第293話 子供の名前はどうしよう
美佳子との間に子供が出来たと分かって以来、つい色々と気になって心配してしまう。
何処かで事故にあったりしないかや、何かに躓いて転んだりしないかと凄く気になるんだ。
心配し過ぎなのは分かっているけど、どうしても考えてしまうのは仕方ないよね。ただあまりに心配しているものだから、夏歩には呆れられてしまったけど。
そんなに変な事だろうか? 恋人や奥さんが妊娠していたら、普通は滅茶苦茶心配すると思うけど。
今日だって日曜日だから出掛けようと美佳子が言うから、念には念を入れて周囲に警戒の目を向けつつ歩いている。
美羽駅前は人が多いから、しっかり気を付けないと。だってほらぶつかりおじさんとか、妊婦に嫌がらせをする人とか居るって言うじゃないか。
少なくとも俺は見た事がないし、周りでも被害に遭った人は居ないけどさ。でももし居たらと考えてしまうんだよ。
「ねぇ咲人、気にし過ぎじゃない?」
「念の為、念の為だから」
「気持ちは嬉しいけど、普通にして欲しいかな」
それを言われてしまうと、何も言い返せないというか。周囲への警戒感を減らして集中を切る。
確かにデート中の態度としては良くないしね。警戒は続けるけど、意識はもっと美佳子に向けよう。
まだ10週も経っていなから、美佳子の見た目からは妊婦には見えない。でもその内お腹は大きくなっていくのだろうな。
美佳子はジム通いで体型を維持しているから、お腹の大きな美佳子はちょっと想像つかない。
多分美佳子は体型を崩さない為に色々とやるだろうから、そこまで大きくはならないのかも知れないけど。
何であれ美佳子は美佳子だから、仮に妊娠を理由に太ったとしても俺は気にしない。
「そんなにお腹が気になるの?」
「え、いや、どれぐらい大きくなるのかなって」
「それはこの子次第じゃないかなぁ」
俺達の子供は、まだ性別すら分からないままだ。大きな子に生まれるか、小さな子で生まれるかも今は未知数。
男の子でも女の子でも、俺は別にどちらでも構わない。子供とやりたい事が何かあるわけじゃないから、どちらであったとしてもガッカリする事は無い。
せいぜい息子だったら、無難にキャッチボールぐらいはやってみたかも。女の子だったら、美佳子が張り切るんじゃないかな。
服とか一緒に楽しく買い物に行きそうなイメージがある。どんな未来が待っているかは、まだまだ分からない。
でもそうだ、今の内から考えないといけない事があった。俺達の子供にはまだ名前の候補すらない。
「名前はどうしようか? 女の子場合と、男の子の場合でそれぞれさ」
「うーん。ちょっと早い気もするけど、咲人ならどんな名前にしたい?」
「俺? うーん…………俺達が美佳子と咲人だから、読みが3文字とか? いやでも……」
そう言えば姓名判断とか画数占いとかもあるんだよな。親になる以上は、そう言う事も考える必要があるよね。
となればいざ書店へという事で、名付けに関わるコーナーに来てみたけど多いな。こんなに沢山の名付け関連の本が売られているのか。
五行がどうとか太陽やら月やら、星がどうだとか本当に色々と有り過ぎる。どれが良いとか良く分からないからなぁ。
成功者になれる名前だとか、書いてあるけどピンと来ないや。名前は大事だと思うけど、これだけの知識を全部は覚えられないし。
良さそうな本を数冊程度で良いとは思う。何冊も置いてある本は、それだけ売れているって判断して良いのかな?
「美佳子、良さそうなのあった?」
「この作者さんが有名な占い師なのは知っているんだよね」
「へぇ~そうなんだ。俺は知らないなぁ」
東京の有名な占い師らしく、芸能関係者が良く利用するらしい。美佳子はモデル時代に一度利用して、結構当たっていたそうで。
実績があるなら信憑性は高いと思って良いのかもね。女性って占いとか好きだよね、俺は全然興味が無いから良く分からないけど。
とりあえず美佳子が知ってい占い師さんの本と、他に3冊ほど買って帰る事にした。今すぐ決めないにしても、いつかは決めないといけない。
適当に決める事じゃないから、しっかりと考えて決めてあげたい。あ、そう言えば父さん達はどうして咲人って名前にしたんだっけ?
小学校の頃に、親から名前の由来を聞いて来るって宿題があったんだけどなぁ。今となってはもう全然覚えていない。
「美佳子は自分の名前の由来とか覚えてる?」
「え~何だっけな? 確かおばあちゃんが決めた筈」
「ああそうか、そういうパターンもあるよね」
親の両親が決める場合もあるから、俺達もどうするか聞いた方が良いのかな? 美佳子の実家には報告に行ったけど、名付けの話までは出ていなかった。
ウチの父さんも特に何も言って来なかったから、孫の名付けには興味が無いのかも知れないな。
むしろ40代でおじいちゃんかと、ただ遠い目をしていた程度だ。それについては諦めて貰うしかないよね。子供を作る宣言もしていたわけだし。
40代半ばでおじいちゃんになるのは、少々辛いかも知れないけど。でも老人になってから孫の相手をするよりは、体力的な余裕があって良いんじゃないかな。
預けないといけない時もあるだろうし、俺達が住む美佳子の家からウチの家は近いしね。
「美佳子のお母さん達は、孫の名前を決めたがるかな?」
「どうかな~? 特に何も言って来てないけど」
「今度聞いといてよ、俺も聞いておくから」
我が子の名前について考えるのは、楽しくもあり幸せな時間でもあった。もし女の子だったら、美咲はどうかという話が出たけど微妙な結果に。
あまり良くはない運勢だったので、保留する事になった。美佳子の美と、咲人の咲で良い名前だと思ったんだけどな。
子供の名前を考えるのって、案外難しいんだなと知る良い機会にはなったけどね。




