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第299話 幼馴染達の来訪

 春休みを利用して、夏歩(なつほ)和彦(かずひこ)芽衣(めい)を見にやって来た。生後7ヶ月を過ぎた芽衣は、少しだけハイハイが出来る様になり座る事も出来る様になっている。

 その姿を見て夏歩が、とても喜んでいた。やっぱり夏歩も女の子なんだなぁと改めて思う。

 昔はおままごとに何度も付き合わされたっけ。もうそういう年齢ではないけれど、多分本質的には同じなのかなって。

 やっぱり大なり小なり、母性という物は幼い頃から身に着いているのかな。おままごとって、実際お母さん役とかやる訳だしね。


「滅茶苦茶可愛いね! もう話せるの?」


「言葉らしい言葉は、まだもう少し先かなぁ」


「お前が父親をやってる姿を見る日が来るなんてなぁ」


 和彦の言う様に、誰もこんなに早く父親をやるなんて思わなかっただろう。俺だって昔は、そんな事を想像もしていなかった。

 まさか大学生で父親になるなんてさ。そういうのは大人になってからだと思っていたから。

 法律的に言えば俺はもう大人の側だけどさ。今年で3年生になるし、夏にはインターンシップで銀行に行く予定。

 高校で陸上部の顧問だった勝本(かつもと)先生から紹介して貰った地方銀行だ。先生の同級生が実業団に所属していて、コーチをやっているらしい。

 そんなアレコレをしている内に4年生になって、その次はもう社会人だ。時間の流れは思った以上に早い。


「2人だって、言っている間に親になるんじゃない?」


「うーん、まあ私は20代の内に欲しいかな」


「が、頑張って働くさ」


 確かに俺は早い方ではあるけど、20代半ばで出産する人もそれなりに居る。30歳前後が増えているとは言え、あと数年で2人が親になる可能性は十分あるだろう。

 和彦はプロから注目をされているから、もしプロ野球選手になれば収入は足りるだろうし。

 まあ2人が話し合って決める事だから、俺から必要以上に問う事ではないけど。ただ2人にも子供が出来たら、是非とも芽衣と仲良くなって欲しい。

 大人になってもそういう形で、交流が続けられたら楽しいと思う。あわよくば子供達も、俺達の様に長い付き合いになれば嬉しいよね。


「ああ、2人共いらっしゃい」


「お邪魔してます篠原(しのはら)さん」


「お久しぶりっす!」


 夜泣きであまり睡眠が取れていなかった、美佳子(みかこ)が仮眠から起きて来た。俺はまだ体力的に余裕があるけど、美佳子の方はそうもいかない。

 箱根駅伝の4区で区間2位を取れた俺と、美佳子が同じだけの体力を持つ筈も無く。どうしても限界が来るのは美佳子の方が早い。

 だからなるべく寝られる時は寝て貰っているけど、芽衣はまだ母乳を欲しがる時がある。

 殆どは離乳食で済むけど、夜にどうしても泣き止まない時は大体母乳を求めている時だ。

 ミルクで誤魔化せないと、最終的には美佳子に頼むしかない。俺はまだ若さでゴリ押しが出来るけど、美佳子は結構辛そうだ。


「篠原さん、やっぱり母親って大変ですか?」


「そうだよ~昨日も夜中に泣いてさあ」


「あれは激しかったよなぁ」


 夜中の2時に芽衣が大号泣で、それはもう大変な目に遭った。何をやっても収まらず、色々試したけれど理由が不明。

 最終的に泣き疲れたのか、母乳を飲んで寝てくれた。結構な時間を取られたので、俺達はまあまあ寝不足だ。

 朝は5時から芽衣が起きてしまい、トータルで5時間寝たかどうかという状況。そんな日が続くと、どうしても寝不足気味になってしまう。

 個人差があるけれど、大体1歳半から2歳まで続くらしい。暫く芽衣の夜泣きと付き合い続けないといけない。

 うちはまだマシな方と聞いたので、激しい子はもっと激しいのだろうな。想像するだけで大変そうだ。


咲人(さきと)が頑張ってくれるから、何とかなっているけどね」


「あ~咲人は夜中でも起きそうですよね。和彦は絶対起きないけど」


「お、おい夏歩、そんな事はないぞ」


 いや絶対に起きないだろ。それについては俺も同意見だ。昔から一緒に寝ていて、途中で起きた事なんてない。

 地震が来ても寝ていたぐらいだし、夜泣きで起きるとは思えないな。そこだけは夏歩が頑張るしかないだろう。

 昼間は和彦に出来るだけ丸投げにすれば良い。俺と同じで体力は有り余っているだろうし。

 まあでも何だかんだ言いながら、上手い事やっていくだろうね。なんせ小さい頃から知っている仲なのだから。

 得意な事や苦手な事は全部分かっているからね。今までもそうだった様に、夏歩に怒られながらも和彦が頑張っていくのだろう。


「にしても芽衣、やっぱり人見知りを全然しないなぁ」


「確かにそうだねぇ。夏歩ちゃんと和彦君にも興味を持っているし」


「そうなの~芽衣ちゃん?」


 夏歩に抱かれている芽衣は、全然嫌そうな素振りを見せない。むしろ遊んで貰って喜んでいる。

 病院に連れて行っても、他の子達や人々に興味津々という感じだ。人見知りを全然しない子なのかも知れない。

 友達作りには苦労しなさそうで、良い傾向ではないだろうか。これからこの子が成長していく過程で、どういう風に育つのだろう。

 美佳子みたいな女の子になるのか、それとも夏歩みたいなタイプになるのか。VB(ブイビー)の事もあるから、将来目指す見本となる女性は沢山周囲に居る。


 芽衣はどんな女性になる事を夢見るのだろう。そしていつかは結婚して、俺達の手から離れていく。

 俺はそれを素直に見送れるだろうか。うーん……どうせだったら、和彦と夏歩の子供が男の子であったら良いなと思う。

 それならまあ、特に引き留める理由はないかな。友達としては良いけど、一哉みたいな男を連れて来たらちょっと嫌かも。

 ま、まあそんなのまだまだ先の話だしな。今は娘の成長をただ見守って行こうと思う。

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