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第266話 将来設計と卒業後の予定

 最早定番となった予選後の祝勝会が、美佳子(みかこ)の家で行われている。今回も美羽(みう)高校は1位通過で、トラブルも無くとても順調な滑り出しだ。

 今回は俺が1区を担当する事になり、逆に(さとる)が7区のランナーを担当する。冬の大会とは逆の立場になったけど、お互いに信用しているので不安はない。

 予選でも全員が見事な走りを見せて、かなりの余裕を持ってゴール出来た。あとは本戦で連続優勝を勝ち取るだけ。

 最高の形で後輩達にバトンを渡したいと思っている。そちらの方は不安もないし、悩む事はもう何も無い。

 事故にだけは最大限気をつけようと思っているけど。でも今はそれよりも大事な事がある。


咲人(さきと)が受験だから、今年の夏休みは出掛けるのを控えめにしないとね」


「そうなんだよ。残念だけどさ」


「その代わり来年は一杯出掛けようね」


 高校を卒業した後は、大学に進学する。だから今年の夏休みは、悲しいけど遊んでばかりは居られない。

 去年の時点から幾つかの大学からお声掛けは貰えているけど、だからと言って試験が無くなる訳じゃない。

 大学もスポーツ推薦で入れそうだけど、入試そのものは免除されない。推薦があるからって、適当な事をしていたら落ちてしまう。


 それに大学での成績が悪過ぎても、同じく問題になるだろうし。他にも在学中に問題を起こして、推薦を取り消された実例もあるんだ。

 天狗になってしまわない様に、これからも気を引き締めていきたい。とりあえず大学に行っておこうなんて、適当な理由で進学するのではないのだから。

 これから美佳子と一緒に生きて行く為の、大事な進路と将来設計の一環だ。いい加減な事なんてやってられない。


「結局咲人は美羽大学を第1志望にするんだっけ?」


「うん、そうだよ。陸上が強いし、()()()()も通えるしね」


「言っている間に、咲人が大学生になるんだよねぇ」


 去年から具体的に考えていた進学のルート。第1志望には高校と同じく、美羽市にある美羽大学を選んだ。

 陸上競技が結構強い大学だし、有名なスポーツ選手も輩出している。聞いた話では芸能人も何人か在学していたらしい。

 学費と通学時間、そして就職面での強さ。そのどれもがバランスが良くて、どこから見ても理想的だ。


 体育学部の実績も優秀で、不満に思う様な欠点が無い。何よりもここからそう遠くないので、何かあってもすぐ帰って来られる。

 忘れてはいけないのが、美佳子の年齢と子供だ。35歳までの妊娠を望む場合、1年生から3年生にかけての期間が妊娠期間になる。

 その期間中は出来るだけすぐに、ここに帰って来られる距離が良い。俺には収入が無い代わりに、家事を中心に貢献するつもりだ。


「あと1年もしない内に、ボク達の()()が始まるんだよねぇ」


「えっと、うん。その、宜しく」


「楽しみだよねぇ~」


 そう、俺は高校を卒業したら美佳子と同棲を始める。この事は美佳子とも相談したし、美佳子のご両親にも報告済みだ。

 何よりもこれは、父さんから言われていた事だ。幾ら結婚をするという強い気持ちがあったとしても、1年なり2年なりの同棲はしておけ。

 一緒に暮らしてみないと、見えて来ない部分が必ずあるからと。そう言われたので、美佳子と相談を始めた結果だ。


 父さんに言われた最初の頃は、今更そんな事をしなくても美佳子を知っていると思った。

 殆ど毎日会っていて、丸一日一緒に居た日も沢山ある。同棲なんてしなくても大丈夫だと、そう思っていた。

 だけど美佳子と話していく内に、妊娠出産の件も含めてしっかり向き合う必要があると分かった。


「毎日美佳子と一緒に居る生活かぁ」


「沢山お世話になります!」


「ああうん、それは任せて」


 前から言われていたけど、美佳子は本気でお風呂に入れて貰うつもりらしい。一緒に入るのではなく、入れて貰うという言葉通りだ。

 頭や体を洗ってほしいと主張している。仕方ないから入っているけど、正直毎日入るのは面倒くさいらしい。

 女性の方が入っていないと気にしそうなイメージだったけど、案外そうでもないのが現実だ。

 園田(そのだ)マリア経由で知った女性Vtuberさん達に、お風呂に入らない人達が結構居るんだよね。


 初めて知った時は驚愕だったけど、どうやらこの世の中には風呂嫌いの女性達が居るみたいだ。

 SNSで風呂キャンセル界隈なんて存在を知り、またしても驚かされた。美佳子はキャンセル派閥じゃないけれど、全部自分でやるのが面倒だと言う。

 実際聞いてみたら、女性の入浴は男性のそれより大変だ。ヘアケアにスキンケア、そしてボディケアと色々な事をやらないといけない。

 入浴時間が男性より長いのも納得だ。面倒くさいと言いたくなる気持ちも分からなくない。


「いってらっしゃいのチューは、毎日した方が良い?」


「えっ!? いやそれは、その……」


「照れちゃって~~可愛いね」


 そりゃあいきなりそんな事を言われたら、俺だって動揺するよ。憧れのシチュエーションというか、新婚夫婦の定番とでも言うべきアレ。

 男としては非常に興味があるけれど、ちょっとバカップルっぽい気もしてしまうから悩ましい。

 でも人前で披露する訳でもないのだから、たまにぐらいなら……ちょっとぐらいなら有りか?


 普通にキスをするより何処か気恥ずかしいけど、悪い気はしないからなぁ。せっかく同棲をするのだから、それっぽい事もしてみたい気持ちはある。

 ただそれも大学に受からないといけないし、その為には部活と勉強を頑張る必要があるから。勝負はこれから半年ぐらいの期間。

 高校を卒業するまでの時間は、そう長くは残されていない。だからこそ俺達の未来へと向けて、しっかりと確実に走り抜けたいと思っている。

私は絶対に同棲を先にやっておけ派です。

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