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第294話 園田マリアの重大発表

 妊娠が分かってからも、美佳子(みかこ)は配信をやめなかった。報告こそまだしていなかったが、これからその発表が行われる。

 元々リスナー達からもそれを望まれていたし、社長自身がこのスタイルを見せる事で他の所属ライバー達への示しにもなる。

 VB(ブイビー)では恋愛も結婚も自由なのだと、見せておけば後に続き易い。流石に大手Vtuberでは厳しいだろうし、同じ事をするのは困難だろう。


 ガチ恋営業ではやっていない個人スタートだからこそ、取る事の出来るスタンスだ。

 そして本日遂に、園田(そのだ)マリアから重大発表が行われる枠として配信がスタートした。

 日曜日の夜22時なのもあって、開幕からリスナー達は8千人ほど集まっている。


「あんまり雑談していても良くないからね、早速発表します! 実はボク、もう妊娠していて安定期に入りました!」


『マーーーー!?』

『えっ、じゃあ最近の体調不良って』

『¥5000 お祝い』

『¥10000 おめでとう!』

『¥500 ミルク代』


 恋人が出来たら報告するし、子供が出来ても報告する。ファンとした約束は必ず守るのが園田マリアの方針だ。

 ここ最近は体調不良を理由に配信を休む事が増えていたので、もしかして出来たのでは? というファン達の声が上がっていた。

 逆に上手く行かなくて、精神的に落ち込んでいる可能性も示唆されていたが。ともあれこうして発表されたので、不安に思っていた層もこれで安心する事が出来た。

 妊娠を祝う投げ銭が飛び交い、コメント欄が物凄い速度で流れて行く。やっぱりそうだったのかというリアクションと、おめでとうと祝うコメントが殆どを占めている。


「万が一って事もあるから、安定期に入るまでは黙ってたんだ。ごめんね報告が遅くなって」


『ついにマリアにも子供が』

『良いなー私も子供欲しい』

『やっぱつわりってしんどいんけ?』

『男の子? 女の子?』

『なんか孫が出来た気分』


 安定期に入るまでの質問が幾つかあったので、それまでの経験を語る美佳子。咲人(さきと)がかなり気を遣っていたので、食事についてはあまり困らなかった。

 でもやっぱりつわりのキツイ時期もあって、いつもの時間に食べられない時も。しんどい時期は咲人が陸上やバイトを少な目にして、極力家に居る様にしていた。

 それもあってメンタルが不安定な時も寄り添えたし、思う様に動けない時も大体咲人が家に居たので問題にならず。

 大学1年生であったのもあり、空いた時間は全力でサポートに回っていた。その甲斐もあって、安定期までの期間はかなり穏やかに過ごす事が出来た。

 ちなみに2人の子供は、女の子である事が判明している。今は2人で娘の名前を考えている最中だ。


『やっぱり婚約者の彼が有能過ぎない?』

『うちの旦那ガーガー寝てたよ』

『どこでそんな男性見つかる?』

『深夜に泣いてたら起きて抱き締めてくれるマ?』

『ごめん少女漫画に出て来る男子の話してる?』


 美佳子としては過保護な咲人の話をしたつもりだったが、女性リスナー達から咲人の行動が大絶賛の嵐になっていた。

 例えば夜な夜な不安になって、1人で泣いていたら咲人が起きて来て慰めたというエピソードがある。

 美佳子としては少々メンヘラが過ぎたなぁという話だったが、それよりも咲人の行動の方が注目されてコメント欄が困惑してしまう。


 妊婦さんが辛い時に、彼氏や旦那が何もしてくれないという話は良くある。一方で咲人は、出来る限りの全てを全力で行った。

 社会人ではないからこそ、沢山の時間を美佳子に割けたというのもあるのだが。そうでないと、ここまで寄り添うのは難しい。

 彼氏が大学生である事は伏せているので、その事を知らない故の勘違いも一部では見受けられた。


「なんか自慢みたいになっちゃった? ごめん、そんなつもりは無かった」


『羨ましいもっと謝って』

『超素敵じゃんそんな彼』

『マリアの彼氏がSSR過ぎる』

『こーれTier1です』

『おじさん達の肩身が狭すぎる』


 暫く妊娠中のあるある話が続いた後に、本命の発表が公開された。それはVBが主催を務める、美羽(みう)ワンダーパークでのリアルイベントだ。

 イベントスペースでの交流会や、コラボグッズの販売、コラボメニュー等が配信画面に表示された。

 全てではなく現時点で画像が用意出来るものだけだが、それでもかなりの量が表示されている。

 参加している個人勢配信者は30人もおり、Vtuberではない顔出し配信の人達も数名含まれていた。

 結構な規模感での発表となり、リスナー達が大いに沸き上がっていく。


「期間は夏休みに合わせたから、学生さん達も良かったら来てね」


『うわメンバーすげぇ』

『握手会ある!』

『え、やばどうしよう』

『ようこんなに集まったな』

『久々に行くか~ワンダーパーク』


 元々マリアがワンダーパークの親善大使をしているので、行った事のあるリスナー達は多い。

 ただ全域を使うレベルでのコラボは初めてだったので、リスナー達の驚きは大きい。

 今回はVB全員が参加するので、事務所としてもマリア以外の限定グッズなどの販売が決まっている。

 他に外部から参加する個人勢も有名な人々が集まっているので、話題性は高くSNSでも拡散された。

 次の日の朝まで、ワンダーパークがトレンドに載っていた程だ。先行しての情報だけでも、結構な注目を得られたと判断しても良いだろう。


「ボク今回結構頑張ったから、皆が楽しんでくれると嬉しいかな」


『身重やのにようやる』

『絶対行きます!』

『リピートするわ』

『お父さんに車出してもらおう』

『仕事だけは有能やねんなぁ』


 妊娠期間中ながら美佳子は打ち合わせなどを精力的に行い、こうして実現する事が出来たのは咲人の支えがあったからだ。

 このコラボが開始されるのは7月の上旬からで、美佳子の出産予定日は7月の頭となっている。

 全員のスケジュールを考えたら、夏にしか開催出来なかった。生まれて間もない娘の面倒を見つつ、イベントへの参加は難しいので美佳子は今回現地入りが出来ない。


 そもそも産後で肉体的なダメージも大きく、流石に美佳子もそこまでの無茶は難しいだろう。

 その点についての謝罪があったが、リスナー達は家で大人しくしていろの大合唱で誰も不満を述べていない。

 美佳子の出産とワンダーパークでのイベントについての発表が行われ、今回の配信もいつも通りに盛り上がるのだった。

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