第256話 園田マリアの新発表
6章開始です。
新しい年度が始まって、進級したり社会人になったり。人によって色々と環境が変化する人達が、全国的に出る4月の上旬。
園田マリアによる新情報の発表が行われていた。正確にはコラボの発表と雑談がメインであり、1時間程度の予定で枠が用意されている。
元々1週間前から告知されていたので、平日の夜であってもリスナー達は沢山集まっていた。
去年の時点で美佳子が裏で進めて来た、これまでにない全く新しいコラボである。丁度咲人が事故で入院していた頃から進行していた。
内容としては有名なパソコン周辺機器メーカーとのコラボで、VBメンバー全員分の商品が用意されている。
「という訳で、ボク達VBメンバーのゲーミングキーボードだよ!」
『ファッ!?』
『おおおおおおおお』
『めっちゃ可愛い』
『新衣装マ!?』
『うわーーー欲しいけど良い値段するなぁ』
新しいコラボ商品は園田マリアを筆頭に、1期生3人と2期生4人の合計8種類のゲーミングキーボードだ。
それぞれのキャラクターにマッチした色合いになっており、カラフルな商品画像が公開された。
周辺機器メーカーとしては有名な会社とのコラボ商品であり、お値段のほうは結構している。
全ての商品に、各キャラのアクリルスタンド付きで3万円だ。付属するアクリルスタンドと、商品の箱にコラボ限定衣装のイラストが使用されている。
限定衣装は休日の部屋着姿がテーマであり、全員が薄着で肌色成分が多めだ。他にもコントローラーを持っていたり、ペットボトルを持っていたり。
自宅でのオフモードを感じさせるデザインとなっている。それぞれの特徴が反映されたイラストだ。
ちなみに園田マリアの限定デザインは、普段の美佳子っぽいTシャツにショートパンツ姿となっている。
その上で胡坐を掻きながら、左手に缶ビールで右手にタバコだ。園田マリアらしいスタイルな上、右肩に猫が掴まっている。
「どれも可愛くない? エイラが頑張ってくれました」
『絵師が箱に居るのアドよな』
『くっ! 全部欲しいが24万円……』
『マリアがあまりに普段通り過ぎるw』
『マサツグおって草』
『うわー! こなたちゃん可愛い!』
公式絵師がそのまま同じ事務所でVtuberをやっているので、新規デザインを用意する際に有利である。
今回の新規衣装も春川エイラこと、美佳子の同級生である浅川晶が8キャラ分のイラストを描いた。
デザインについては、美佳子も監修を手伝っている。2人であーだこうだと意見を出し合いながら、しっかり時間を掛けて用意したデザインだ。
田村美沙都も手伝っており、どのキャラがどんな格好をするのが良いか意見を出している。
また晶が仕事の為に美佳子の自宅を訪れた際、咲人とバッティングする事態も起きた。それはそれで色々とあったが、今配信で話す必要はない。
「期間限定じゃないから、慌てなくて良いからね。結構長い期間扱って貰えるから」
『マジか! 助かる!』
『バイト頑張る!』
『転売品を買わずに済むか』
『節約生活するしかない』
『1日1食でも平気平気』
新しいコラボ商品の発表でリスナー達が盛り上がり、コメント欄の勢いが増していく。
ここ最近のVBは、オンラインのゲーム大会にメンバーが出場する機会が増えて来ている。
以前からこの企画自体は話が出ており、大会出場によって知名度が増した結果正式に決定した。
マリアを筆頭にゲームが上手いメンバーは多い為、メーカーの広告塔としての役割も期待されている。
まだ発表出来ない情報ではあるが、このコラボが上手く行く様ならマウスやヘッドセットも出る可能性があった。
この事を知っているのは、美佳子と企業の担当者だけだ。第2弾や第3弾が続くかは、今回の売れ行きに掛かっている。
そして本日の新発表は、新しいコラボ商品だけでは無い。もう一つの重要な新情報が残されていた。
「まだ新情報はあるよ! 本日只今より、VBの第3期生を募集します!」
『なんやて!』
『新キャラ増えるの!?』
『マジか』
『VBだし女性限定よなぁ』
『受けてみたいけど受かるかなぁ?』
ここ数年で収益の規模が十分に拡大して来たので、ここで更に新メンバーを増やす方針に決めた美佳子。
美沙都のお陰で余裕が出来たのもあり、色々と美佳子は精力的に動き始めている。咲人との関係が更に進展したのも手伝い、美佳子のモチベーションはかなり高い。
また新メンバーの募集に合わせて、VBで新たに雇用するアルバイトと社員の募集も発表された。
募集人数はそれほど多くないものの、事務作業とマネージメント業務の人員を増やす予定だ。
社員の方はマネージャー経験のある女性だと、優遇される条件だ。一番重要な社員はマネージャーであり、未経験者の場合は美佳子が一から教育する。
「男性も考えたんだけど、最初はやっぱり女性限定にさせて貰いました」
『そらしゃーないわな』
『VBは女の園やし』
『変なトラブル起こされるより良いよ』
『長く続いてくれるならそれで』
『VBも大きくなって来たな』
リアルイベントの開催についても美佳子は積極的であり、ここ最近の状況を考えれば今が良いと判断した。
4月になって新たな動きを見せ始めたのはVBも同じで、新年度に相応しい新発表となった。
美佳子個人としても、事業拡大と出産の予定を考えれば動くのは今が一番良い。咲人が高校を卒業する前に、一気に動いてしまう算段だ。
今年1年でしっかり事業を進めて、次の1年で安定を図る。それらを進行しつつ、35歳までに出産を目指す。
全てが計算通りに行くとは、もちろん美佳子も考えていない。ただあくまでも予定としては、その様に考えている。
高校3年生になった咲人にやるべき事がある様に、美佳子の方にも色々と新しい課題をクリアせねばならない。婚約をした2人の、新しい日々が始まった。




