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第282話 園田マリアのゲーム配信⑨

 11月最終日の夜、園田(そのだ)マリアのゲーム配信が行われている。本日は春川(はるかわ)エイラとのコラボ配信でもあった。

 今回プレイしているのは、ここ数年流行っている1人~4人までの協力プレイのゲームだ。

 ホラーやサバイバルなど、様々なジャンルで人気が出ている形式だ。ソロプレイも可能だが、どちらかと言えば友人達と一緒に遊ぶ方が面白い。

 特にこの様な形でVtuberや配信者が配信で扱い易い人数でもある。2人~4人の範囲で集まって、コラボ配信として行われる事が多い。


 あえてソロでやるというスタイルも、配信者のキャラクターやスタンスによってはウケが狙える。

 エイラの様な引っ込み思案なタイプであれば、ソロでも視聴者が集まるだろう。逆にマリアの様なキャラであれば、こうして誰かとプレイする方が合っている。

 そんな2人が遊んでいるのは、登山とサバイバルを掛け合わせたゲームだ。何故か分からないが、頂上まで登るというゲームは根強い人気がある。

 シンプルな目的で、見ていて分かり易いからだろうか。今回の作品も『Climbing(クライミング)』と随分単純なタイトルだが、全世界で人気のあるゲームだ。


「あれ~? ボクもしかして、ロープ忘れて来たかも」


「ちょっ!? マリア!? 持って来てないの!?」


『初っ端からグダってて草』

『フックショット作れないやんw』

『素手縛りか?』

『ほんまこの2人』

『学生時代もこうだったんだろうな』


 本作はサバイバルクラフトの要素を取り入れており、プレイヤーは遭難者という設定である。

 救助に来て貰う為に、山頂まで登るという内容だ。途中で落ちている物資を集めて、便利な道具を作りながらクリアを目指す。

 素手だとかなり難易度が上昇し、落下死の危険性が跳ね上がる。序盤はロープと特定の資材を組み合わせて、フックショットを作成するのがセオリーだ。

 しかし忘れて来てしまったので、取りに戻るハメになった。1人が持てるアイテム数には限度があり、持って行く物と諦める物の選択を迫られる。

 今回は普通に美佳子(みかこ)のミスであった。せっかくフックショットを作れるエリアまで来たのに、肝心のロープが足りない。


「何でそんな大事な物忘れるかなぁ!」


「最悪エイラが持って来るかなって」


『普通のVtuberならてぇてぇなのになぁ』

『この2人だと腐れ縁感が勝つ』

『百合ではないよな。悪友みたいな感じ』

『仲良いのは分かるけどね』

『汚部屋カプとか、ちょっと絵面がね』


 中学時代から親交があるだけに、美佳子(マリア)(エイラ)が一緒の時にはポンコツ化し易い傾向がある。

 やってくれているだろうとか、今回みたいに持って来てくれるだろうという方向性でミスを犯す。

 気を許しているのもあり、それ以外の時より脇が甘くなりがちだ。ある意味甘えのようなもので、お互いそういう面がどうしても出てしまう。

 そんな2人の関係性がリスナーからは人気で、こうしてコラボ配信をすると結構数字が伸びる。

 夜21時台にも関わらず、同接ランキングで10位になっていた。そんな中で美佳子は、正社員第1号が決まった話を雑談として披露する。


「は!? 私聞いてないんだけど!?」


「だってエイラはこの枠で話せるし、どうせ人見知りするから後でも変わらないかなって」


『業務連絡ぅ!』

『理由が納得出来てしまえて涙が出ますよ』

『絶対コミュ障発揮するもんなぁ』

『マネージャーと会話出来なさそう』

『大丈夫? お話出来る?』


 美佳子の懸念はその通りで、(あきら)に関しては人見知りという問題を抱えている。本来ならほぼ身内に近い咲人(さきと)でさえも、まともに会話が出来ないレベルだ。

 言うまでも無く新しくマネージャーになった荒井美玲(あらいみれい)とは、暫くまともに会話が出来ないだろう。

 当面は美佳子を交えたやり取りが続く事は確定している。旧知の仲であるが故に、理解されてしまっているのは悲しむべきか喜ぶべきか。


 晶としては非常に微妙な気分だが、自分が悪いのは理解しているので反論は出来ない。

 ネット弁慶なのでVtuberはやれているが、社会生活に向いていない面がどうしてもある。

 Vtuberにイラストレーターという適職が無ければ、引きこもりになっていても不思議ではない。


「ちなみに1号さんは、3年前の汚部屋企画で採用した人です」


「あっ……ちょっと仲良くなれるかも」


『えぇ……』

『そんな事ある?』

『汚部屋の民に優しい事務所』

『まあ社長がアレやし』

『汚部屋暮らしの希望』


 大体のリスナー達は、咲人とそう変わらないリアクションを示している。しかし一部のリスナー達の間では、VB(ブイビー)に就職したいと言い出す者達が居た。

 言うまでもなく汚部屋の住人達である。労働条件もそう悪くないので、妙な人気が出始めた。

 この件以降のライバーや社員の募集には、汚部屋の住人が増えるという未来が待っている。


 今はまだそこまでの規模ではないので、募集は一旦終了しているが。ただしこれから先の展望として、もう少し規模を拡大するつもりで美佳子は動いていく。

 それもあって、美佳子は事務所を倉庫として使っていたビルへと移行した。その方がグッズの発送作業もやり易いし、何より咲人が卒業すれば同棲を始める。

 自宅兼事務所を続けるのは、どの道厳しい状況にあった。受験優先の咲人には事後報告になったが、すでにネット回線を入れる等の工事は完了済みだ。

 美玲との初顔合わせ後に、その件について咲人に告げられた。事務所として公開している住所は元々雑居ビルの方なので、リスナー達にその話を教える必要はない。


「これからも色々とやって行くからよろしくね!」


「それって私の仕事が増えるんじゃ……」


『りょ!』

『はえ~何か知らんけど凄い』

『昔を思えば大きくなって来たなぁ』

『どこまで行けるか楽しみ』

『がんばえ~~』


 皆の推し活は無駄ではないよとお礼を言いつつ、美佳子は晶と共に配信を続けていく。

 個人勢Vtuberだった頃と比べれば、社員を雇う所まで来たというのはファン的にも嬉しいもの。

 皆で楽しい時間をもっと大きくして行く。その想いで突き進む美佳子の未来には、きっと明るい世界が待っているだろう。

話の内容とは全然関係ないのですが、エイリアン・アース観たさにディズニープラスに加入しました。

個人的には面白いのですけど、これまた賛否が分かれそうな内容をぶち込んだなぁと。

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