第285話 咲人と美佳子のイチャラブ同棲生活
俺が大学に入学する前から、美佳子は禁煙と禁酒を頑張っている。それも病院に通う程に真剣な方法で。
いざ言葉にすると少し照れてしまうけれど、所謂妊活というものと大いに関係していた。
今から子供を作ろうと思うのなら、喫煙も飲酒もご法度なので当然の話ではあるのだけれど。
これまでにやっていた、自称禁煙等とは挑む気力が段違いだ。禁煙外来に通い薬を処方され、吸いたくなった時に噛む専用のガムまで用意されている。
ビールは全面禁止となり、アルコールゼロのノンアルに切り替えた。そんな生活が2月から続いており、そろそろ禁煙外来に通うのも終わりそうだ。
聞いた話では12週間ほど掛かるらしく、もう少しで禁煙に成功するだろう。今朝から美佳子は随分と落ち着いた雰囲気だ。
以前の様に吸いたくて我慢している様子はない。19時を過ぎたけど、穏やかな様子を見せている。
「あれ? もうガム要らないの?」
「そうだよ! ねぇ凄くない!? ボクめっちゃ頑張ったよね!?」
「うんうん、良い傾向だね」
4月1日から同棲をスタートした俺達は、まあそれなりに同棲カップルらしい生活をしているのかな?
他の同棲している恋人達がどうしているのか、いちいち聞いたりはしないから良く分からないけどさ。
いつもの様に俺が家事をして、美佳子が稼ぐ毎日だ。そこだけ見るとヒモっぽいけど、ちゃんとバイトはやっている。
働いているのは高校1年生だった時に、美佳子と2回目の祝勝会をやったあの洋食屋さんだ。
あそこで様々な料理も教わりながら、キッチンとウェイターの仕事をやらせて貰っている。
募集条件が18歳以上の高校生不可だったから、前から興味はあったけど諦めていたんだよね。
美佳子の家から近いので、生活に支障は特に出ていない。そして調理師免許の取得についても、店長に協力して貰える。
個人経営に関す注意点なんかも教えてくれるから、とても良い経験が出来ていると思う。婚約者との同棲も含めて、毎日がとても楽しい。
「という事で、お風呂に入れて下さい!」
「あ、うん。良いよ」
「お願いしまーす!」
俺が大学生になってから、俺の家事にお風呂係が追加された。それはお風呂を用意するという意味ではない。
美佳子をお風呂に入れて、洗ってあげるという業務だ。以前からそんな事を言っていたけど、本当にガチでやる事になった。
これまでの美佳子は、面倒臭いけど自力でどうにか入浴を続けて来たらしい。しかし俺が高校生では無くなったので、美佳子は全力で甘え始めた。
正直これは、半分はご褒美に近い。作業ではあるのだけれど、美佳子は滅茶苦茶スタイルの良い大人の女性だ。
一緒にお風呂に入って、頭や体を洗ってあげるわけで。人によっては面倒だと思うかも知れないけど、俺としては全然ウェルカムです。
「はい、こっち向いて」
「はいはーい」
「じゃあ洗うね」
最初の1週間ぐらいは、それはもうドキドキした。今もそれなりに緊張はするけど、冷静にこの状況を楽しめる様になって来ている。
美佳子と大人の恋愛的な行為をする様になったからか、少しだけ耐性が出来たのだろう。
高校生の時にこんな状況になっていたら、色々と大変な事になっていた。だけど今は、何も障害となるものはない。
その後に配信の予定でも入っていない限り、お風呂でそのまま大人の展開になる事だってあるのだから。
美佳子から誘う場合もあるし、俺から誘う場合もある。その時の気分次第ではあるけれど、美佳子からお風呂を言い出した時は大体そういう意味だ。
「ねぇ咲人~~禁煙頑張ったボクを、もっと愛して欲しいな」
「今洗った所なのに?」
「咲人の愛が欲しいなぁ~」
可愛すぎるだろうこのお姉さん。全てが解禁となってからの美佳子は、結構な頻度でこうして甘える様になった。
今思えばこれまでの美佳子も、それなりに我慢していたのだろうか。美佳子だって性欲があると、自分で言っていたからなぁ。
ここまで込みでのスキンシップを、俺と取りたかったのかも知れない。夕飯の用意もしないといけないけど、正直ここで断る選択肢はない。
それに禁煙と禁酒を行っている美佳子は、ダイレクトに良い匂いがして非常にマズイ。誘惑に完全敗北した俺は、美佳子と暫く風呂場に居た。
「やっべ、晩御飯作らなきゃ」
「今日はドライヤー、ボクが自分でやるよ」
「分かった、先にあがるね」
本来このお風呂係は、ドライヤーまでが俺の仕事だ。けれども状況次第では、こうして美佳子が自分でやる。
確かにお風呂が面倒臭いのは本当だろうけど、本音としては甘える時間が欲しいのだろう。
少なくとも俺はそんな風に捉えている。お互いに裸のままで向き合う事で、何も取り繕わない時間が過ごせるから。
なんていうのは、良い意味で捉え過ぎだろうか? 性的なイベントが無かったとしても、美佳子と湯船に浸かっている時間は楽しい。
今日は大学で何があったかとか、美佳子がどうしていたか等。何気ない会話を交わし合う2人の時間を、湯船の中でリラックスしながら共有する。
とても穏やかで、気分が良い。まあ若干忙しないタイミングもあるけどさ。そこはまあご愛嬌って事で。
「あ、ごめん美佳子! 何が食べたい?」
「ハンバーグ!」
「分かった!」
最近の俺は洋食のレパートリーが結構増えている。もちろんバイトの影響だ。元々家庭料理なら大体作れたから、プロの技を知って料理のレベルが上がった。
自惚れではなくて、店長からも褒められたぐらいだ。店の秘伝をバラさない範囲でなら、動画に出しても良いと許可を頂いた。
お陰で最近は、そっちの方もかなり充実している。チャンネル登録も結構増えて、昨日3万人を突破した。
とは言え流石に美佳子達と比べたら、まだまだ知名度は高くない。目的が人気になる事ではないけれど、もう少し意見や感想が欲しいなと思う。
このレシピが美味しかったとか言って貰えると、作った身としては凄く嬉しいからね。そんな感じの毎日が、今の俺にとっての日常だった。
『第51話 二度目の祝勝会 前編』で登場したあの洋食屋さんです。




