンだったけど」


 経験者であるなら特に心配する必要もないか。こればかりは申し訳ないけど、この人に子猫が飼えるのだろうかという不安はあった。

 思い付きで未経験者が飼うのなら、色々と問題があるだろう。でもそうでないのならまあ安心、か?

 猫は犬みたいに散歩をしなくても良いから、良く昼夜逆転な生活をしている美佳子さんでも大丈夫だろう。

 それに小型犬ではあるけど昔うちで飼っていたから、俺も多少なりとも手伝えるだろうしな。

 犬とは色々と違うけど、ペットという範疇では似た様な動物なわけだし。それに猫にも多少は興味がある。


「おお!? 何かビビッと来たよこの子!」


「ペルシャ猫、ですか」


「気が合いそうな見た目をしているよ!」


「うおっ、40万円……」


 同じペルシャ猫が20万円ぐらいで展示されている中で、一際目立つシルバーのペルシャ猫。

 もちろん血統書付きであり、両親がキャットショーで受賞した経歴を持っている優秀な子供らしい。

 なるほど、それで他のペルシャ猫より倍の価格がついていると。まだ生後3ヶ月の生まれて間もない子猫であり、非常に可愛らしい見た目をしている。

 しかし幼いながらも、気品を感じさせる見た目だ。外出モードの美佳子さんにはお似合いに見える。

 美佳子さんは相当気に入ったのか、店員さんを呼んで抱かせて貰っている。その姿が妙に可愛くて、少しだけドキッとさせられた。


「よし、この子に決めた!」


「決めるの早くないですか?」


「こう言う時はね、直感を信じるものなんだ」


 随分と美佳子さんらしい理由で購入が決まった。それから最低限必要なケージや餌、猫用のトイレなどを追加で購入し50万円近い買い物を済ませた。

 フラッと出掛けた割に結構な買い物をした美佳子さんと共に、新たな家族を連れて帰る事になった。

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